1 治療中の方へ

治療の方法

Q1.現在通院している病院から、交通事故のケガの治療は自由診療だから健康保険は使えませんと言われましたが、本当ですか?
A1.交通事故が原因のケガであっても健康保険を使って治療を受けられます。病院から健康保険を利用できないと言われることがありますが、これは誤った理解に基づく説明ですので,健康保険を利用したい旨をきっぱりと伝えましょう。
Q2.どのくらいの頻度で通院するべきでしょうか?
A2.通院の回数や期間、頻度については医師の指示に従ってください。
通院を余儀なくされた精神的苦痛に対しては、入通院慰謝料(傷害慰謝料)が支払われます。
Q3.仕事が忙しいのでなかなか通院できませんが、慰謝料などに影響しますか?
A3.仕事が忙しいなどの理由で痛みを我慢して通院しないと、後に裁判となった場合に「通院していないから大したケガではない」と評価されて、慰謝料額を低く見積もられるリスクがあります。
Q4.仕事が忙しいので、整形外科ではなく遅くまで開いている整骨院に通院したいのですが、慰謝料や後遺症などに影響しますか?また、並行して通院できますか?
A4.頚椎捻挫(いわゆるむち打ち症)等の場合、被害者が整形外科での治療に満足せず鍼灸やマッサージ療法を受診するために整骨院に通院するケースが多く見られます。
Q5.ムチウチ(頸椎捻挫、腰椎捻挫)などのケガでの治療期間は、一般的に決まりがあるのですか?
A5.交通事故によるケガが打撲やムチウチ、骨折等の比較的軽微なものである場合には、保険会社から一定の時期を目安に治療費の支払いが打ち切られることがあります。
Q6.医者に症状固定と言われました。もっと通院したいのですが、その後の治療はできないのでしょうか?
A6.症状固定後も治療を継続することはできますが、症状固定後の治療費は、原則として事故との因果関係が否定されて賠償対象となりませんから、自費で通院することになります。

治療費の話

Q1.交通事故に遭ってケガをしました。治療するときの治療費は、どのように支払われるのですか?
A1.治療費の支払方法には、大きく二つに分けて①加害者の任意保険会社が直接病院へ治療費を支払ってくれる方法と、②被害者側で一旦、治療費を支払って、後で加害者や保険会社に請求する方法があります。
Q2.通勤途中に交通事故に遭ったのですが、治療費はどうしたらいいでしょうか?
A2.通勤途中に交通事故に遭って人損が生じた場合は、「通勤災害」として労災保険の療養給付を受けられます。労災保険によって療養給付を受けられる場合には、健康保険を利用することはできません。
Q3.過失割合でもめており、相手方の任意保険会社が治療費を支払いません。どうしたらいいでしょうか?
A3.相手方の任意保険会社が治療費を支払わない場合には、被害者側で一旦、治療費を立替払いし、後に相手方の任意保険会社に請求することになります。
Q4.加害者の保険会社から、「今月末で交通事故から3か月経つので、治療費の支払いを打ち切らせていただきます。後は自費で通われてください」と一方的に通告されてしまいました。ケガによる痛みが今も続いて、今後も通院したいと考えていますが、これ以上の通院は保険による賠償の対象外となってしまうのでしょうか?
A4.加害者加入の任意保険会社は、一般的に症状固定するのが相当と考えられる時期を目安に、治療費の支払を打ち切ります。
Q5.私は交通事故でケガをしたのですが、相手が任意保険に加入していません。治療費はどうしたらいいでしょうか?
A5.相手方が任意保険に加入していない場合、相手方加入の自賠責保険に対して、治療費分の損害金を請求してみましょう。
Q6.顔面にケガの跡が残ってしまい、それを緩和するために美容整形手術を薦められたのですが、その手術費用も治療費として加害者に請求することができますか?
A6.美容整形手術は、あくまで交通事故によるケガの治療として行ったものと認められれば、治療費として加害者に請求できます。しかし美容外科で治療を受ける場合には、健康保険を利用できず自由診療となるため、治療費が高額となります。
Q7.歯が抜けてしまい、インプラントを薦められましたが、費用を請求できますか?
A7.インプラントは審美性を重視した治療法であることから、基本的に保険適用されません。また、手術を伴うため治療費も高額となります。そのため、インプラント治療に要した費用を相手方に請求するには、一般の治療費に比べて厳しい条件があります。

治療費以外の費用

Q1.交通事故に遭って以降、仕事を辞めてしまい、生活費が足りません。示談するまで、相手方の保険会社からすべてお金を支払ってもらうことはできないのでしょうか?
A1.交通事故の被害者が、稼働能力を喪失して生活費が足りない場合には、差し迫った生活の危険を避けるために、必要な金員を仮に支払うよう加害者(保険会社)に命ずる仮処分を裁判所に対し、申し立てることができます。
Q2.交通事故のケガの治療のために、タクシーで病院に通いたいのですが、タクシー代を加害者側に支払ってもらうことはできますか?
A2.タクシーを利用して通院していた場合、タクシー代が損害として認められない場合があります。
Q3.交通事故による怪我で入院の際、個室を利用したいのですが、個室使用料を加害者側に支払ってもらうことはできますか?
A3.場合によっては、加害者側に請求できます。
Q4.自家用車で通院した場合には、それにかかる費用を請求することができますか?
A4.自家用車で通院した場合には、加害者側に請求することができます。
Q5.子供が怪我をして入院したので、私自身はケガをしていないのですが、仕事を休んで病院に行かざるを得ませんでした。私が仕事を休んだことの損害を請求できますか?
A5.子供の入院の付き添いのために仕事を休んで、その分給料が減ったことによる休業損害を加害者側に請求できるかについて、裁判例は肯定例と否定例に分かれています
Q6.交通事故のケガの治療のために入院をしているのですが、その間に仕事を休んたことに対して補償されますか?
A6.交通事故によるケガの治療のために仕事を休み、現実に収入が減少した場合には、労災保険から給料の減少分につき休業補償給付を受けられます。

2 後遺障害が残ることが心配な方へ

一般的な話

Q1.後遺障害はどうやって認定されるのですか?
A1.後遺障害とは、症状固定後も障害が残って、治療してもこれ以上の改善が見込まれない状態をいいます。交通事故により後遺障害が残存した場合には、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を加害者に請求する前提として、自賠責保険の後遺障害等級認定を受けます。
Q2.後遺障害が認定されたら、いつどの程度のお金がもらえるんですか?
A2.被害者請求では、認定と同時に、当該等級に応じた自賠責保険金が指定口座に振り込まれます。そのため、同保険金は損害賠償金に充当し、残額があれば、加害者側に更に請求して残額の回収を図ります。
Q3.むちうち症の場合に、後遺障害が認められるポイントはありますか?
A3.患者側の対応としましては、①事故直後に病院を受診して、具体的かつ正確な症状を医師に伝え、必要な検査を受けること、②人身事故の届出をすること、③通院の間隔をあまり空けることなく、(少なくとも6か月間)真摯に治療を受けることが必要と思われます。
Q4.事前認定と被害者請求の違いを教えてください。相手方の保険会社に後遺障害診断書を提出するように求められましたが、提出していいでしょうか?
A4.被害者請求は、直接被害者が必要な資料などを揃えて手続きを進めていくというもので、これに対して事前認定は、任意保険会社に任せるというものです。
客観的に明らかな障害(欠損障害や醜状障害等)でない限り、被害者請求を選択した方がよいといえます。
Q5.後遺障害診断書を書いてもらう時に注意すべきポイントはありますか。医者と面談するときに注意すべきことはありますか。
A5.医師任せにすることなく、患者側ができる限り正確に残存症状を申告し、医師と協議の上、各種症状の存在を医学的に証明できる検査(画像及び神経学的所見)を受けるなどして、後遺障害診断書に必要十分な記載をしてもらうよう心掛けてください。
Q6.後遺障害診断書の作成前に、カルテを取得する必要はありますか。
A6.Q5のとおり、医師と協議の上、後遺障害診断書に必要十分な記載をしてもらえば足り、必ずしも、事前にカルテを取得する必要はありません。
Q7.後遺障害認定の際に弁護士に依頼することで、どのようなメリットがありますか?
A7.Q4のとおり、被害者請求を選択した方がよい事案では、被害者側で積極的に必要な資料を揃えて出す必要がありますので、弁護士に依頼することで、必要十分な医証の獲得が可能となり、適切な等級認定を受けることができます。

3 保険会社から示談提示を受けたが、それが妥当なものか知りたい方へ

保険に関する話

Q1.保険会社が提示する賠償金に相場はありますか?
A1.任意保険は、自賠責保険の保険金を上積みする保険であり、その支払基準は、各保険会社が決定しています。
Q2.慰謝料(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)に基準はありますか?
A2.自賠責保険基準、任意保険基準、裁判・弁護士基準があります。なお、裁判・弁護士基準の場合、当該事案の具体的な事情に照らして、増減修正を行うことがあります。
Q3.逸失利益はどのように計算するのですか?
A3.後遺障害逸失利益か死亡逸失利益かによって計算方法が異なります。

もっとも、死亡逸失利益は、基本的には後遺障害逸失利益と類似し、いわば後遺障害により労働能力が100%失われた場合と考えられます。
Q4.過失割合はどのように決まるのですか
A4.過失割合は当事者間の公平の観点から導き出される考え方ですから、具体的な事案に応じて、それぞれの当事者の注意義務の内容、注意義務違反の程度等に照らして、公平の観点から判断されることになります。
Q5.示談してしまった後に、やり直しはできますか?
A5.示談成立当時には、予想できなかったような後遺障害が生じたり、症状が著しく悪化したため、本来締結すべきではなかったにも関わらず、示談契約をしてしまったと認められる場合には、被害者は、後日、その損害の賠償を請求できます。

4 弁護士に依頼するかどうか悩んでいる方へ

弁護士に関する話

Q1.弁護士に交通事故を依頼するとどうなりますか?
A1.弁護士による示談交渉や裁判等によって、裁判・弁護士基準(適正な賠償額)での解決が可能になります。
Q2.どのような弁護士に依頼すべきですか?
A2.交通事故案件を処理するための知識、経験が豊富な弁護士に依頼するべきでしょう。
Q3.弁護士費用特約とは何ですか?
A3.交通事故等により被害者が被った法律相談や、弁護士に依頼するに際して生じる弁護士費用等をカバーする保険です。
Q4.自分の保険に弁護士費用特約が付いているかは、どうしたら分かりますか?
A4.自動車保険の保険証券・約款等を確認するか、保険会社に問い合わせ下さい。
Q5.自分以外の人の自動車保険に付いている、弁護士費用特約を使うことができる場合はありますか?
A5.弁護士費用特約は、一般的には、契約者、その家族または契約車に搭乗中の方などが対象となります。
Q6.弁護士費用特約を使うと、保険料は上がりますか?
A6.弁護士費用特約を利用しても、保険の等級は下がらないのが一般的です。そのため、保険料が上がることもありません。
Q7.弁護士費用特約を使いたい場合、どのような手続きを取ればいいですか?
A7.事前に弁護士や保険会社と連絡をとって、保険でどれだけの費用が出るかを確認した上で、弁護士に依頼する必要があります。
Q8.自分の保険会社に弁護士を勧められましたが、必ずその弁護士に依頼しなければならないのですか?
A8.そのようなことはなく、どの弁護士に依頼するかは本人の自由です。
Q9.弁護士に依頼すると赤字になることはありますか?弁護士費用を支払うことで、手取りが少なくなることはありますか?
A9.弁護士費用特約がない場合、事案によっては、結果的に依頼前に提示された額で示談した方が得であった(弁護士報酬を差し引くと赤字になる)ということもあると思います。