1. 後遺障害認定基準上の手指・足指の障害

手指と足指の障害は、欠損障害と関節の機能障害があり、機能障害は、原則として患側と健側との関節可動域の比率で評価します。また、指の障害については、その組み合わせ方に基づく数多くの等級の障害が後遺障害等級表に規定されています。

2. 認定基準手指・足指の障害に関する認定基準は以下のとおりです。

手指と足指の障害は、欠損障害と関節の機能障害があり、機能障害は、原則として患側と健側との関節可動域の比率で評価します。また、指の障害については、その組み合わせ方に基づく数多くの等級の障害が後遺障害等級表に規定されています。

(1)  欠損障害
【手指】等級 障害の程度

3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
6級8号 1手の5の手指又は親指を含み4の手指を失ったもの
7級6号 1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの
8級7号 1手の親指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの
9級12号 1手の親指又は親指以外の2の手指を失ったもの
11級8号 1手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの
12級9号 1手の小指を失ったもの
13級7号 1手の親指の指骨の一部を失ったもの
14級6号 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

① 親指の関節は指先に近い方から、指節間関節(IP)、中手指節関節(MP)といい、その他の指は指先に近い方から、遠位指節間関節(DIP)、近位指節間関節(PIP)、中手指節関節(MP)といいます。
② 欠損障害の程度は、「手指を失ったもの」と「指骨の一部を失ったもの」の2段階あり、「手指を失ったもの」は、以下のとおり、自賠法施行令別表第2の備考2に定義されていますが、障害認定基準ではさらに具体的な態様を説明しています。
③ 低位等級に「指骨の一部を失ったもの」が規定されていますが、これは「1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがX線写真等により確認できるもの」とされています。
④ 手指の用廃の定義との関係では、指先の骨である末節骨の半分以上を失えば「用廃」となりますので、手指の先の欠損であれば、ここまでいかない程度のもの、あるいは、中間の骨が一部欠けた場合ということになります。

親指:その他の手指
別表第2備考 指節間関節(IP)以上を失ったもの。
近位指節間関節(PIP)以上を失ったもの。

具体的切断位置:指を中手骨または基節骨で切断した場合
指を中手骨または基節骨で切断した場合
指節間関節において、基節骨と中節骨とを離断した場合
近位指節間関節において、基節骨と中節骨とを離断した場合

【足指】等級 障害の程度
5級8号 両足の足指の全部を失ったもの
8級10号 1足の足指の全部を失ったもの
9級14号 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号 1足の第1指の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2つの足指を失ったもの、または第3の足指以下の3の足指を失ったもの
13級9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

① 親指の関節は指先に近い方から、指節間関節(IP)、中足指節関節(MTP)といい、その他の指は指先に近い方から、遠位指節間関節(DIP)、近位指節間関節(PIP)、中足指節関節(MTP)といいます。
② 欠損障害については、「足指を失ったもの」の1つしか規定されておらず、これについては、以下のとおり、自賠法施行令別表第2の備考4で定義され、障害認定基準で具体的態様が説明されています

足指:別表第2備考 その全部を失ったもの
具体的切断位置:中足指節関節(MTP)から失ったもの

(2)  機能障害
【手指】等級 障害の程度
4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
7級7号 1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号 1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
9級13号 1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの
10級7号 1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの
12級10号 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの
13級6号 1手の小指の用を廃したもの
14級7号 1手の親指以外の手指の遠位指節間関節(DIP)を屈伸することができなくなったもの

① 親指の関節は指先に近い方から、指節間関節(IP)、中手指節関節(MP)といい、その他の指は指先に近い方から、遠位指節間関節(DIP)、近位指節間関節(PIP)、中手指節関節(MP)といいます。
② 機能障害の程度は、「手指の用を廃したもの」(用廃)と「親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」があり、「手指の用廃」は、以下のとおり、自賠法施行令別表第2の備考3に定義されていますが、障害認定基準ではさらに具体的な態様を説明しています。
③ 関節の動きは、可動域制限が2分の1以下で「用廃」とされます。また、「末節骨の半分以上を失った」という欠損障害の状態をもって機能障害としております。特徴的な点としては、「手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚」の完全脱失で、知覚的な障害を用廃と評価しています。「当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外傷を負った事実を確認」できることと、「筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認」することが要求されています。
④ 「手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」は、「遠位指節間関節が強直したもの」と「屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈指ができないもの又はこれに近い状態にあるもの」が該当します。

親指:各指共通:その他の手指
別表第2備考:指節間関節(IP)に著しい運動障害を残すもの 指の末節骨の半分以上を失ったもの
中手指節関節(MP)もしくは近位指節間関節(PIP)に著しい運動障害を残すもの
具体的態様 指節関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
指の末節骨の半分以上を失ったもの
中手指節関節または近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの
橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているもの
手指の末節の指腹部および側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失したもの

【足指】等級 障害の程度
7級11号 両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号 1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号 1足の第1指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの、又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

① 親指の関節は指先に近い方から、指節間関節(IP)、中足指節関節(MTP)といい、その他の指は指先に近い方から、遠位指節間関節(DIP)、近位指節間関節(PIP)、中足指節関節(MTP)といいます。
② 機能障害については、「足指の用を廃したもの」(用廃)の1つしか規定されておらず、これについては、以下のとおり、自賠法施行令別表第2の備考5で定義され、障害認定基準で具体的態様が説明されています。第1指(親指)それ以外、別表第2備考 ①末節骨の半分以上を失ったもの。 ②指節間関節(IP)に著しい運動障害を残すもの。①遠位指節間関節(DIP)以上を失ったもの。②中足指節関節(MTP)もしくは近位指節間関節(PIP)に著しい運動障害を残すもの。具体的態様 末節骨の長さの半分以上を失ったもの。中節骨もしくは基節骨を切断したもの

遠位指節間関節若しくは近位指節間関節において離断したもの。指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの。中足指節関節または近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの。

3. 裁判実務

全般的な傾向として、認定基準がある程度具体的であるため、等級評価が争点となることはあまり高くないと思われますが、労働能力喪失率はもちろん、可動域の判定等は争いになることがあります。

可動域の判定については、診断書の記載が信用できるかどうかが問題になります。診断書の記載にもかかわらず自賠責保険手続で障害認定されないのは、同診断に疑義が生じているものといえます。

自賠責保険では、通常、後遺障害診断書の検査数値で判断が行われ、疑義がある場合には医療照会がなされます。これに対し、訴訟になると、医療記録から何度か測定された数値が判明することが多く、改善されたはずのものが悪化して重度の障害状態になったという経過が出てくると、その理由付けをめぐって争いとなり、合理的な説明が必要となる場合があります。