将来介護費

医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認定されます。

職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。但し、具体的看護の状況により増減することがあります(赤い本2004年版332頁「合本Ⅲ257頁」「重度後遺障害に伴う諸問題~将来の介護費用を中心として」、赤い本2008年版下巻131頁「施設入所中の重度後遺障害の損害算定に関する諸問題」、赤い本2011年版下巻5頁「重度後遺障害の将来介護費の算定に関する諸問題~職業付添人による介護を中心として」参照)。

将来介護費用が認められる場合

交通事故の被害者に重度後遺障害(高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷による四肢麻痺等)が残存し、将来にわたって介護なしでは生活できない状況となった場合、必要かつ相当な範囲で将来介護費用が損害として認められますが、最近高額化の傾向にあります。

高額な将来介護費用が問題となる場合は主に後遺障害等級1級または2級といった重度後遺障害の場合が多く、介護そのものの必要性が争われるというよりは、被害者に必要となる介護の内容、程度、費用額が問題となります。

この点は、被害者に残存した後遺障害の具体的な内容によって異なりますが、主に、介護の場所(施設介護か自宅介護か)、介護の担い手(職業付添人か近親者付添人か)に分けて検討されています。

職業付添人、近親者付添人

将来介護費の必要性を検討するに当たっては、被害者が職業付添人による介護を必要としているのか、近親者による介護とするのが適切かが問題となります。

この点については、被害者の介護を必要とする程度、現在の介護状況、被害者の家族状況(近親者による介護の可否等)の諸要素を総合的に考慮し、職業付添人を付する必要性が認められるかを判断するのが一般的です。

訴訟において職業付添人の必要性が認められた事案の多くは、被害者の後遺障害の程度が重く、口頭弁論終結時までに既に職業介護人による介護の実績があり、被害者の近親者内に介護を担える者がいないという点が考慮されているようです。

将来介護費用の相場

職業付添人の場合

職業付添人の必要性が認められる場合、原則として実際にかかる費用に基づく算定がなされることから、現在の現実の負担額を基準に算定されるのが一般的であり、後遺障害等級1級および2級の重度後遺障害事案では日額1万円から3万円の認定がなされているようです。1級の場合は「日額1万5000円から1万8000円の範囲で認めたものが比較的増えている傾向が窺えます。」(「赤い本〔2011年版〕」下巻(講演録編)山田智子裁判官)とされています。

近親者付添人の場合

被害者の後遺障害の程度、必要とされる介護の内容、介護者の実際の介護の状況等を総合的に考慮し認定されることになりますが、常時介護の場合、後遺障害1級および2級の事案では、4000円から1万円の間での認定がなされているようです。

随時介護の場合は、日額6000円前後の認定がなされている事案が多いようですが、介護費用を認める事案であっても、単なる見守り・看視(監視)の場合は、それをかなり下回る場合(裁判例では、2000円前後)もあります。

例えば、さいたま地裁平成25年10月10日判決(自保ジャーナル1913・64)は、5級2号の高次脳機能障害を残す66歳女性について、退院後の被害者は喜怒哀楽が激しく、我慢ができなくなり、常にイライラするようになったこと、歩行や立ち上がりは何かにつかまればできる状態になったものの、動作が性急で大きくふらつくことがあるため見守りが必要とされていること、そのため被害者宅においては被害者の家族が常に被害者の行動に注意を払って見守ることを余儀なくされていることを理由に、平均余命までの22年間日額2000円の近親者による介護費用を認めました。

また、近親者による介護が行われている問(行われることが期待できる間)については、近親者付添人による介護を前提に介護費用を認定し、近親者による介護が期待できなくなると見込まれるとき以降については、職業付添人による介護費用を認定する裁判例もあります。大阪地裁平成27年1月21日判決(自保ジャーナル1944・1)、および東京地裁平成27年3月26日判決(自保ジャーナル1950・1)は、被害者の配偶者が67歳までは近親者付添人による介護費用を認定し、67歳になった後については職業付添人による介護費用を認定しています。

最近の高額化の傾向について

平成12年4月1日の介護保険制度施行以降、介護業者の料金水準が上がったことに伴い、職業付添人に関する介護費用の高額化が進む傾向にあります。

介護保険法21条に代位規定(介護保険の給付が第三者の行為によって生じた場合に、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する)が置かれていることから、既に給付のあった介護保険給付は損益相殺の対象となることは明らかです。

しかしながら、将来分の介護保険給付に関しては、介護保険制度の存続、将来の給付水準等には不確定要素があるため、賠償額の算定に当たっては、損益相殺の対象としないのが実務の一般的取扱いです。

裁判例でも、介護給付を受けるか否かは、被害者の選択によること、介護施策が未来永劫に同一であるとの保証はなく、法改正により、施策の変更される可能性があること、介護度の変化は予測困難であること、介護保険給付は、福祉的給付であり、損害賠償義務者の負担を軽減する制度ではないことからして、被害者がいまだ受領していない介護保険給付についての損益相殺が否定されています(さいたま地判平17・2・28交民38・1・299)。しかしながら、損益相殺が認められないとしても、被害者が高齢者の事例などで、当面介護保険制度に大幅な変更がなされる可能性が低いと認められ、被害者が現に介護給付を受けている場合には、将来介護費の算定において、介護保険給付を考慮した認定をすべきであるとの見解もあります。