その他の体幹骨の障害は、後遺障害該当性が争いとなることは殆どなく、その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。
(1) 鎖骨変形について
鎖骨変形は、その運動障害の程度が通常は軽度であり、労働能力の喪失が認められない場合もある。他方、モデル等の容姿が重要な要素になる職業や、スポーツ選手、職人等の肉体的労働的側面が強い職業に就いている場合、痛みが残存している場合等には、10ないし14%程度の労働能力喪失率が認められる。
(2) 肋骨および肩胛骨変形について
変形に伴う神経症状などから、労働能力喪失ありとされることもあります。もちろん、神経症状の発生などを推定させるような状態がなければ、簡単に神経症状としての障害が認められるわけではないので、注意が必要です。
(3) 骨盤骨変形について
骨盤骨変形も労働能力喪失の有無が争われることがあります。
特に、関節や脊椎の固定術等骨移植を要する外科手術に伴って、腸骨から移植する骨を採ったことにより、骨盤骨が変形した場合、後遺障害認定基準上、12級5号に認定されますが、腸骨は人体で最も大きい骨であり、その変形により労働能力が減少することはあまり考えられません。
もっとも、身体の完全性が失われたことは明らかであり、現実にどの程度の影響が出ているかによっても違いがあります(後遺障害による慰謝料の増額事由として斟酌することもあります)。