Traffic Accident Case

事例13【既払金のほか約226万円を支払うとの内容で和解が成立し、大幅増額を実現】醜状障害の事例

  1. 慰謝料・損害賠償

依頼主<10代・女性>

事件の概要

福岡県久留米市在住の小学生のMさん(女児)は、足踏式自転車を運転し、信号機による交通整理の行われていない丁字路交差点を横断していたところ、直進してきた普通乗用自動車に衝突され、右上腕骨骨幹部骨折、右大腿骨骨幹部骨折等の傷害を負いました。

Mさんは、治療の甲斐あって治癒したものの、本件事故及び手術により瘢痕(肘頭に線状瘢痕、臀部に面状瘢痕)が生じ、これを残しました。

当事務所の活動

当事務所は、Mさんの後遺障害診断書等の医証を獲得しましたが、自賠責認定基準上、明らかにてのひらの大きさに達しなかったため、後遺障害等級の申請を行うことは断念しました。しかし、Mさんの瘢痕は一定程度の醜状を呈するものでしたので、これを踏まえて示談交渉を開始しましたが、加害者側は、自賠責の認定がなされていないことを理由として後遺障害分を否定しました。

そのため、当事務所は適正な後遺障害等級の認定を受け、適正な賠償を受けるため、福岡地方裁判所久留米支部に訴訟提起しました。

解決と成果

本件訴訟における主な争点は、①醜状障害の評価、②過失割合でした。 醜状障害の評価について、加害者側は、自賠責基準を前提として、「その程度、部位から考えても慰謝料が生じるようなものではなく、将来において残存するか否かも定かではない。」と主張し、Mさんの醜状障害を否定しましたが、当事務所の立証活動により、裁判所は「醜状が14級4号5号には該当しないが、精神的苦痛を増大させていることは明らか」として、50万円を傷害慰謝料に加算すると判断しました。

過失割合について、本件事故は、Mさんが二人乗りをしていて遭遇していたものであり、加害者側は、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」を前提に、その他の修正要素を含め、加害者側の「過失は4割を超えることはない。」と主張しましたが、当事務所の立証活動により、裁判所は「事故態様からすると、一人乗りでも事故は発生し、同程度の傷害を負った可能性大」として、Mさんの過失割合を20%と認定しました(後日、加害者側より申出があり、依頼者も和解を希望したため、25%に変更されました。)。

以上より、加害者側が、Mさんに対し、既払金のほか約226万円を支払うとの内容で和解が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。

弁護士の所感

本件は、事故による瘢痕は残存したものの、てのひらの大きさに達しなかったため、自賠責認定基準上、醜状障害として認定されない事案でした。

確かに、醜状障害の等級認定は、障害の程度として、露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すものであることが必要です。しかし、Mさんに醜状瘢痕が残存していることは動かし難い事実であって、Mさんが、これについて精神的苦痛を受けたことは明らかであり、また、本件はMさんの後遺障害の程度を慰謝料の判断要素にするものですから、Mさんの同瘢痕が後遺障害等級表のいずれの等級に当たるかを厳密に判断する必要はありません。そのため、同瘢痕による不利益を具体的に主張することができれば、本件のように、訴訟によって醜状障害としての評価を受けることができます(本件では傷害慰謝料の増額事由とされました。)。

過失割合については、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」の事例は、あくまでひとつの基準に過ぎず、個々の事案が持つ特殊性によって過失割合は適宜修正されるべきですので、具体的な事故態様を検討することにより、加害者側の主張の不合理性を明らかにし、同事例とは異なる形で認定を得ることができます。

以上のとおり、自賠責認定基準上、等級として認定されないとしても、訴訟により損害として評価される可能性がありますし、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」の事例は裁判所を拘束することはありませんので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責

弁護士 北島 好書