Traffic Accident Case

Case 029 頚部痛、両肩の痛み、右足関節の機能障害(後遺障害等級併合第12級)を残した被害者につき、他人のために家事を行う状況ではなくなった以降についても、家事従事者として休業損害及び後遺障害逸失利益が認められた事例

  1. むち打ち(後遺障害)
  2. 下肢・足指(後遺障害)
  3. 人身事故

担当弁護士北島 好書
事務所朝倉事務所

ご相談内容

女性

依頼主
Cさん(70代・女性) / 
職業:家事従事者

福岡県在住の70代の女性(Cさん 夫と二人暮らし 家事従事者)は、普通貨物自動車に同乗していたところ、大型貨物自動車が中央線を逸脱して対向車線に進入して衝突された後、後方より大型貨物車に追突され、右距骨剥離骨折及び頚椎捻挫等の傷害を負い、治療を継続しましたが、頚部痛、両肩の痛み、右足関節の機能障害を残しました。

弁護士の活動

弁護士

当事務所は、Cさんの後遺障害診断書等の医証を獲得し、後遺障害等級の申請を自賠責に行い、自賠責より、右距骨剥離骨折に伴う右足関節の機能障害について「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として後遺障害等級第12級7号に、頚椎捻挫後の頚部痛、両肩の痛みについて「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級第14級9号に認定され(詳しくは、「上肢・下肢の機能障害」「末梢神経障害」を参照してください。)、以上により、併合第12級と認定されました。

そして、当事務所は、上記結果に基づき示談交渉を開始しました。

解決結果

女性

本件事案における主な争点は、①休業損害、②後遺障害逸失利益でした。

本件事故は、Cさんが夫の運転する普通貨物自動車に同乗していた際に生じたものであり、本件事故により、夫は死亡している事案でした。

加害者側は、休業損害及び後遺障害逸失利益の算定に当たり、夫死亡後(本件事故後)に家事従事者としての認定は困難である旨主張しました。これに対し、当事務所は、「本件事故により家事を提供する相手である夫を死亡させたのが加害者であることを考慮すれば、同事情をもって、休業損害を認めないのは相当ではない」「依頼者の労働能力の一部喪失による損害は本件事故の時に一定の内容のものとして発生しており、夫の死亡を理由として加害者の負担が軽減する結果となることは衡平の理念に反し、そのような結果を正当とすべき特別の事情も認められない」などと主張して、加害者側と粘り強く交渉を継続しました。

以上より、加害者側が、当事務所の主張を概ね認める形で、Cさんに対し、既払金のほか約576万円を支払うとの内容で示談が成立し、Cさんに満足いただける結果となりました。

弁護士のコメント

弁護士

距骨とは、踵骨と下腿の脛骨に挟まれている骨で、足関節では足首の下に位置します。距骨表面の80%は関節軟骨で覆われているため、骨折で血行障害となり、懐死・偽関節・関節症変化による機能障害を残すことが多いとされています。本件では、右距骨剥離骨折に伴う右足関節の機能障害としての認定を受けておりますが、認定基準は機能障害を可動域制限の程度で判断しますから、仮に事故により関節の可動域制限が生じていても、基準値に達しない限りは機能障害としての等級認定はされません。そして、後遺障害の認定は初回手続(後遺障害診断書等の医証の作成等)が最も重要ですから、事故から出来る限り早く弁護士に相談した方が、被害者のメリットは大きくなります。

また、家事労働は他人のために行われるものであってはじめて金銭評価できるものであり、専ら自らの生活のため行われていた場合は損害として認められません。しかし、本件のように、本件事故により他人のために家事を行うという状況ではなくなった場合までも同様に解することはできませんから、加害者側より、休業損害や後遺障害逸失利益が否定されたとしても、具体的に主張立証することにより適正な賠償を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。