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Case 004 老朽化した建物及び設備の瑕疵が認められず、相手方の瑕疵担保責任に基づく請求を全面的に排斥した事例

  1. 不動産問題

担当弁護士永野 賢二
事務所久留米事務所

ご相談内容

男性

依頼主
Dさん(60代・男性)

本件事件は、整形外科医院を営んでいたDさんが同医院の営業を含めて不動産(土地・建物)を相手方に売却したところ、相手方より、本件建物に瑕疵があるなどとして、約1600万円の損害賠償金を求めて訴訟を提起されたという事案です。
当初、相手方から書面で賠償金の支払いを求める請求があり、この時点でDさんは当事務所に相談に来られましたが、Dさんの支払義務がないと判断したため、相手方から訴状が届いたら受任する方向で進めていましたが、上記訴訟が提起されたことにより、当事務所が依頼を受けることになりました。

弁護士の活動

弁護士

本件売買にあたっては、対象不動産の建物、機械設備、給排水設備、電気設備等については、建築及び設置から相当の年数が経過していたため、建物にかかる瑕疵担保責任は負担しない旨の特約が存在していました。
もっとも、相手方は、Dさんが本件建物や設備の瑕疵を知っていたにもかかわらず、これを敢えて相手方に伝えなかったことを理由として、瑕疵担保責任を追及してきました。
これに対し、当方からは、特約に建物及び設備が経年劣化及び使用に伴う機能低下が認められるため、今後の補修善、交換等は買主の負担となることを敢えて明記していること、売買契約の交渉経過、相手方の資金調達の経過等に鑑みれば、相手方が主張する建物及び設備の不都合はそもそも「瑕疵」にすらあたらない等という主張立証を行いました。

解決結果

男性

その後、証拠調べ期日を経て裁判所から和解案を受領しましたが、これを拒絶した結果、判決に至りました。
判決内容は、当方の主張を全面的に認め、相手方が主張する本件建物及び設備の不具合はそもそも「瑕疵」にあたらないとして、請求を全部棄却するものでした。
その後、相手方は控訴せず、上記判決は確定するに至りました。

弁護士のコメント

弁護士

中古の建物を売買するにあたっては、建物の瑕疵担保責任を排除する特約があるかどうかに注意しなければなりません。
売主としては、建物が建築から相当期間が経過している場合、自分の所有物件であっても、建物にどのような不都合性があるかを完全に把握することは困難です。そのため、後々のトラブルにならないため、売買契約書に瑕疵担保責任の排除特約を必ず付保しておきましょう。
一方、買主としては、瑕疵担保責任の排除特約が付保されている場合は、売買契約を締結する前に建物の不具合を専門業者に調査させ、どの程度の補修善費用が必要かを確認してから購入すべきです。また、調査によって建物の不具合等が発見できれば、売買代金の減額交渉の材料になるはずです。
本件では、不動産売買の交渉段階から弁護士等の専門家が介入していれば、訴訟にまで発展することはなかったと思われ、早い段階で専門家に相談することの重要性を改めて認識した事案でした。