建物明渡しの強制執行について

1 はじめに
  この頁では、建物の明渡しに関する強制執行の手続きについてご紹介します。
  建物の明渡しを求める訴訟に勝訴して確定判決を得た場合であっても、占有者が建物を明け渡さず、居座り続けることがあります。そのような場合に、いくら勝訴判決があるからと言って、自力で占有者を連れ出したり借家内の家財を運び出したりすることは自力救済として許されません。
そのため、確定判決後に任意に占有者が判決通りに建物を明け渡してくれない場合には裁判所に申し立てて強制執行の手続きをとる必要があります。
2 強制執行申立ての手続
 ⑴ 強制執行を行うためには、債務名義が必要となります。
   債務名義とは、強制施行によって実現されるべき実態法上の請求権の存在及び内容を交渉する文書であり、確定判決や和解調書などがこれにあたります(民事執行法22条)。以下では、確定勝訴判決を得たことを前提にしてご説明をします。
 ⑵ 強制執行を申し立てるためには、まずは事件記録のある(基本的には判決を行った)裁判所の書記官に対して、執行文付与の申し立てを行います。これは、その債務名義に基づいて執行することができるということを裁判所に公証してもらう手続です。
   また、強制執行のためには債務名義の正本又は謄本が債務者に送達されている必要があるため(民事執行法29条)、確定判決の送達証明書も裁判所書記官に申請することになります。
 ⑶ そして強制執行の申し立て自体は、目的とする不動産の所在地を管轄する裁判所の執行官に対して行い、添付書類として、上記の書面を提出します。
   ほかにも、当事者が法人の場合には代表者の資格を証する文書が必要になる等事案に応じて提出する書類が増えることもあります。
   また、強制執行の申し立てには、強制執行費用の予納をする必要があります。予納金の額は、各裁判所によって決められています。
 ⑷ そして、強制執行に際して、執行業者の費用や開錠業者の費用も負担する必要があり、事案に応じて数十万に上るケースもあります。
   また、強制執行には申立人と利害関係のない立会人が必要となり(民事執行法7条)、執行する際に債務者が不在の場合にはその確保も申立人の負担でしなければなりません。
3 建物明渡しの強制執行
 ⑴ 建物明渡しの強制執行の場合、大まかな流れとしては、建物明渡しの催告を行い、それに占有者が応じない場合には、強制執行を断行し、占有者や家財道具等を運び出してその占有を解いて申立人へ引き渡すことになります。
 ⑵ 明渡しの催告は、執行官が、目的建物において債務者が目的建物を占有していることを確認し、断行日を定めて、債務者に対し断行日までに目的建物を任意に明け渡すように催告を行います。
   この段階で任意に明け渡してくれるようならば、断行は行わず、執行業者等の費用は掛かりません。
 ⑶ 断行日までに任意の明け渡しがなされない場合、執行官による断行が行われます。
   具体的には、執行業者が建物内の家財道具等を運び出し、占有者の占有を排除して、申立人に引き渡すことになります。
   そのため、断行日には必ず申立人(代理人含む)の立ち合いが必要となります。
  また、断行が完了した際に、占有者が再度占有できないように、鍵の交換も行われています。
4 目的外動産がある場合
  建物明渡しの強制執行の際に、目的建物内にある家財道具等の動産(目的外動産)がある場合、執行官はこれを取り除いて債務者、同居の親族等に引き渡さなければなりませんが(民事執行法168条5項)、それができないときには、売却・保管替え・破棄等の処分を行います。
  実務においては、建物明渡しの強制執行と同時に、未払賃料等を請求債権として動産執行の申し立てを行うことで、催告の際に目的外動産を差し押さえて断行日に売却することで速やかな建物明渡しの執行を終了させることができます。
5 おわりに
  建物の明渡に限らず、裁判での勝訴判決を取得しただけでは最終的な満足を得ることはできず、上記のような強制執行の手続きが必要になります。
  そのため、数万円の家賃滞納で契約解除を求めた結果、家の明渡までに100万円近くかかってしまうという可能性もあります。
  そのため、最終的な執行の可能性まで含めて、どのような手続きの見通しとなるか、強制執行ではなく任意での明け渡しを求めるような解決を目指せないか等、ご自身の真の利益になるような解決策を様々検討することが大切です。