1. 労働者の内部告発があった場合の対応とは

労働者の内部告発に対する保護について、ご説明いたします。
近年、企業のみならず、政官財を含めた様々な組織において、法令を遵守していないことによる不祥事がマスコミ等で騒がれ、責任追及されています。
企業においては、公共工事における談合、インサイダー取引、食品の産地偽装・消費期限切れ商品の再利用など、様々な組織的不正・違法行為に対して、法的・道義的な責任を求められる社会情勢です。
コンプライアンスの名の下、企業は法令を遵守することが、その経営上重要な課題となっています。
これらの不祥事が世間の目にさらされるようになったのは、その多くは当該企業の従業員やその他の企業関係者の内部告発行為でした。
そのため、企業による不祥事を防止し、不正・違法行為を正すためには、内部告発の積極的評価と正当性が社会に認知されました。
以下では、労働者の内部告発行為と関係する(1)懲戒処分等との関係、(2)公益通報者保護法について、具体的にご説明いたします。

2. 労働者の内部告発に対する保護について

(1)懲戒処分等との関係とは

以前から、労働者による内部告発行為に対して、法律上一定の保護はなされていました。
例えば、法の適用対象者が監督官庁に違反の申告を行う権利を規定し、申告に対し事業者による解雇、その他の不利益取扱いを行うことを禁止していました。(労働基準法104条等)
一方で、内部告発行為が企業内で秘密とされている情報を、企業外のマスコミ等に明らかにする態様で行われた場合、労働契約上の誠実義務と対立関係となり、就業規則上の企業秘密の漏えい禁止条項や、企業の名誉・信用毀損行為の禁止などに違反する行為とされていました。
そこで、近年、企業が労働者の内部告発行為に対して、就業規則上の懲戒事由にあたるとして行った懲戒処分等について、裁判により争われることが多くなっています。
裁判所は、当該内部告発の内容、目的、態様、その他諸般の事情を総合的に勘案して、企業秩序との衝突にもかかわらず、保護に値する行為か否かにより判断していると考えられます。

保護されるためのポイントとしては、

①告発の内容の真実性、ないし真実と信じる相当の理由があることが重要です。
②告発行為の基本的目的が法律違反や不正を是正することです。
すなわち、告発行為の基本的な目的が私的なもの(自己の地位の保身、嫌がらせ等)ではなく、公益的なものであることが必要です。
そして、
③告発行為の態様が相当なものであることも必要です。

もし、企業内部に違法行為を是正するための体制が構築されているなど、より穏当で効果的な手段がある場合には、同手段により是正することが期待されます。

(2)公益通報者保護法とは

●定義

「公益通報」とは、労働者が不正の目的でなく、その労務提供先の事業者、役員、従業員等について通報対象事実が生じ、まさに生じようとしている旨を、当該労務提供先等、当該通報対象事実について、処分もしくは勧告等をする権限を有する行政機関(監督官庁)、または、その者に対し当該通報対象事実を通報することが、その発生・被害の防止に必要であると認められる者に通報することとされています。(法2条1項)
「通報対象事実」とは、個人の生命または身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保、その他の国民の生命・身体・財産その他の利益の保護にかかわる法律として規定された、犯罪行為の事実ないしはそれらの法律の規定に基づく処分の理由となる事実とされています。(法2条3項)

●禁止事項

同法によって禁止されている事項は、企業が通報対象事実について公益通報した者に対し、公益通報をしたことを理由として解雇、労働者派遣契約の解除、降格、減給、派遣労働者の交代を求めること、その他の不利益取扱いです。

●保護要件

公益通報をした者が保護されるための要件は、通報を受ける相手方によって区別されています。

①当該労務提供先等への公益通報の場合は、通報対象事実が生じ、または、まさに生じようとしていると思料する場合で足ります。

②監督官庁への公益通報の場合は、通報対象事実が生じ、または、まさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合であることが必要です。

③その他、通報を受ける必要があると認められる者に対する公益通報の場合は、上記②の要件に加えて、下記のいずれかに該当することが必要とされています。

(ア)上記①、②の通報をすれば、解雇その他の不利益取扱いを受けると信じるに相当の理由がある場合
(イ)上記①の通報をすれば、証拠の隠滅等のおそれがあると信じるに相当の理由がある場合
(ウ)労務提供先から上記①、②の通報をしないことを、正当な理由なく要求された場合
(エ)書面や電子メール等により、上記①の通報をした後、20日を経過しても当該通報対象事実について調査を行う旨の通知がない場合、または正当な理由なく調査が行われない場合
(オ)個人の生命・身体に危害が発生し、または発生する急迫の危険があると、信じるに足りる相当の理由がある場合

●公益通報を受けた者の対応

上記①の公益通報を書面等で受けた事業者は、通報対象事実の中止、その他是正のために、必要と認める措置をとったときはその旨を、通報対象事実がないときはその旨を、公益通報者に遅滞なく通知するように、努めなければならないとされています。
また、上記②の公益通報を受けた監督官庁は、必要な調査を行い、通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければならないとされています。

3. まとめ

以上、労働者の内部告発に対する保護をご説明しました。
企業側からすると、労働者による内部告発行為は、一般的に懲戒事由に抵触する行為であり、企業の名誉・信用を毀損しうる行為です。
しかし、上記でご説明したとおり、一定の要件のもと、労働者の内部告発は保護されています。

そこで、万一、労働者による内部告発があった場合には、会社内でのみ処理することなく、ぜひ弊所にご相談ください。
今後の会社にとって、よりベストな対応を一緒に考えてご提案いたします。