「当該行為の性質・態様その他の事情に照らして、社会通念上相当なものと認められない場合」には、無効となります。懲戒処分についての相当性の原則です。
裁判例で、最も争われることが多い懲戒処分は懲戒解雇です。懲戒処分が無効とされた例では、当該事案で懲戒事由に該当することは認められつつ、当該行為の性質・態様や被処分者の勤務歴などに照らして、重きに失するとされています。
使用者が、当該行為や被処分者に関する情状を適切に酌量せずに、重すぎる処分をした場合は、社会通念上相当なものと認められないとして、懲戒権を濫用したものとして無効とされます。
公平性
同じ規定に同じ程度に違反した場合には、これに対する懲戒は同じ程度たるべきであるという要請です。労働者が懲戒事由に該当する行為をした場合、どのような懲戒処分がなされるか、労働者に対する予測可能性が求められているといえます。
したがって、懲戒処分は同種の事例については、会社のこれまでの懲戒処分がどのようなものであったかを意識する必要があります。そのため、従前は事実上黙認されてきた懲戒事由に該当する行為に対し、懲戒を行うことにした場合、事前に十分な警告を労働者に対し行う必要があります。
手続的な相当性
懲戒処分を行うにあたって、手続き的な相当性を欠く場合にも、社会通念上相当なものと認められないことになり、懲戒権の濫用になります。
就業規則や労働協約上、求められている手続きを遵守すべきことはもちろんです。仮に、就業規則などで求められている手続きがない場合でも、特段の支障がないかぎり、当該労働者に対し、弁明の機会を与えることが要請されていると考えるべきです。
このような手続的正義に反する懲戒処分も、些細な手続上の瑕疵にすぎない場合でないかぎり、懲戒権の濫用になると考えられます。