任意整理

1 総論
  任意整理は,自己破産や個人再生などの法的整理とは異なり,裁判所を介さない私的な手続です。
任意整理の依頼を受けた弁護士は,債務者と話し合った上で,支払っていくことができる返済計画を債権者に提案し,交渉を行います。
そして,返済計画が双方の間で合意できたら,和解契約書を作成し,債務者の返済が始まります。
以下では,任意整理手続きについて,債務者が弁護士等に相談に来てから和解が成立するまでの流れを説明します。

2 手続きの流れ
(1)  相談・受任
 借金で困っている債務者の方が弁護士等の専門家に相談に来られた場合,まずは,相談者の債務状況を把握するところから始まります。
 誰からの借り入れをいつ開始し,現在,どれくらいの借金が残っているのかを確認し,現在の収入や資産の状況等と照らし合わせて,分割や将来利息をカットすることで返済することが可能な状況にあるかどうかを検討します。
 検討の結果,任意整理をすることが決まったら,各債権者に受任通知を送り,交渉を行います。
 なお,相談に来られる方の中には,自分が現在どの程度の借金をしているかわからない方もいらっしゃいますので,そのような場合には,各債権者から取引履歴を取り寄せ,債務の状況を確認した後に,任意整理にするか,その他の手続きを採るかを検討することになります。
 手続きの選択にあたっては,過払金が発生していたり消滅時効期間が経過していたりする債務がないかを確認し,それを踏まえて返済が可能かどうかを検討します。
(2)  受任通知の送付
 弁護士等が相談者から任意整理を受任したら,速やかに各債権者に対して受任通知を送付します。
 貸金業法では,債務整理の受任通知が届いた場合に貸金業者等が債務者に直接支払いの要求をしてはならない旨定められています(同法21条1項9号)。
 したがって,弁護士が受任通知を送った後は,貸金業者等から債務者の方に直接の取立等が行われることはなく,交渉窓口が弁護士に一本化されます。
 弁護士に相談に来られる方は,次々にやってくる返済に追われていることも多いですから,一時的にでも返済期限から解放されることが,任意整理による生活再建の第一歩です。
(3)  債務調査・返済計画の策定
 受任通知を送付したら,各債権者から取引履歴が送られます。
 取引履歴を利息制限法に従って計算し直すことで,各債権者に対する現在の債務額が正確に把握できますので,債務者の現在の収入状況を踏まえ,弁護士と相談の上,返済計画をたてます。
 先ほど申し上げたとおり,任意整理は私的な手続ですので,債権者が応じさえすれば返済の仕方は自由です。
たとえば,すべての債務が3年間で返済完了するように分割払いしてもいいですし,残額の少ない債務を一括払いにして,その他の債務を長期間の分割払いにすることもできます。
 毎月の給料や賞与,家族からの援助などのほか,経済状況の変動可能性なども踏まえ,途中で頓挫してしまわないような返済計画にすることが何より重要です。
(4)  和解案の提示・交渉
 返済計画が決まったら,それを各債権者に提示し,交渉を行います。
 この場合,こちらの提示する和解案に債権者がそのまま応じてくれることもあれば,債権者から修正を求められる場合もあります。
 任意整理は強制力を有する手続きではありませんから,最終的には債権者が応じなければ和解が成立することはありません。
 しかし,債権者の要求に安易に応じて無理な返済計画で和解をしてしまうと,また支払いが困難になって結局自己破産の手続きをせざるを得なくなるというような事態も起こり得ます。
 そうなるとその分だけ生活の再建が遅れますので,債権者がこちらの提案に応じない場合には,他の手続き選択の可能性も見据えつつ十分に検討しましょう。
(5)  和解の成立
 債権者が複数いる場合,取引履歴が送付されるまでの期間も区々ですから,一部の債権者とは交渉がまとまったものの他の債権者との交渉がまとまっていないという状況が起こります。
 このような場合に,交渉がまとまった債権者から順次和解を成立させるか,すべての債権者との交渉がまとまってから一気に和解を成立させるかはケースによりますが,和解が成立したら,弁護士が各債権者と和解契約書を取り交わします。
 そして,和解内容に従った返済が開始し,すべての債務を返済したら任意整理手続きは終了です。
3 まとめ
  以上のように,任意整理手続きは各債権者との任意の交渉ですので,強制的に和解を成立させられるわけではありません。また,債務の大幅な減額が見込めるわけでもなく,自己破産手続や個人再生手続に比べて経済的なメリットは大きくありません。
  しかし,自己破産手続や個人再生手続が借金を帳消しにしたり大幅に減額したりすることで債権者に大きな損害を与える手続きであることを考えると,そのような状況になる前にできるだけ早く弁護士等に相談し,債権者にそれほど損害を与えることなく早い段階で生活再建を図ることが望ましいと言えるのではないでしょうか。