1.「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の違いについて

「個人再生とは」の項で説明したとおり、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがあります。そこで、本項では、2つの違いについて詳しく説明していきます。
 
小規模個人再生とは
 
将来継続的に収入を得る見込みのある個人債務者で、無担保債権の総額が5000万円を超えない者を対象とし、債務を大幅に減額し(2割程度に減額)、減額された債務を原則3年(最長5年)で分割弁済する内容の再生計画に従って、債務を返済する手続きです。
 
給与所得者等再生とは
 
一般のサラリーマンなど将来の収入を確実かつ容易に把握できる者を対象とする手続きで、当該再生債務者の可処分所得の2年分以上の額を弁済原資に充てることを条件に、小規模個人再生よりも更に手続きが簡素化されています。

2.手続の違い

2つの手続きの大まかな流れは同じですが、主な相違点は以下のようものです。

(1)債権者の同意

●小規模個人再生の場合
 
債権者の半数又は債権総額の半額を占める債権者が再生計画案に反対した場合には、手続きは廃止されます(つまり個人再生をすることができません)。
 
●給与所得者等再生の場合
 
債権者の再生計画への同意が不要ですので、債権者の意向にかかわらず手続きを進めることができます。


 

(2)弁済金額

●小規模等個人再生における弁済金額の場合
 
破産した場合の配当額よりも弁済額が大きくなること(清算価値保障原則)、債権の額が3000万円から5000万円の場合はその10分の1以上、3000万円以下の場合はその5分の1以上の弁済額であることです。
 
●給与所得者等再生の場合
 
上記の条件に加えて、弁済額が2年分の可処分所得以上でなければなりません。


 

(3)再申立ての制限

●給与所得者等再生の場合
 
再度の法的整理に期間制限が定められており、再生計画認可の決定が確定してから7年間は、再度給与所得再生をしたり自己破産をしたりすることができません。
 
●小規模個人再生の場合
 
このような制限はありません。
 
このような違いは、小規模個人再生には債権者の決議が要件とされていることによります。

3.「小規模個人再生」「給与所得者等再生」どちらの手続を選択したほうがよいのか

小規模個人再生を申し立てて開始決定があると、途中で給与所得者等再生に変更することはできません。その反対も同様です。
 
したがって、債務者は、申立てをする段階で、どちらの手続きを選択するか慎重に検討する必要があります。


 

(1)手続選択において考慮すべき点

①定期的な収入を得る見込み
 
まず、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあるかどうかです。
さらに、その収入額の変動の幅が小さいこと(年収の変動幅が20%以内であることが一応の目安です)が必要とされています。
 
②今後3年間ないし5年間の生活設計
 
今後3年間ないし5年間の間に、子どもの教育費や親の老後の世話のためにまとまったお金を支出することが予定されているような場合、最低でも可処分所得の2年分を返済しないといけない給与所得者等再生だと後々返済が難しくなるおそれがあります。このような場合には、債権者の決議という負担はあってもあえて小規模等個人再生を選択することは十分にあり得ます。
 
③住宅資金特別条項との関係
 
住宅資金特別条項を定めた場合、再生計画の弁済期間内の住宅ローンへの支払額を元本の支払の一部を猶予する形で減少させることができます。
ただし、利息以上の支払は必要で、住宅ローンの弁済は他の再生債権の弁済から切り離して行うとされています。
この住宅資金特別条項との関係でいうと、給与所得者等再生を選択して可処分所得の2年分以上の返済をしながら、住宅ローンの利息プラス元本のごく一部でも支払うのは困難な場合が十分想定されます。そこで、そのような場合には小規模個人再生を選択する必要があります。
 
以上のような考慮事項を踏まえて、どちらの手続きを利用するか慎重に検討して下さい。

4.手続移行について

給与所得者等再生は小規模個人再生の特則、小規模個人再生は通常の再生手続の特則という関係にあるため、給与所得者等再生の要件は満たさなくても小規模個人再生の要件は満たしている場合や、小規模個人再生の要件は満たさなくても通常の再生手続の要件は満たしている場合があります。
 
そこで、要件に該当しない場合に、順次要件の緩やかな手続きの申立てをしたものとして手続きを移行することが認められています。
 
もっとも、給与所得者等再生の要件に該当しない場合に小規模個人再生に移行することはあっても、個人債務者に通常の再生手続が利用されることはほとんどありません。

5.どちらの申立てにするか慎重に検討する必要があります

以上のように、小規模個人再生の特則として給与所得者等再生が用意されていますが、可処分所得の2年分以上の額を弁済しなければならない給与所得者等再生の方が、弁済総額が大きくなるのが通常です。
 
したがって、個人再生を行う場合、基本的には小規模個人再生を検討し、債権者の決議を得られそうにない場合にだけ給与所得者等再生を検討することになるでしょう。いずれにせよ、どちらの申立てにするか慎重な検討が必要となります。ぜひ弁護士にご相談されることをおすすめします。