有期労働者・パートタイム労働者に対する不合理な労働条件の禁止

1 労働契約法20条について
 労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間で,労働条件が相違している場合に,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理な内容となることを禁止しています。
したがって,有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があるからといって,直ちに不合理となるわけではありません。通達では,例えば,通勤手当,食堂の利用,安全衛生に関する点について差別することは,特段の事情がない限り,労契法20条の合理性は認められないとしています。
もっとも,一般的には,雇用契約の具体的内容は,法令・労働協約・就業規則等により一定の制限を受けることがあるほかは使用者と労働者との合意により定めるものであり,使用者が,一般的に,労働者に対して,他の労働者との均衡に配慮して具体的な労働条件を付与すべき雇用契約上の義務を負っているとは解することはできないとされています(東京高判平成26・3・20)。
2 効果
 労契法20条は,単なる訓示規定ではなく,民事的効力があるとされています。そのため,ある労働条件が労契法20条に違反した場合,不法行為を構成するのみならず,当該労働条件は無効となります。通達(「労働契約法の施行について」平成24.8.10基発0810第2号)では,無効部分について,基本的には無期労働契約者と同じ労働条件が認められると解しているようです。
3 パートタイム労働者
 パートタイム労働者とは,正規従業員(フルタイム)の所定労働時間又は日数より少ない時間又は日数の労働条件となっている労働者のことを指します。企業によってはアルバイト,嘱託などの名称で呼ばれることもあります。実態としては有期契約労働者と重なる部分が多いのですが,期間の定めがなくともフルタイムよりも所定労働時間・日数が少なければパートタイム労働者に該当することになります。
 パートタイム労働者は「短時間労働者」のはずであるが,実際には,通常の労働者と就業時間数もほとんど同じ場合があり,フルタイムパート・擬似パートなどとも呼ばれています。擬似パートは,むしろ,有期(3年以内)雇用に重点が置かれ,短期で雇い止めできるように,事業者側の都合で作り出されています(同一労働・同一賃金の潜脱)。
4 パートタイム労働者の権利
(1) 年次有給休暇
 パートタイム労働者は,労基法39条3項により,所定労働日数に比例して一定の日数について,年次有給休暇を取得することができます。
(2) 社会保障
 雇用保健については,所定労働時間が週20時間以上であり,6か月以上引き続き雇用されると見込まれる者は被保険者となります。
健康保険・厚生年金保険については,正社員の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上であることを基準として,就労形態,職務内容を総合的に勘案して,常用的雇用関係が認められる場合には,被保険者として取り扱われることになります。
5 パートタイム労働法
(1) 文書による労働条件明示 
 労基法15条は,賃金等の労働条件を明示することを使用者の義務としていますが,パートタイム労働者に対しては,労働条件を明示する義務が強化されています。すなわち,労基法15条1項及び同法施行規則5条によれば,労働契約の期間,賃金の決定・計算・支払方法その他同規則5条に列挙された労働条件について,書面で明示することが使用者の義務となっていますが,さらに,パート労働法ではそれを強化し,同条に列挙されている労働条件に加えて,昇給,退職手当及び賞与の有無についても書面で明示するよう定められています(パート労働法6条1項)。
(2) 差別的取扱いの禁止
 パート労働法8条1項では,以下の場合について,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇に関し,フルタイム労働者との差別を禁止しています。
①「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度が通常の労働者と同一」の短時間労働者であって,②「期間の定めのない労働契約を締結しているもの」のうち,③「当該事業所における慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するための全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」について,労働条件に関し,フルタイム労働者と差別することを禁止しています。
また,要件②については,有期労働契約が反復更新されることによって期間の定めのない労働契約と社会通念上同視することが認められる場合も含まれます(パート労働法8条2項)。
パートタイム労働者の労働条件や配転等が,パート労働法8条1項に抵触する場合には,違法無効となり,不法行為を構成することになります。