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Labor Problem

Case 012 労働者よりパワハラを理由とする慰謝料請求と時間外労働による割増賃金(残業代)請求を求める労働審判を申し立てられたものの、結果的に金銭の支払いを行わない調停を成立させた事例

  1. 使用者
  2. パワハラ・セクハラ
  3. 労働審判・訴訟
  4. 給料・残業代請求

担当弁護士埋田 昇平
事務所福岡事務所

ご相談内容

男性

依頼主
L社さん(50代・男性) / 
職業:建設業

福岡県を本店所在地とするL社は、突然、従業員のAさんから内容証明郵便で退職の申出と有給消化の取得申出を受け、その後間もなくAさんの代理人から退職金の支払いを請求する通知を受けました。

L社は、Aさんの求めに応じて退職手続を取った上、退職金規定に基づく退職金を支払いましたが、Aさんからさらにパワハラを理由とする慰謝料と時間外労働に対する未払割増賃金(残業代)の請求を受けました。

L社の代表者は、Aさんからの慰謝料と未払割増賃金の請求に納得がいかず、当事務所に相談に来られました。

弁護士の活動

弁護士

その後、Aさんは、パワハラを理由とする慰謝料請求と時間外労働による割増賃金(残業代)請求を求める労働審判を申し立て、パワハラの証拠として私物にいたずらされたとする写真等を、時間外労働の証拠として帰宅時間が遅かったことを示す家族とのラインのやりとりなどを提出しましたが、確たる証拠と言えるかどうか疑問もありました。

もっとも、L社は、いわゆる家族経営の小規模な会社で従業員の労働時間を厳密に管理・把握していませんでした。また、パワハラについても、ふざけてAさんにいたずらをしたこともあったようで、証拠上はL社が不利なようにも思われました。

そのため、当事務所は、会社でのAさんの様子や稼働状況に関する具体的な事実をL社から聴き取って陳述書を作成し、これらを答弁書にて詳細に主張しました。

労働審判委員会からは一定の時間外労働が存在したことを前提に相当額の解決金を支払う提案を受けましたが、当事務所は、労働審判委員会に対してL社の実態について粘り強く説明を続けました。

解決結果

男性

その結果、Aさんは、3回目の審判期日において、L社が一定の反省の態度を示してくれるのであれば金銭の支払は求めない、との意向を示し、最終的にはL社が金銭の支払義務を負わないとの内容の調停を成立させることができました。

弁護士のコメント

弁護士

時間外労働(残業)については、労働者側に確たる証拠がなくても、使用者が従業員の労働時間を適切に管理していなければ、労働審判や訴訟において、使用者側に不利な推定が働きます。

もっとも、今回のケースのように、労使の信頼関係に基づいて、緩やかな遅出や早退を認めつつ、従業員の労働時間を厳密に管理していない会社は数多く存在します。
労働時間の管理を適切に行う必要があることはもちろんですが、労働時間管理の制度が間に合わないうちに労働者から割増賃金の請求を受けてしまうこともあると思います。

証拠上不利かどうかにかかわらず、会社として争うべきところはしっかり争う必要がある場合もありますので、そのような場合には会社の方針を十分に理解してくれる弁護士を選ぶ必要があります。