Labor Problem

事例3(解雇無効確認の請求を受け退職を前提に金銭解決した事例)

  1. 使用者側

1.ご相談に至る経緯

不動産賃貸管理業を営むC社は、同僚や部下、上司との人間関係、社員の能力、技能の習得能力の不足を理由として従業員Aを解雇しました。当該従業員から弁護士を代理人として解雇無効確認の請求を受けたとしてご相談に来られました。
C社によると、Aさんは、同僚に仕事を押し付ける、上司の指示にも反発するなど人間関係に問題があり、特に部下に対しては必要以上に強い言葉で叱責した結果、Aさんの部下が心身の不調に陥り退職したこともあるとのことでした。

2.当事務所の活動

Aさんから労働審判の申立があり、当事務所がC社の代理人として活動することになりました。
労働審判手続は、早期の紛争解決を目指す手続で、申立から40日以内に第1回期日が指定されます。しかも、使用者側は第1回期日の1週間前までに申立書に記載している全ての事実に対する反論の書面を提出しなければならないため、時間がありません。
また、従業員の勤務態度や能力を理由として適法に解雇することはかなり難しく、従業員の勤務態度が社会常識に照らし明らかに逸脱しているとか、能力不足の程度が社内で突出しており、再三にわたる指導でも改善がみられないといった事情が認められなければ解雇が有効とは認められません。
C社では、Aさんから激しい叱責を受けて従業員が退職した際の証拠も保管していましたが、従業員が退職したのは解雇から3年以上前でした。C社の説明では、Aさんの態度に改善が見られないことから解雇に至ったということでしたが、3年間の間にAさんに指導し、改善を促した証拠が不足していました。
C社とAさんの面談において、能力不足の問題の一つとして長期間にわたる通勤手当の不正受給の問題が指摘されていることが分かりましたので、労働審判手続の中では解雇の理由として通勤手当の不正受給の問題に焦点を当てることにしました。

3.解決と成果

Aさんは、解雇は無効として、Aさんの1年分の給与に相当する解決金の支払を求めてきました。   裁判所も解雇は無効になる可能性が高いとの心証を示し、退職を前提として解決金をいくらにするのかが争点となりました。   当事務所では、長期間にわたる通勤手当の不正受給により得た金額を控除するよう求め、最終的には5カ月弱の給与に相当する解決金を支払うことで調停が成立しました。

4.弁護士の所感

日本では長く終身雇用制度が続いていたこともあり、解雇の有効性は未だに厳しく判断されています。
そのため、使用者側としては、従業員の勤務態度や能力不足を理由に解雇したいと思っても、すぐには解雇せず、ある程度長い期間をかけて指導を繰り返す必要があります。
また、解雇に固執せず、配転や退職金の増額など、柔軟な方法を検討する必要もあります。
本件では、解雇前の段階でC社からのご相談はなかったため、労働審判手続きの中で解雇の有効性について主張立証を尽くすしかありませんでしたが、複数の事情の中から、通勤手当の不正受給という、裁判所に対しても説得力のある事情を拾い出し、焦点を当てたことが有効に作用したと考えられます。

文責:弁護士 埋田 昇平