Inheritance

事例9(被相続人の相続放棄をした後に相続財産管理人の選任を行い、被相続人名義の自宅土地建物を相続財産管理人から購入した事例)

  1. 相続放棄

依頼主相続人:Iさん(60代女性)、被相続人:Aさん(Iさんの夫)

1.ご相談に至る経緯

 福岡県久留米市在住のIさんは、被相続人である夫Aさんの相続人であり、それ以外にも第1順位の相続人として子及び孫(代襲相続)がいる状況でした。
 Aさんの遺産としては、主に自宅(土地建物)がありましたが、その一方で、Aさんが個人事業を営んでいた関係で金融機関からの事業資金の借入れも4000万円程度あり、自宅には金融機関の抵当権が設定されている状況でした。
一方、Aさんは、Iさんを受取人とする生命保険に加入していたため、Iさんは保険会社より生命保険金として約2500万円を受領している状態でした。
 Iさんとしては、慣れ親しんだ自宅を手放すのは忍びなくこれを残したいと考えていましたが、その一方で、金融機関からの事業資金の借入金については、返済の目途が立たないため(Aさんには後継者はおらず、Aさんが死亡した時点で事業は廃業することになりました。)、承継したくないとの希望でした。

2.当事務所の活動

 当事務所は、Iさんの上記希望を叶えるため、Aさんの相続放棄を行ってAさんの相続人が不存在になった状態で、相続財産管理人を選任して、Iさんが受領した生命保険金を原資に相続財産管理人から自宅を購入することとしました。
  そのため、当事務所は、Iさんを含めた第1順位の相続人の相続放棄の申述を家庭裁判所に行った後、続いて第2準備の相続人(Aさんの兄弟及び兄弟の子(代襲相続))の相続放棄の申述を家庭裁判所に行いました。これにより、Aさんの相続人は不存在の状態になりました。
  その後、当事務所は、Aさんの相続財産管理人の選任を申し立て、その結果、相続財産管理人が選任されました。

3.解決と成果

  その後、当事務所は、抵当権者であった金融機関と交渉を行って自宅の売買代金額(約1400万円)の了解を取り付けました(抵当権者の了解がなければ、自宅の売却を行うことは実務上できません。)。
その後、相続財産管理人とIさんとの間で自宅の売買契約が締結され、無事にIさんに自宅(土地建物)の名義を変更することができました。

4.弁護士の所感

 被相続人が死亡した時点で被相続人が債務超過に陥っている一方で、今回のケースのように、被相続人が生命保険をかけていたため、受取人である相続人が死亡保険金を受領できる場合があります。
  この場合、上記死亡保険金は被相続人の遺産とはされないため、相続人が被相続人の相続を放棄しても、死亡保険金を受領できる結果となります。   今回のケースのように、被相続人の遺産の中でどうしても手放せない財産(慣れ親しんだ自宅等)がある場合は、相続放棄をした後に相続財産管理人を選任し、死亡保険金を原資に相続財産管理人からこれを購入するという方法があります。
  このような場合は、手続的にもかなり煩雑になりますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
  松本・永野法律事務所では遺産相続に関する相談は初回無料で行っていますので、遺産相続でお困りの方は当事務所にご相談ください。

文責:弁護士 永野 賢二