1. 具体的な交渉の選択について

相手方との権利関係や財産等の資料を調査した結果、何らかの方法で債権を回収できそうな可能性がある場合に、どのような方法で債権回収を目指すのかについて、詳しく紹介します。 交渉の選択は、相手方との権利関係、資産状況、力関係等に応じて様々ですが、基本的に、①相手方が支払い可能な内容で契約を修正するか、②金銭以外の方法により債権の回収を受けるか、という2種類に分類されます。 これらは、当事者の合意によってなされるので、柔軟な解決(例えば、債務のうちの半分については、第三債務者に対する債権譲渡での代物弁済とし、もう半分は弁済期を数ヶ月後に設定するなど)が可能です。

2. 具体的な方法ごとの注意点について

(1) 支払期限や支払方法を変更する

本来の債務の支払期限を遅らせる、または支払方法を分割払いにする等の支払期限・方法の変更は、最も一般的な交渉方法です。
現時点では、債務の弁済が苦しい状況であっても、長期的に見ると弁済の可能性が見込まれる場合には、検討の余地があります。

この場合、変更内容を公正証書にし、「債務を履行しないときには、直ちに強制執行を受けても、異議のないことを認諾する」という執行認諾文言を取り付けることが大切です。
このような文言が付された公正証書は、債務名義とすることができ、実際に相手方が債務を履行しない場合には、訴訟等の法的手続を経ずに、強制執行することができるからです。

しかしながら、相手方に本当に将来の弁済ができる体力があるかは、注意深く判断するべきです。相手方が弁済期を伸ばしても、破産を免れないような場合には、契約の変更でなく、他の債権回収方法を検討する必要があります。

(2) 新たな担保の提供を求める

これまでの契約で、何らかの担保権が設定されていない場合、あるいは現在の担保では、十分な債権の満足が得られない場合には、新たに担保の提供を求める方法が考えられます。
実務的には、上記の支払期限を先送りにするタイミングで、「支払期限はなんとか待つので、その代わり担保を追加してほしい」と追加担保を求めることが多いと思われます。その際、事前に不動産登記を確認して、不動産の有無や他の抵当権者の存在等を把握していることは重要です。

担保は、大まかには、保証人等の「人的担保」と、抵当権などの「物的担保」の2つに分けられます。

●人的担保

相手方以外の第三者から債権回収を求められるので、相手方の取引状況に左右されない担保を得ることができます。
ただ、相手方が法人で、保証人がその代表取締役等、相手方と蜜接な関係のある者の場合、すでに複数の債権者と法人を主債務者とする保証契約を締結している可能性があります。

●物的担保(特に不動産)

その物の価値自体が高く、価値の変動も少ない、安定した担保です。
地番がわかれば、誰でも不動産登記を確認することができるので調査も容易です。しかし、他の債権者も同様に担保として把握しやすく、すでに先順位の抵当権が設定されている場合も多いと思われます。
その場合、代表者の自宅等、第三者の不動産を担保として提供してもらえないか、という交渉が重要です。(この場合の担保提供者を物上保証人と言います)

(3) 代物弁済を受ける

相手方から、金銭の支払に代えて、第三者への債権や商品での代物弁済を受ける方法もあります。
この場合、代物弁済によって、どの程度債権の満足が得られるかが重要です。
すなわち、第三者への債権を譲り受ける場合には、当該第三者からきちんと弁済が受けられそうか、他社の商品等での代物弁済であれば、当該商品を市場で売却できるのか等です。

債権譲渡の場合には、債務者及び第三者に対抗する要件として、譲渡人(相手方)から第三債務者に対して、「確定日付のある証書」により通知(または第三債務者からの承諾)を行う必要があります。確定日付のある証書による通知は、内容証明郵便で行うことが一般的です。

(4) 相殺する

相手方に対し、買掛金等の金銭債務が存在する場合には、これと金銭債権を相殺することで、実質的に債権回収を図ることが可能です。
その場合の要件は、①互いに同種の債権であること、②相殺することが可能となっていることです。

①の「同種」とは、簡単に言うと、金銭債権と商品引渡債務では相殺ができないという意味です。
②は、互いに履行期が到来していることを意味します。もっとも、こちらの債務の支払期限が到来していない場合でも、期限前に支払う=期限の利益を放棄することは可能です。実質的には、相手方の支払期限が到来していれば相殺はできます。
他にも、相殺禁止に当たる債権(不法行為による損害賠償請求権等)は相殺することができません。

(5) 納品した商品を引き揚げる

こちらから相手方へ納品した商品がある場合には、商品を引き揚げるという選択肢も考えられます。
もっとも、契約に基づいて引き渡したものである以上、勝手に持ち出すことは窃盗罪となりますので、商品の引き揚げは、契約解除+商品の返還という方法でなされる必要があります。


ところで、債務不履行を理由に契約を解除するには、相当な期間を定めての催告をしなければならないため、一方的に契約解除をするには時間がかかります。
そこで、商品引揚げは相手方との合意解除の書面を取り交わし、相手の立ち合いの上で、商品の返還として、引き渡しを受けるという方法が1つ考えられます。

あるいは、契約解除に基づく商品の返還を、訴訟において請求することを前提に、占有移転禁止の仮処分を申し立て、第三者への処分を禁止したうえで、商品の回収に乗り出す方法もあります。
いずれにせよ、商品の引き揚げは、相手方が商品を処分するまでの時間との勝負になります。

3. まとめ

以上はあくまで一例で、これ以外にも様々な場合があります。また、複合的に利用も可能です。
いずれにせよ、相手方の支払能力・支払意思を意識しながら、現実的に回収が可能なのは、どういう方法なのかを考えることが大切です。