2. 強制執行の方法について
(1) 強制執行の手順とは
以下では、債務名義として確定判決を得た場合を例に、実際の強制執行の手順をご説明します。
(ア)まず、債務名義について、裁判所(書記官)に対して、執行文付与の申立が必要です。これは、債務名義の内容で、現実に強制執行が可能であることを、執行機関において証明する必要があるからです。
そして執行文の付された債務名義の正本をもって、執行機関に対して、正式に強制執行の申立を行います。
(イ)また、強制執行を開始するためには、債務名義の正本等が、あらかじめ債務者に送達されていなければならないので、これを証するための送達証明書が必要となります。
(ウ)その他、強制執行の内容に応じて、必要な書類の添付や費用の予納等も求められます。
(2) 不動産に対する執行
不動産に対する執行としては、基本的には強制競売があげられます。
強制競売とは、不動産を競売し、その売却代金から債務の弁済を行う方法です。
競売開始決定がされると、その旨が登記に記載され、差押の効果が生じます。
その後、裁判所による不動産の現況調査や、売却価格を決めるための評価がなされ、競売期日等が広告され、入札等により競売手続が行われます。
以前は、裁判所による強制競売は、定められた最低売却価額以下では売却できない等、制度として使いづらいと言われていたこともありました。
しかし、現在では、売却額に幅を持たせる売却基準価額という制度に改められ、競売物件の情報もインターネットで公開する等、売却が促進されるようになっています。
ただし、抵当権者等先順位の債権者がいる場合や、差押債権者が複数いる場合には、満額回収が難しい場合もあります。
(3) 動産に対する執行
動産(現金や貴金属、手形小切手等の有価証券、登記・登録のされていない自動車等)に対しては、執行官が当該動産を差し押さえて、そこから得られた売却金を弁済に充てることになります。
動産執行の場合は、ほとんど競り売りの方法により売却されています。
動産執行は、土地建物及び登記・登録された動産以外という、広い範囲を対象として執行をかけることができます。
しかし、実際に価値のある動産が少ないほか、差し押さえが禁止されている動産(債務者の生活に欠かせない衣服や家具、一定期間の生活に必要な金銭、職業に欠くことができない農具や工具等)も存在します。
(4) 債権に対する執行
(ア)債務者の有する預金債権や、債務者が他の第三者に対して有する売掛債権等(この場合の第三者は「第三債務者」と言われます)を強制執行の対象とすることもできます。
債権に対する執行が開始されると、裁判所より差押命令が第三債務者に対して送達され、債務者への弁済が禁じられます。
差押命令が第三債務者に送達されて、1週間を経過した後に、差押債権者が取り立てるのですが、他の債権者の差し押さえが競合すると配当となります。
(イ)また、債権執行には転付命令という制度もあります。
これは、転付命令が第三債務者に送達される前に、二重差押等がない場合には、差し押さえた債権をそのまま差押債権者に移転させる制度です。
転付命令送達後の二重差押を排除する効果があるため、いわば債権の独占を認める制度です。
ただし、転付により、債権の弁済がなされたとみなされるので、第三債務者にお金がない場合には、実質的に債権回収が不可能になるというリスクも負うことになります。