1.遺言

自分が亡くなった時のために遺言を作成される方が、以前に比べて増えました。遺言は、一部のお金持ちだけが作成することに意味があるものではありません。
遺言書を作成しておくことは、下記のようなメリットがあります。


 

(1)遺産分割協議を行う手間を省ける

遺言がない場合、遺産分割協議が必要となりますが、相続人全員で意見を一致させて遺産を分けていくことは大変な労力と時間が必要な作業となります。意見が一致せず協議が遅々として進まないことは少なくありません。遺産分割協議が成立しなければ、相続人共有の財産のまま遺産を分割できず、せっかく残した財産を有効に活用することができません。


 

(2)相続人以外に遺産を分けることができる

遺言がない場合、法定相続人の間で遺産が分けられます。生前に世話をしてくれた人(例えば、内縁の妻や子供の配偶者など)や没後に経済的な面倒をみてあげたい人が相続人でなければ、遺言を作成して遺産を分配しておく必要があります。


 

(3)法定相続分にかかわらず財産を分けることができる

遺言によれば、どの財産を誰にどれくらい分けるということが遺言作成者の意思によって決めることができます。例えば、「長年連れ添った配偶者に住み慣れた家を残したい」、「事業の後継者に会社の株式を確実に残したい」などの希望を叶えるためには遺言に残しておくことが重要となります。

2.遺言の要式性

遺言は、民法でその作成方式が法定されています。作成方式に従って正しく作成されないと、法的に効力がない遺言となってしまいます。自分が亡くなった時に残された家族が無用の争いを行わないようにきっちりした形式・内容で遺志を残しておくことが重要であり、遺言作成にあたっては、遺言制度の内容を理解し、弁護士の専門的知識を借りながら、慎重に作成することが大切です。
 
当法律事務所では、公正証書遺言・自筆遺言とも遺言をされる方の思いが的確に伝わるよう文案の作成、公証人との打ち合わせ等を行います。

3.遺言でできること

(1)相続分の指定又はその委託

法定相続分にかかわらず、相続分を指定すること、また、その指定を誰かに委ねることができます。


 

(2)遺産分割方法の指定又はその委託

具体的な財産を誰に配分するかを指定すること、また、その指定を誰かに委ねることができます。


 

(3)遺産分割の禁止

5年間は遺産分割することを禁止できます。


 

(4)相続人相互の担保責任の指定

相続した財産に欠陥等があった場合に、価値の減額分を相続人間で補い合う負担割合を指定できます。


 

(5)推定相続人の廃除等

被相続人に対し、虐待や侮辱、非行等の行為をした推定相続人から相続人の資格を奪うことができます。


 

(6)特別受益の持ち戻しの免除

原則、特別受益にあたる生前贈与は、相続財産に加えて(持戻)具体的相続分を決めていきますが、持ち戻すことを免除することができます。


 

(7)遺留分減殺方法の指定

遺贈の減殺割合について、指定することができます。


 

(8)遺贈

遺言により人(法人も含む)に財産を無償で譲ることができます。


 

(9)認知

非嫡出子を自分の子供をして法的親子関係を生じさせることができます。


 

(10)未成年後見人の指定

未成年者に親権者がいない場合に後見人を指定することができます。


 

(11)遺言執行者の指定

遺言を執行する者を指定し、また、その指定を委託することができます。

4.遺言の種類

遺言には、大きく分けて2つ、普通方式遺言と特別方式遺言があります。普通方式遺言は、日常生活の中で遺言を作成しようとする場合に採られる方式で、特別方式遺言は、死期が迫り署名押印ができない遺言者が口頭で遺言して証人が書面化する方式や、伝染病にかかり隔離されているとか(隔絶地遺言)、普通方式が採れない特殊な状況下で作成される方式の遺言を言います。
 
普通方式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。