1.少年事件とは

少年法1条は、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して、性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う…ことを目的とする」と規定しており(保護主義)、成人犯罪者に対する「刑罰主義」とは目的が異なります。
 
すなわち、少年法は、少年の可塑性(簡単にいうと、自分の起こした行為の問題点を反省して、立ち直っていける柔軟さ)を信じ、少しでも早く少年に立ち直ってもらうことを目的としているのです。
このような目的の違いから、少年事件は、手続きなどの面において成人の刑事事件とは異なっていますが、本項ではこのような少年事件の概要を説明していきます。

2.身柄拘束される場合の流れについて

(1)逮捕・勾留とは

逮捕・勾留の段階では、少年事件の手続きは成人の場合と基本的に変わりません。逮捕されてから2日ないし3日後に勾留手続きに移行し、そこから10日ないし20日間程度の勾留が続きます。
 
もっとも、少年事件の場合、検察官の請求により「勾留に代わる観護措置」という身柄拘束手続きがとられることがあり、この場合、勾留期間は最大で10日間となります。


 

(2)家裁送致及び観護措置とは

少年事件では、逮捕・勾留中に警察及び検察の取り調べが行われた後、必ず事件が家庭裁判所に送致されます。(全件送致主義)
そして、家庭裁判所は、審判を行うために必要がある場合には、観護措置をとることができますが、観護措置がとられると少年はほとんどの場合、少年鑑別所に収容されることになります。
 
観護措置は、審判を行うために身柄確保の必要性がある場合や、収容して心身鑑別を行う必要がある場合などになされます。しかし、逮捕・勾留手続きを経た少年の多くは、観護措置をとられることになり、そうなると多くの場合は1ヶ月近い期間にわたって、少年鑑別所に収容されることになります。
したがって、逮捕・勾留の段階で少年の弁護人となった弁護士にとって、観護措置をとられないように裁判所に働きかけを行うことは、大切な役割の一つといえます。


 

(3)少年審判とは

(ア)観護措置がとられた場合、1ヶ月近く少年鑑別所に収容された後に、審判が行われます。審判では、「非行事実」と「要保護性」の審理を経て、少年に対する処分が決定されます。

「非行事実」の審理とは

少年が非行を本当に行ったかどうかの審理です。したがって、少年が非行事実を否認しているような場合には、付添人は審判に向けて、少年が非行事実を行っていないことを立証するための活動を行います。

「要保護性」の審理とは

少年の再非行の危険性や矯正可能性、保護相当性(保護処分が有効かつ適切であること)などを指します。したがって、非行事実に争いがない場合には、付添人は審判に向けて、要保護性の解消に向けた活動、裁判所に対するその成果の報告・説得などを行います。
 
いずれの場合にせよ、少年鑑別所にいる少年と面会し、少年から話を聴くことは、付添人にとってもっとも重要な活動の一つです。
 
(イ)審判の期日には、少年側から少年、付添人、保護者が出席します。また、裁判官の許可により、学校の先生や少年の雇い主などが出席することもあります。
 
審判の進め方は裁判官によって異なりますが、少年に対する人定質問(本人確認のための質問)、黙秘権告知、非行事実の告知と、それに対する少年・付添人の陳述のほか、非行事実や要保護性を審理するために、少年やその他の出席者(保護者、先生、雇い主など)に対する裁判官、調査官、付添人からの質問などが行われます。
そして、非行事実に争いのない一般的な少年審判の場合、審理をした期日に、そのまま決定が言い渡されます。

3.身柄拘束されない場合の流れについて

身柄拘束されない場合も、警察や検察等の捜査機関による捜査、家庭裁判所への送致、審判という流れ自体は身柄を拘束された場合と同様です。
その間、少年(家裁送致までは「被疑者」と呼ばれます)は、捜査機関や裁判所からの呼び出しを受けた場合、警察署や裁判所等に自ら出頭します。
しかし、逮捕・勾留や少年鑑別所での観護措置のような時間制限がないため、身柄を拘束された場合と異なり、審判までに長期間を要する場合も少なくありません。

4.決定の種類について

審判期日に言い渡される決定には、終局決定として不処分、保護観察、少年院送致、検察官送致、中間処分として試験観察決定などがあります。
このうち、一般的な少年事件では、①保護観察処分、②少年院送致、③試験観察の決定が言い渡されます。
 
①「保護観察」とは、少年を施設に収容することなく、社会のなかで生活させながら、保護観察所の指導監督および補導援護という社会内処遇によって、少年の改善更生を図ることを目的として行う保護処分です。
 
②「少年院送致」されると、少年院に収容された上で、矯正教育を受けることになります。少年院に収容される期間は、非行の重大性や事案の性質によって区々ですが、概ね1年程度の期間、収容されることが多いようです。
 
③終局処分を一旦保留し、家庭裁判所調査官の観察に付する「試験観察」が言い渡されることもあります。この場合、一定の試験観察期間(概ね数ヶ月から半年程度)を経て、再度の審判により終局処分が言い渡されます。

5.まとめ

以上が、少年事件のおおまかな概要です。先述したとおり、少年事件で最も重要なのは、少年が非行から立ち直り、立派な大人へと成長するための環境作りです。
そのためには、これまでに少年と関わってきた保護者や先生などに加え、付添人弁護士等の協力者の関わりが、大きな助けとなります。
 
もし、ご自身の身近なところで、少年事件に関わることになってしまった方は、早めに弁護士等に相談し、少年にとっての最適な環境づくりを目指しましょう。