1.取り調べの注意点とは

刑事事件の被疑者になると、警察官や検察官から取り調べを受けることになり、取り調べの中で被疑者が話した内容は、供述調書として刑事裁判の証拠となります。
被疑者の供述調書は、犯罪を行ったとされる者自身の供述内容が記載された書面です。
刑事裁判において、とても重要な意味を持ちますが、十分に注意して取り調べに臨まないと、誤った内容が供述調書に記載されたり、話した覚えのないことが供述調書に記載されたりして、刑事裁判で不利な証拠となってしまう可能性があります。
 
そこで本項では、被疑者として捜査の対象となっている人に向けた話にはなりますが、不利な供述調書が作成されないよう、取り調べの際の注意点について説明していきます。

2.黙秘権について

黙秘権という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
黙秘権とは、自分が言いたくないと思っていることは話す必要がなく、ずっと黙っておくこともできるという権利のことです。
黙秘権は憲法上保障された権利ですので、黙っていたからといって、それだけを理由に不利に扱われることはありません。
 
したがって、被疑者として取り調べを受ける際には、自分には黙秘権があるのだということを、十分に意識して取り調べを受けるようにしてください。
なお、黙秘したことを理由に不利に扱われることはないと説明しましたが、捜査機関の取り調べに対し、自身の犯罪を認めて素直に供述すれば、反省の意思を示すことができ、情状面で有利に扱われることはあり得ます。ですので、黙秘することで、不利になることもあり得ます。

3.取り調べで気をつけるべきことについて

(1)取り調べの流れとは

捜査機関による取り調べの一般的な流れは、下記のように進みます。
被疑者が話した内容が録取される。(文字として記録される)
 

捜査機関による読み聞かせ(被疑者が自分で読むこともある)で、内容に誤りがないかを確認される。
 

誤りがあれば、修正を加えた上で、誤りがないことが確認できた書面に被疑者自身が署名・押印する。
 
したがって、供述調書が作成されると、誤りのないことを被疑者自身が確認したものであることが、前提の書面ができあがることになります。
このようなことから、被疑者の供述調書は刑事裁判において、重要な意味を持ちます。被疑者の立場からすると、自分に不利な内容の供述調書が作成されないよう、十分に注意する必要があるのです。


 

(2)不利な供述調書を作成されないために

(ア)具体的には、まず供述を録取される段階で、話したくないことを話さないことが重要です。
捜査機関からの取り調べにおいては、ときに威圧的に供述を求められる場合もあり、供述しないことが悪いことのような心情になってしまうこともあります。
 
しかし、先ほど述べたとおり、言いたくないことを言わないことは、憲法上保障された権利です。
したがって、話したくない場合には、毅然とした態度で供述を拒み、もし捜査機関から供述を強制されるような行為(暴言・暴力など)がなされた場合は、直接なり弁護人を通じるなりして、捜査機関に抗議しましょう。
 
(イ)また、供述調書に署名・押印する前に、必ず被疑者自身で調書の内容を確認する機会があります。誤った記載については、訂正を求めるようにしましょう。
記載内容の訂正を求めると、細かい部分だから問題ないだろうなどといって、すんなりとは訂正に応じてくれないこともあります。
また、取り調べが長引くと、被疑者自身も早く終わらせたい気持ちから、内容の誤りに気付きながらも、訂正を求めないことがあります。
 
しかし、供述調書は、内容に誤りがないことを本人が確認したものとして作成されますので、あとになって内容が間違っていると主張しても、簡単には信じてもらえません。
供述調書が刑事裁判で重要な意味を持つことを考えると、些細な誤りであっても、きちんと指摘して訂正を求めることが、自分自身の権利を守ることにつながると思ってください。
また、もし捜査機関が被疑者の求める訂正に応じてくれない場合は、署名・押印しないようにしましょう。

4.まとめ

捜査機関による被疑者の取り調べは、長期間に及ぶことも多く、被疑者にとっては精神的に張りつめた状態が続きます。
早く取り調べから解放されたい一心で、捜査機関の言うとおりの供述調書に署名・押印してしまったりすることがあります。
 
また、捜査機関は取り調べのプロで、被疑者からできるだけ多くの情報を引き出そうとしますので、被疑者が十分に注意して取り調べに臨まなければ、話すつもりのないことまで話してしまう、というのはある意味当然かもしれません。
 
だからこそ、余計なことを供述せず、自分に不利な供述調書を作成されないようにするためには、黙秘権の存在を強く意識して、取り調べに臨む必要があるのです。
何は話してもよく、何は話してはいけないか、自分自身では判断できないこともあると思います。
そのような場合には、供述調書に署名・押印する前に、弁護人に相談するようにしましょう。