1.依存症を原因とする犯罪とは
実刑判決を受けた犯罪者が収容される刑事施設(刑務所)の目的は、収容者に社会生活に適応できる能力を身につけさせ、適正な社会復帰に導くことにあります。
したがって、犯罪を繰り返す人間には、より重い刑罰を科し、社会復帰に向けた適合能力の涵養を図ることになります。
「より重い刑罰」とは、執行猶予付の判決よりは実刑判決、実刑判決であればより長い刑期の判決ということになります。
しかし、犯罪を繰り返す犯罪者の中には、ある特定の行為に対する強い衝動に駆られるのを抑えられずに、犯罪行為に及んでいるケース(いわゆる依存症)が少なくありません。
薬物依存症の患者が薬物を繰り返してしまうというのは、イメージしやすいと思います。その他、一般的に馴染みの薄い言葉かもしれませんが、窃盗を繰り返してしまうクレプトマニア(窃盗癖)というものがあります。
また、アルコール依存症患者が、飲酒時に暴行や窃盗などの犯罪をしてしまうということもあります。
現在では、これらの依存症は一種の病気であると考えられており、本人の反省を促すなどの方法により、犯行を思いとどまることは期待できません。
そうすると、刑事施設での服役によって、社会復帰後の再犯を防止することは困難で、やはり病気には、それぞれの症状に応じた適切な治療行為が必要ということになります。
犯罪を繰り返す犯罪者のご家族に、このような理解がないことで、その人に対する適切な対応ができていないケースは少なくありません。
そこで、本項では、依存症の種類や、それを克服していくための方法について紹介していきます。