2. 具体的な方法について
(1) 自社の取引の履歴を調査する
まず、債権回収に当たって重要なのは、自社と相手方との取引履歴の調査になります。
相手方との契約書を確認することで、契約の日時や債務の内容、保証契約や抵当権設定契約などの担保権の有無が確認できます。
契約や履行期の時期によっては、消滅時効の関係で、早急に法的な手続きを取る必要もあります。
また、履行がなされない契約のみでなく、相手方との間でこれまでに行った取引を調査します。それによって、自社から相手方に対して債務が存在する場合には相殺を、すでに納入した商品がある場合には商品引揚を、それぞれ選択肢として検討できるようになります。
さらに、契約書が存在していないような場合には、改めて債務確認書を作成するなど、現在の権利関係を証拠化する必要が別途生じます。
(2) 債務者との会話で調査する
(ア)次に重要なのは、相手方がどのような状況にあるのか、相手方からの聞き取りです。
相手方の状況を自社内で調査することには限界があるので、相手方から状況を事情聴取できれば、今後の債権回収計画に大きく役立ちます。
もちろん、債務の支払いができない状態になった後に、「どれだけ金融機関から借り入れがありますか?」「どこの会社に債権を持っていますか?」と聞いても、簡単に教えてもらえるはずはありません。
日常の取引において、少しずつ相手の情報を集める必要があります。
特に、取引が安定して行われている状態であれば、「社長が〇〇に別荘を買った」とか「息子が〇〇会社の役員となった」等、おめでたいニュースに混じって、物的・人的な関係を話してくれる場合があります。
(イ)もっとも、支払いが滞った状態においても、交渉の段階での調査はとても重要です。
特に、支払いをしない原因はどこにあるのか、支払う意思はあるのかについて、今後の債権回収の手段選択に大きな影響を及ぼします。
例えば、支払う能力はあるものの、「対応した従業員の態度が悪いので、払いたくない」という理由で支払いを拒否している等、感情的な原因で支払いが滞っている場合もあります。
⑶ 不動産などの資産を調査する
(ア)不動産の調査は、法務局で不動産登記を確認して調査する方法が一般的です。
不動産登記は、地番がわかれば、誰でも取得することができ、不動産の所在、種類、所有者の住所及び氏名、権利変動等の情報が記載されています。
なお、不動産登記上、土地の場所は「所在」及び「地番」として特定されていますが、実際に取引をする中では、建物を特定する「住居表示」しかわからない場合もあるかもしれません。
その場合には、法務局に備え付けられているブルーマップを利用して、住居表示と地番の対応関係を調査することが可能です。
(イ)調査した結果、法人名義の不動産が存在しないことが判明したとしても、資金繰りが悪くなった後に、親族へ譲渡されている等、いわゆる「財産隠し」的な行為をする場合があります。
その際には、詐害行為取消権(民法244条)を行使し、当該譲渡をなかったことにして、財産を戻させる可能性があります。
現時点で資産がない場合であっても、その前後関係から、財産を補足することも可能です。