1.刑事事件における示談の重要性とは

犯罪には、被害者がいる犯罪と被害者がいない(とされる)犯罪があります。
 
被害者がいる犯罪には、窃盗罪、傷害罪、強制わいせつ罪などがあります。
被害者がいない犯罪には、薬物犯罪、賭博罪、酒酔い運転(酒酔い運転をして事故を起こせば被害者がいますが、運転するだけであれば被害者はいないといえるでしょう)などがあります。
 
このうち、被害者がいる犯罪においては、刑事事件で有利な処分を獲得するために、被害者との間で示談をすることが非常に重要になります。
そこで、刑事事件における示談の重要性と、示談をする上での弁護人の役割を説明していきます。

2.身柄の早期解放について

その他の項でも説明していますが、刑事事件の身柄の拘束は、逮捕、起訴前勾留、起訴後勾留と続き、それぞれのタイミングで身柄を釈放される可能性があります。
そして、身柄を拘束するかどうかの判断は、証拠を隠滅するおそれがあるかどうか、逃亡のおそれがあるかどうかが、主な判断材料となります。そのようなおそれがないと判断されれば、身柄を釈放される可能性が高まります。
 
被害者と示談をすることで、自身の犯した罪を認めて謝罪し、損害を賠償する意思を示すことができます。したがって、被害者と示談した被疑者・被告人は、証拠を隠滅したり、逃亡したりするおそれがないものと判断されやすくなり、身柄が釈放される可能性も高まるのです。
 
したがって、逮捕段階であれば、勾留を阻止することにつながりますし、起訴前勾留段階であれば、勾留延長を阻止することにつながります。
 
また、起訴後勾留段階であれば、保釈を獲得することにつながります。

3.不起訴の獲得について

犯罪をした者が起訴されて、有罪判決を受けると前科として扱われます。しかし、警察及び検察が捜査を行った結果、被疑者が犯罪を行ったことが明らかである場合であっても、検察官が必ずしも起訴するとは限りません。(なお、起訴するかどうかを判断して実際に起訴するのは検察官で、警察は起訴する権限を有しません)
 
事件が軽微な場合や被疑者が初犯である場合など、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるに足りないと判断した場合には、不起訴処分(このような理由で起訴しないことを「起訴猶予」といいます)となることがあり、身柄を拘束されている場合には、この時点で釈放されることになります。
 
検察官が起訴するかどうか迷うような事案において、被害者との示談が成立しているかどうかは、一つの決定的な判断材料となり得ます。
したがって、被害者との示談は、不起訴の獲得に向けたもっとも大きな活動といえるでしょう。

4.執行猶予の獲得について

有罪判決には、実刑判決と執行猶予判決があります。
 
実刑判決を受けると、必ず刑務所に服役します。執行猶予付判決の場合、一旦普通の生活に戻り、その他の犯罪をすることなく一定期間(3年~5年程度のことが多いです)を経過すると、刑の言い渡しが効力を失い、刑務所に服役せずにすみます。
 
つまり、執行猶予期間中に犯罪をしなければ、有罪判決を受けなかったのとほとんど変わらない状態になるのです。(もっとも、前科の扱いは受けます)
 
そして、裁判官が実刑判決にするか、執行猶予付判決にするか、迷うような事案においては、被告人が被害者と示談しているかどうかは大きな判断材料です。
 
したがって、被害者との示談を成立させることは、執行猶予付判決の獲得に向けても大きな活動といえます。

5.示談における弁護人の役割について

国選弁護人がつかない事案の場合、自分で報酬を払ってまで、刑事弁護人をつけるべきかどうか迷うこともあると思います。また、国選弁護人がつく事案の場合でも、自分で弁護人を選ぶために、私選弁護人をつけるかどうか迷うこともあると思います。
 
そこで、示談を交わす上での弁護人の役割を説明しますので、弁護人をつけるかどうか悩まれた際には参考にされて下さい。
被害者と示談を交わす場合、被害者の連絡先を入手し、被害者と話し合いを行い、話し合いがまとまったら示談書を作成する、というのが大まかな流れです。