1.少年鑑別所とは

「少年事件の流れ」の項で説明しましたが、少年が観護措置をとられると、少年鑑別所へ送致されます。
少年鑑別所は、日常生活を離れて施設に収容されるという点においては、少年院と同じです。しかし、審判において少年に対する処分を決定するために、少年の資質や性格について鑑別を行う(これを「心身鑑別」といいます)ことを目的としており、少年の更生を目指す少年院とは目的が異なります。
 
したがって、少年鑑別所での生活や調査の結果は、審判において少年に対する処分を決定するための判断に、大きな影響を与える可能性があります。
そこで、本項では、少年鑑別所について詳しく説明していきます。

2.少年鑑別所の役割について

「鑑別結果通知書」とは

先ほど述べたとおり、少年鑑別所では、少年に対する処分を決定するための心身鑑別を行います。
具体的には、知能検査や鑑別技官による面接、心理テスト、日頃の行動観察などを行うことにより、非行少年の資質を鑑別し、これらの結果を報告する内容が「鑑別結果通知書」として家庭裁判所に送られます。
 
通常、少年鑑別所には約4週間程度の長期間にわたって収容されます。その中で行った調査の結果や生活の様子などは、調査官による調査結果を報告する「調査票」とならんで、裁判官が少年の処遇を決定する際の重要な判断材料の一つになります。


 

「少年簿」とは

また、審判における参考資料となるにとどまらず、「少年簿」として少年院や保護観察所に送られることから、処分決定後においても、少年に対する指導上の重要な資料になります。
 
このように、少年鑑別所は、同施設自体において少年を更生に導くために存在するというよりは、その後の少年に対する処分や指導を行う上での材料を提供するために存在するものといえます。
 
もっとも、少年鑑別所に収容されることによって少年の反省が深まったり、集団生活を行う中で、協調性が涵養されたりする効果も期待できます。そのため、実質的には少年の更生に向けた役割を果たしている面もあることは間違いありません。

3.少年鑑別所での面会について

少年鑑別所では、心身鑑別のための課題として文章や絵を書いたり、工作をしたりする時間があります。また、生活面においても、運動をする時間があったり、テレビを観られる時間があったりするなど、逮捕されてから観護措置をとられるまでの間に身柄を拘束される留置場と比べると、少年にとってずいぶんと生活しやすい場所であるといえます。
 
とはいえ、日常生活から離れて鑑別所の中に収容されて生活することが、少年にとっては寂しくもあり、不安でもあることは間違いありません。
そのような状況で、誰も鑑別所に面会に来ない期間が長くなると、「自分は周りの人間から愛されていないのではないか」などと、自暴自棄になってしまうこともあります。
したがって、少年が自分自身に対する周囲の愛情を感じるためという意味においても、少年が鑑別所にいる期間に、外部の人間と面会をする機会を持つことは重要です。
 
この点、少年鑑別所処遇規則38条には、「少年に対し、面会を申し出た者があるときは、近親者、保護者、附添人その他必要と認める者に限り、これを許す」と規定されています。両親や兄弟などは面会が認められますし、少年の学校の先生や、少年がすでに働いている場合の雇い主なども、「その他必要と認める者」として面会が認められます。(これに対し、少年の学校の友達などは、一般的に面会が認められないと考えるべきでしょう)
 
これらに該当する方には、積極的に少年と面会して、話を聴いてあげたり、少年に対する思いを伝えたりしていただければ、少年が鑑別所で生活していく励みになるでしょう。
なお、福岡の少年鑑別所では、面会の受付時間は平日午前9時から午後4時までです。一般の方は、電話等での予約はできないため、面会までに一定時間待たされることもありますので、ご注意ください。

4.まとめ

最初に述べたように、少年鑑別所の目的は、審判における判断のために少年を心身鑑別することにあります。
しかし、少年にとっては、審判においてどのような処分が下されるかが重要であることはもちろんですが、それ以上に、処分が下されたあと、どのように更生の道を歩むかが重要です。
 
万一、家族や知り合いなどが少年事件の対象になってしまった場合には、長い目で見た少年の更生のために、少年鑑別所での約4週間の間に、どのように少年と関わるべきかという観点で、面会等に臨んでいただくとよいのではないでしょうか。
また、弁護士の付添人がついた場合には、付添人とも十分連絡をとり、連携をとって少年の更生に向けた取り組みを行ってください。