1 概要
養育費の支払い義務は、扶養義務者である親の扶養権利者である未成熟子に対する生活保持義務(自己の生活と同等の生活を保持すべき義務)と考えられています。
この支払い義務は、子の親という身分関係に基づいて発生するので、離婚の際に養育費に関する取り決めをしていなくても、元夫または元妻に対して養育費の分担を請求することができます。
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養育費の支払い義務は、扶養義務者である親の扶養権利者である未成熟子に対する生活保持義務(自己の生活と同等の生活を保持すべき義務)と考えられています。
この支払い義務は、子の親という身分関係に基づいて発生するので、離婚の際に養育費に関する取り決めをしていなくても、元夫または元妻に対して養育費の分担を請求することができます。
未成熟子とは、「身体的、精神的、経済的に成熟化の過程にあり就労が期待できず、第三者による扶養を受ける必要がある子」であり、未成年者とは異なります。
そこで、養育費の支払い義務は未成年に限定されていませんので、親の資力や学歴、社会的地位や家庭環境等を考慮して、通常大学卒業以上の高等教育を受ける家庭環境であると判断される場合には扶養義務を負担させることができると考えられています。
もっとも、離婚訴訟で養育費の支払いを命じる場合には、成年に達する月までとされるのが通常です。
養育費の額、支払方法、期間は、夫婦間または子を監護している親ともう一方の親の協議で決めます。口頭で取り決めることもできますが、支払いが滞った場合に確保できるように「支払い約束を破った場合には強制執行しても構わない」という文言を入れた公正証書(執行認諾文言付公正証書)を作成しておくことをお勧めします。この公正証書があれば、支払いが滞った時すぐに給与債権等に強制執行を掛けることが可能になります。
協議ができない場合には、家庭裁判所に養育費支払いの調停を申立てることができます。調停が整わない場合には、審判に移行して裁判官が一切の事情を考慮して審判します。
養育費は過去の分を請求することはできますが、いつの時点からの養育費を請求できるかについては、実務上判断が2つに分かれています。
1つは、扶養を請求した時点から扶養義務が発生するという考え方です。この場合、養育費の支払いを求める意思を表明した時点以降からの分を請求できることになります。
2つ目は、扶養権利者に要扶養状態があり、扶養義務者に扶養可能状態があれば、扶養請求権が発生するという考え方です。この場合、事案により別居時、離婚時、支払いが止まった時など始期は異なりますが、請求した時点以降に限定することなく養育費の分担を請求できます。
養育費の額は、収入、資産、生活状況、子の数、年齢等の事情を考慮して両親が協議によって決めるのが原則です。
調停・審判では、簡易迅速に養育費の算定が可能な算定表が広く使われています。算定表は、子供の数や年齢から票を選択して、両親の収入を当てはめることで養育費の額が分るようになっています。算定表は、裁判所のホームページ等に掲載されています。
もっとも、算定表では資産等の個別的事情は反映されませんので、支払義務者は経済的に余裕があるのに養育費の額が低額になってしまうこともあり得ます。したがって、個別的な事情があることを主張して、算定表の額に上乗せした合理的な養育費を請求していくことが必要です。
離婚当時に予測し得なかった個人的事情、社会的事情に変更があった場合には養育費の変更が認められる可能性が有ります。
病気やけがによる長期入院などの事情がある場合に、増額に応じられるだけの経済的な余力があることが必要となります。
また、子供が高等教育に進学したい意思を有している場合に卒業時までの支払期間の延期が認められるかは、子の学習意欲や親の学歴、資力等を総合的に考慮して判断されます。
リストラや倒産により支払義務者の収入が大きく減少した場合には、減額が認められる可能性が高いです。
その他、以下の場合には減額請求が認められる場合が高いです。
ア 扶養義務者の再婚
扶養義務がある者が再婚し子供が生まれた又は養子縁組した場合、養育費の支払い義務が当然になくなるわけではありません。しかし、再婚相手やその間に生まれた子や養子に対して扶養義務を負うことになりますので、養育費算定の基礎となった経済状態から変更が生じている可能性が有ります。
イ 扶養権利者の再婚
子を連れた扶養権利者が再婚をしても、子と再婚相手との間には当然には親子関係は発生せず、養子縁組をして初めて法律上の親子関係が生まれ扶養する義務が生じます。しかし、養親に養子に対する扶養義務が発生しても、実親の扶養義務が当然になくなるわけではありません。もっとも、共同生活をしている養親が第一次的な扶養義務者になると解されています。