1.不適切な取引になりやすい「訪問販売」

商品購入の意向がない消費者へ業者が訪問して勧誘を始めるという、不意打ち的な勧誘が行われる「訪問販売」。
 
業者が推奨する特定商品について説明され、当該商品を購入するかどうかの意思決定をその場で迫られ、直ちに契約締結に至るという特徴から、消費者にとって情報が不十分かつ冷静な意思形成が困難な状況で行われるため、不適正な取引になりやすいといえます。
 
そこで、特定商取引法(以下、「特商法」といいます)では、一定の規制を加えて訪問販売取引の適正化を図っています。

2.特定商取引法について

特商法が適用される訪問販売は、次のとおりです。


 

(1)特商法が適用される訪問販売の「主体」

訪問販売の主体は、商品および指定権利の売買契約については「販売業者」、役務の有償提供契約については「役務提供事業者」です。


 

(2)特商法が適用される訪問販売の「相手方」

「商品および指定権利の購入者、または役務の提供を受ける者」であり、消費者に限定されていません。
もっとも「営業のため、もしくは営業として」購入した場合は、特商法の適用が除外されます。


 

(3)特商法が適用される訪問販売の「場所」

「営業所、代理店その他の経済産業省令で定める場所(以下、営業所等といいます)以外の場所」、と規定されています。
 
消費者が商品購入のために自らの意思で店舗等に出向いて主体的に商品を選択し取引を行う店舗販売と、営業所等以外の場所で事業者が不意打ち的に働きかけて取引を行う場合を区別するものです。
 
営業所等においての取引であっても、以下のような特定の誘引方法による顧客については、訪問販売に含まれます。
 
(ア)同行型販売(キャッチセールス)
 
路上等など営業所以外の場所で呼び止めて営業所等に同行させる方法
 
(イ)目的隠匿型呼出販売
 
電話や郵便、ビラ等の配布などの誘引手段で販売目的を告げずに営業所等に来訪させ、突然商品販売の勧誘を始めることは、訪問販売と不意打ち性は異ならないことから適用されます。(例えば、「抽選に当選した」や「展示会のアルバイト募集」など勧誘する意図を告げない場合など)
 
(ウ)有利条件型呼出販売
 
「あなただけに特別有利に」という勧誘方法は、冷静な判断力を失わせやすいため適用されます。
一定の範囲の特定人に限定して有利な条件を告げていることが前提となるため、誘引手段は電話、郵便、住居訪問等と規定され、多数人に呼びかける方法であるビラ等の配布は除かれます。また、当該呼出以前に取引があった者に要請する場合、弊害が少ないため適用が除外されます。(例えば、以前取引をした相手に「お得意様優待日」等の招待状を出す場合など)


 

(4)特商法が適用される訪問販売の「対象品目」

適用対象となるのは「商品」「指定権利」「役務」です。
 
指定権利とは、政令で指定されている権利であり以下を指します。
 
(ア)ゴルフ会員権、リゾートクラブ会員権およびスポーツクラブ会員権
(イ)映画・演劇・コンサートの入場券、スポーツ観戦チケットおよび展覧会・展示会等のイベントの入場券
(ウ)語学教室でのレッスンチケット


 

(5)特商法が適用される訪問販売の「行為」

適用対象の行為は「申込みを受けること」、または「契約を締結すること」です。

3.特定商取引法の行政規制

特商法は、以下4項目を定め規制しています。


 

(1)契約内容・条件に関する重要な事項

法定の書面の交付をもって告知すること


 

(2)誘引開始段階

不意打ち性を回避し、消費者の意向を尊重すること


 

(3)契約の勧誘場面または解除を妨げる場面

不適正な勧誘方法を罰則をもって禁止すること


 

(4)勧誘場面・契約締結時・解除を妨げる場面

不適正な行為を対象行為として規制すること

4.クーリングオフについて

(1)クーリングオフとは

クーリングオフとは、一定の期間内であれば消費者が事業者との間で申込み、または締結した契約を無理由かつ無条件で撤回または解除ができる権利です。


 

(2)クーリングオフの「行使期間」

「法定書面を受領した日から起算して8日間」は、熟慮期間として考え直す機会を与える趣旨であり、申込みの撤回、契約の解除ができます。
 
「法定書面」には、業者名、住所、日付、商品名、型式、数量、価格、クーリングオフができる旨、違約金等の負担がない旨等の記載が必要です。


 

(3)クーリングオフの「起算日

法定書面を受領した日となります。
 
業者には法定書面を交付する際に書面内容をみていることを確認のうえ、クーリングオフができる旨を口頭で告知する義務があります。法定書面の要件を満たしていない場合や告知義務を果していない場合には、クーリングオフの起算日は開始しません。


 

(4)クーリングオフの「行使方法」

法定書面を受領した日となります。
 
業者には法定書面を交付する際に書面内容をみていることを確認のうえ、クーリングオフができる旨を口頭で告知する義務があります。法定書面の要件を満たしていない場合や告知義務を果していない場合には、クーリングオフの起算日は開始しません。


 

(5)クーリングオフの「効果」

クーリングオフの効果は、契約の効力が遡及的に消滅することです。消費者は代金支払い義務が消滅し、受領済みの商品等があればこれを返還する義務があり、販売業者には、受領済みの代金の返還義務を負います。
 
また、消費者が無条件で負担なく行使できるように、販売業者は解除にともなう損害賠償または違約金の請求ができず、原状回復費用(商品の返送費用等)は業者が負担しなければなりません。
 
商品を使用したことにより受けた利益や提供済みの役務の対価、消費した商品の場合も残存商品を返還することのほか返還義務を負いません。