松本永野法律事務所
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1. 企業法務とは

企業法務という言葉はよく耳にするかもしれませんが、その範囲は明確に定まったものではなく、会社によってもまちまちです。
企業の経営等に関わる法律事務一般を総称したものが、企業法務です。したがって、企業法務の果たすべき役割は、対内的なものから対外的なものまで、多岐にわたります。

また、最近はコンプライアンス(法令遵守)の意識が高まってきており、法令違反が企業に対して大きなダメージを与えることも少なくありません。企業法務は、経営上も重要な役割を担っているといえます。
そこで、以下では、企業法務の種類をいくつかに分けて、その役割を説明していきます。

2. 企業法務の役割について

(1) 法的問題への対応とは

企業法務の仕事としてまずあげられるのは、企業を経営していく中で、実際に法的な問題が起こった際の対応です。

会社で起こる法的な問題としては、たとえば、①取引相手がお金を払わない場合などの債権回収に関するトラブル、②販売商品に関するクレームが発生した場合などの顧客対応に関するトラブル、③社内でセクハラやパワハラが発生した場合などの従業員間のトラブルなどが考えられます。
このように、現に起こったトラブルに対処する企業法務を、臨床法務・治療法務・裁判法務などといいます。

企業を経営する上で、上記のようなトラブルが完全になくなることはありませんし、予想もしていなかったトラブルに見舞われることも少なくありません。
ないに越したことはありませんが、起こってしまった場合に、どのように対処できるかが、その後の経営に大きな影響を与えることもあります。
法的なトラブルが起きた場合には、自分だけで解決しようとするのではなく、手遅れにならない早めの段階で、弁護士等の専門家に相談することを検討されるとよいでしょう。

(2) 法的問題の予防とは

次に、企業法務の役割として重要なのが、上記のような法的トラブルを未然に防止するための対応です。
具体的には、取引先や顧客とのトラブルを防止するための契約書の作成や、従業員の不祥事を防止するためのコンプライアンス教育などがあげられます。
このように、会社における法的トラブルを未然に防止する企業法務を「予防法務」といいます。

(1)のように実際に問題が生じたときには、放置するわけにはいかないので、必死になって対応するのが普通ですが、このような予防法務は経営者にとって後回しになりがちです。

しかし、トラブルを上手く予防できれば、トラブルが発生した際の対応にかける、労力や費用を節約できますし、それが会社の経営の安定にもつながります。
このように、予防法務を充実させることによるメリットは大きいですから、会社はもっと積極的に、予防法務に取り組むべきであろうと思います。

もっとも、将来的に起こる可能性がある法的トラブルを、あらかじめ的確に想定することができなければ、法的トラブルを予防するための対策を講じることもできません。
そのように考えると、実際に問題が起こってから、弁護士等の専門家のところに相談に行く経営者は多いですが、予防法務こそ専門家の力がもっとも必要な場面と言えるのではないでしょうか。

法的トラブルが起こること自体を未然に防止することで、長い目で見れば、弁護士等の専門家に支払う費用の節約にも繋がります。経営者の方は、この機会に予防法務の充実を検討されてみてはいかがでしょうか。

(3) 企業戦略決定のサポートとは

最後に、企業を経営していく上での、意思決定に関わる法律事務があげられます。
企業を経営していく上では、企業の買収や合併などの組織に関わる意思決定や、新商品の開発などの事業に関わる意思決定、従業員への給料や福利厚生などの対内的な意思決定など、さまざまな決定が必要になります。

このような意思決定を行うにあたっては、どのような決定をするかを判断する材料として、法的リスクの分析や効果的な知的財産権の活用方法の検討などが必要になります。
これらの作業を行うことによって、会社が最善の意思決定を行えるように、法的観点からサポートを行う企業法務を「戦略法務」といいます。
企業におけるコンプライアンス(法令遵守)の重要性が高まっている昨今において、経営戦略を決定する上で、法的観点からの分析を行う必要性はますます大きくなってきています。
その過程において、法律の専門家である弁護士等の力は大きな助けになるでしょう。

3. まとめ

以上で説明してきた通り、企業法務の役割には様々なものがあります。
会社の経営は、経営のプロである経営者によって行われるものですが、会社経営には多くの法的な問題が潜んでいるのも事実です。それを知らないでいると、思わぬ法的トラブルに見舞われることもあります。

備えあれば憂いなし。不測の事態を回避して、安定した経営を実現するためにも、今一度、会社の経営状況を法的観点から見直してみてはいかがでしょうか。