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マンションの老朽化問題(不動産業)

2019年9月11日
【顧問弁護士】マンションの老朽化について(不動産業)

老朽化の問題と区分所有法

事業者の方が、管理会社として、あるいは賃貸用物件や商業施設部分の区分所有者としてマンションの管理に携わったりすることは多いと思います。 日本では、1970年代から、鉄筋コンクリート造りのマンションが急激に増加しました。そのため、現在、日本国内には建築から50年を迎えようとするマンションが数多く存在しています。

鉄筋コンクリートの建物は100年持つといわれることもありましたが、今では建物の寿命はもっと短いと考えられています。 税制上の法定耐用年数としては、鉄筋コンクリートの建物の場合、昔は75年と定められていましたが、現在は47年と定められています。 1970年以前の日本では鉄筋コンクリート造りのマンションが少なかったので、鉄筋コンクリート造りの建物の寿命がどれくらいなのかは、今後、徐々に明らかになるでしょうが、現在のところ、50年から60年くらいと考えられることが多いようです。 そのため、鉄筋コンクリート造りのマンションの築年数が50年を超えれば、老朽化しつつあるものとして、老朽化に対する対応策を考える必要があります。

マンションが老朽化した場合の対応策として考えられるのは、まず大規模修繕です。 大規模修繕工事は10年から15年に一度の割合で行われることが多く、定期的に建物の検査と大規模修繕工事を繰り返すことで、既存建物の資産価値を維持し、長期的に建物を利用することが可能となります。 もっとも、大規模修繕のためには、各区分所有者が修繕のための積立金を支払う必要がありますし、建物の築年数が経過すれば、大規模修繕のための工事費用も増加していきます。 そのため、マンションの築年数が50年を超える頃になると、大規模修繕工事が各区分所有者にとっても重荷になってきます。 また、大規模修繕工事を行っても、いつか建物の寿命はやってきます。

マンションの老朽化対策として次に考えられるのは、マンションの建て替えです。 区分所有法で、マンションの建替え決議の方法が定められており、管理規約でも区分所有法に則った手続が定められていますが、マンションの建替え決議の要件は、区分所有者の5分の4の賛成を要するなど、厳しく設定されています。

老朽化の対策方法

耐震性に問題がある建物では建替え決議の要件が緩和されていますが、対象は未だ一部の建物に限られています。 また、マンション建築当時と建築関係の法律が改正されていることとの関係などで、建替え前後で同じ間取りのマンションを建設することができないこともあります。 そのため、特に高齢の方などは建替えには消極的な場合が多いです。 建替えが難しいということになれば、マンションの老朽化に対する対応策として、建物を解体した後、建替えではなく、土地を売却することも検討する必要があります。 現在のところ、区分所有法では、建替え以外の目的で建物を解体することについての定めはありませんので、建物を解体して土地を売却する場合には、原則として、区分所有者全員の同意が必要になります。 築50年のマンションとなれば、空き部屋もあるでしょうし、区分所有権に複数の相続が発生している可能性もありますが、その場合は、相続人の確認から行わなければなりません。

このように、建物を解体して土地を売却するためには手続が非常に煩雑になりますが、現存するマンションの全てが建替えられるとは考えられないため、相当数のマンションで、建物を解体して土地を売却するという手段を選択せざるを得ないと考えられます。 老朽化したマンションをどうするかは、基本的に各区分所有者の意思に任されており、各区分所有者の意思統一を図った後で、進めていくべきとされています。 ところが、ここまで述べたように、大規模修繕やマンションの建て替えは各区分所有者に経済的負担を強いることになりますし、マンションの解体の場合も含めて、それぞれ手続も煩雑であることから、各区分所有者からマンションの老朽化への対策として、積極的な提案がなされることは期待しにくいのです。 このようにして、老朽化に対する対応策が検討されないまま、マンションが手の施しようがないほどに老朽化が進んでしまうと、結局、管理会社等の事業者が何らかの対応をせざるをえないということになるのではないでしょうか。

まとめ

建物が老朽化して倒壊のおそれなどが生じた場合には、事業者が管理責任を問われる可能性もあります。 私共も、マンションの老朽化対策について事業者の方から種々のご相談を受けていますが、非常に難しい問題です。 各マンションの構造や立地環境、各区分所有者の意向も含め、老朽化にどのように対応するか、早めに弁護士と連携することをご検討ください。