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自己破産の基礎知識

2021年7月16日

自己破産するための条件

借金をすべて帳消しにできる自己破産ですが、誰でも自由に利用できるわけではありません。
まずは、自分自身が自己破産できる条件に、当てはまっているかを確認しましょう。

自己破産できる条件とは

借金が払えない状態である

破産法では自己破産をする条件のひとつに、借金が「支払不能」状態であると定められています。
支払不能な状態とは、債務者に返済能力がなく、完済のめどが立たない状況をいいます。
しかし、債務者の年収や保有財産などによって、支払不能となる借金の額も違ってきます。
そのため、支払不能かどうかは、支払えないことを外部に表明する「支払停止」の行為で判断されます。支払停止には、2回目の手形不渡りを出して銀行取引が停止されてしまったり、夜逃げ行為などがあげられます。また、弁護士に自己破産などの債務整理を依頼することも支払停止となります。

免責を得られる可能性がある

免責とは、借金の支払義務を免れることができることです。
しかし、自己破産が認められない借金の理由(免責不許可事由)がある場合は、免責が認められないことがあります。
免責不許可事由の具体例としては、
●過去7年以内に、自己破産したことがある。
●浪費やギャンブルで多額の借金を作った。
●債権者への配当に充てられる財産が全くない。
●年金や生活保護を受け取っている。
ただし、以上のような理由でも、裁判所が事情を考慮して免責を許可するケースもあります。

自己破産できる条件とは

自己破産をすると、借金だけではなく、滞納した家賃や携帯の利用料金などの支払い義務まで解決することができます。
しかし、たとえ自己破産をしても、以下の支払いは解決することができません。
●住民税/自動車税などの税金
●国民健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料
●公共料金
●悪意で加えた不法行為による損害賠償の支払い
●子どもの養育費や夫婦間の生活費
●従業員への給与支払い

自己破産手続きの流れ

自己破産手続きは、以下のような流れで進められます。
●申立て
自己破産の申立ては地方裁判所で行い、破産手続開始決定までには1ヶ月程度かかります。

●開始決定
自己破産手続きは、財産を売却して債権者へ配当する「管財事件」と、手続開始と同時に終了させる「同時廃止事件」の2種類があります。

●財産の売却・債権者への配当
破産者の財産を売却して得られた金銭を、債権者へ配当し終わると、自己破産手続きは終了します。

●免責手続
債権者への配当後、残った負債を処理するために「免責手続」が行われます。

自己破産費用について

自己破産にかかる費用の相場

自己破産を考えたとき、まず心配になるのが費用の問題です。
自己破産にかかる費用には、「裁判所に納める費用」と「弁護士費用」の2つがあります。

裁判所に納める費用の相場

自己破産の際に裁判所に納める費用には、申立手数料・予納金・郵券の3種類があります。相場は、数万円から50万円程度です。

弁護士費用の相場

自己破産手続きを弁護士に依頼した場合、同時廃止事件では20万円~30万円、管財事件では50万円前後となります。

自己破産費用を安く抑える方法

お金に困っているから自己破産したいのに、高額な費用がかかったら自己破産もできない。 そこで、費用をなるべく安く抑えるための5つの方法をご紹介します。

1.自分で自己破産を申し立てる

簡単な事案であれば、自分で申立てると弁護士費用を節約できます。しかし、専門的な法律知識を要する事案もあるので、事前に弁護士の無料相談を利用して、アドバイスを受けてみましょう。

2.所有財産を弁護士費用に充てる

同時廃止になる可能性も出てきて、費用を大きく抑えられます。

3.法テラスを利用する

法テラスは安い費用で弁護士に依頼でき、その費用を分割払いにしてもらえる「民事法律扶助」の制度があります。

4.司法書士に依頼する

司法書士は自己破産手続きを取り扱い、弁護士よりも安い費用で依頼できます。ただし、司法書士は依頼者の代理人として活動が認められていないので、ご注意ください。

5.費用の安い弁護士を探す

弁護士費用は事務所ごとに自由に金額を定めているので、できる限り費用の安い弁護士を探すことが重要です。無料の法律相談を利用したり、インターネットで探してみましょう。

自己破産を弁護士に依頼するメリット

「弁護士費用がかかるから」と、自分で自己破産の手続きをすることは可能です。
しかし、手続きは煩雑で、少しでも書類に不備があると、裁判所からやり直しを命じられ、余計な手間と時間がかかります。 自己破産をした人の多くが、費用を払ってでも弁護士に依頼しているのは、大きなメリットがあるからです。

1.面倒な手続きをすべて任せられる

自己破産の申立てには、数多くの書類を作成する必要があります。弁護士に依頼すれば、必要となる書類や裁判所のやり取りまで任せられるので、手間や時間がかからず、精神的にも楽になります。

2.免責が得られやすい

自己破産の手続きには、裁判所で借金の理由などを聞かれる面談があり、ギャンブルや浪費が理由のの場合には、免責を得られないケースもあります。しかし、弁護士は免責を得るためのノウハウを熟知しているので、免責が許可されやすくなります。

3.裁判所へ支払う費用を安くできる可能性がある

所有財産から弁護士費用を払うことで、財産を減らし、同時廃止事件になる可能性が高まります。 そのため、裁判所へ支払う費用を安くできる可能性があります。

4.取立がすぐに止まる

自分で自己破産手続きをする場合は、裁判所に申立てて、債権者に通知されるまで取立は止まりません。一方、弁護士に依頼すると、すぐに取立が止まるので、安心して生活できるようになります。

5.最適な解決方法を提案してもらえる

借金の悩みを解決するには、自己破産以外の方法が適していることもあります。
弁護士に相談すれば、あなたの今の状況に最適な解決方法を提案してもらうことができます。

自己破産にかかる期間

自己破産の免責を得るまでにどれくらいの期間がかかるのか、不安になることと思います。 必要な期間は、手続きの種類によって異なります。

自己破産の期間とスケジュール

財産が少ない人の場合に選択される「同時廃止」は簡易な手続きなので、かかる期間も短くなります。財産が一定以上ある人の場合に選択される「管財事件」は、複雑な手続きになるので、同時廃止よりもかかる期間が長くなります。

申立てまでの期間

申立てまでの手続きは、同時廃止も管財事件も共通ですが、自己破産では非常に多くの書類を揃える必要があります。
弁護士に相談してから破産申立てをするまでは、スムーズに進んだ場合でも2ヶ月くらいかかります。

同時廃止の手続きに必要な期間

破産申立てから、裁判所による破産手続開始決定までの期間は、およそ1週間~1ヶ月です。
同時廃止の場合は、清算すべき財産がないため、破産手続開始と同時に破産手続を廃止します。
その後、裁判所は免責にするかどうかを判断するため、債務者と面談を行う「免責審尋」を行います。そこでは、裁判官から「どうして借金をしたのか」「なぜギャンブルや浪費をしたのか」「反省をしているか」などの質問をされます。
免責審尋で問題がなければ、免責決定を出してもらい、借金がゼロになります。
同時廃止の場合は、破産手続開始決定後、免責が確定するまでは3ヶ月くらいです。

管財事件の流れと必要な期間

破産申立てから破産手続開始決定までの期間は、同時廃止の場合と同様、およそ1週間~1ヶ月です。
管財事件の場合、破産手続開始決定とともに、破産管財人が選任されます。破産管財人は財産を現金に換えて、債権者に対して配当を行います。
裁判所では、債権者集会が開かれ、破産管財人による収支・財産の報告があります。破産管財人による換価と配当の手続きが終了すると、破産手続は廃止されます。
その後、裁判所が債務者の免責を認めるかどうかを判断し、認められると借金の返済義務がなくなります。期間は、早くて4ヶ月ほど、長い場合には1年以上かかるケースもあります。

自己破産にかかる期間が長くなる場合

書類の収集に時間がかかるケース

自己破産の申立ては、大量の書類を収集する必要があります。その中には、住民票は発行後3ヶ月以内のもの、給与明細書は直近3ヶ月分が必要など、期限がある書類も多数あります。
書類集めに手間取って、申立てまで3ヶ月から半年ほどかかってしまうこともあります。
申立て前に時間がかかると、債権者から弁護士に問い合わせが来たり、貸金請求訴訟を起こされることもあるので、早めに集めておくことが大切です。

管財事件で財産関係が複雑なケース

債務者の財産関係が複雑な場合、手続きにかかる期間が長くなります。
売掛金があって、相手が支払わない場合には、管財人が相手に対して裁判を行い、回収しなければなりません。
不動産があったり、財産が多い場合も、換価の手続きに手間取り、時間がかかってしまいます。
管財事件になって財産の換価が進みにくいときには、10ヶ月以上かかってしまうケースもあります。

反対している債権者がいるケース

貸金業者や金融機関はほとんどありませんが、個人の債権者がいる場合に意見を出してくることが多くあります。
債務者として反論をする必要がありますが、このように主張と反論が何度も繰り返されることで、自己破産の手続きにかかる期間が延びてしまいます。

また、債権者は免責決定に反対して、「即時抗告」という不服申立をすることができます。地裁レベルで免責決定が出ても、即時抗告をすると免責決定が確定せず、高等裁判所での審理に移り、さらに期間が延びることになります。

自己破産後の生活

自己破産をして借金は帳消しになっても、破産後の生活に不安を感じる方も多いと思います。
自己破産後の生活はどうなるのか確認しておきましょう。

自己破産すると財産を全て失ってしまうのか

自己破産をしても、一定の財産は手元に残り、全てを失ってしまうことはありません。また、家族名義の財産が差し押さえられることもありません。
法律によって、特定の財産の差し押さえが禁止されています。
主なものとしては、
・生活必需品(衣服、寝具、家具、台所用品、畳、建具など)
・1ヶ月分の食料や燃料
・標準的な世帯の2ヶ月の必要生活費として66万円
・仕事の道具(農具、漁具、家畜、種、餌など)
・実印、仕事で必要な印鑑
・年金(受給権)、生活保護費など

自己破産しても変わらないこと

自己破産をすると、もう普通の生活ができないと思われるかもしれませんが、破産後もそれまでとあまり変わらない生活を送ることが可能です。

1.賃貸住宅を借りることはできる

賃貸住宅では、家賃を滞納しない限り、追い出されることはありません。新たに賃貸住宅を借りることもできますが、ブラックリストに登録されているため、保証会社を利用できない可能性があります。

2.給料は今までどおりもらえる

法律上は一定額を破産管財人に納めることとされています。しかし、給料は労働者にとって生活の糧であるので、給料が高額な方以外は、今までどおり給料を全額もらうことができます。

3.自営業は続けられる

自己破産しても自営業は続けられますが、事業用の設備などは財産となるので、評価額によっては処分することになります。規模を縮小して事業を継続できれば、廃業する必要はありません。

4.年金も今までどおりもらえる

国民年金や厚生年金などの受給権は、差押えが禁止されています。年金を受給している方は、今までどおりもらえて、まだ受給してない方も将来の年金額が減ることはありません。

5.生活保護も受けられる

生活保護を受けていても自己破産はでき、支給額が減ることもありません。また、自己破産後に生活保護を受け始めることもできます。

6.携帯電話やスマートフォンは利用できる

携帯電話やスマートフォンが解約されることはなく、自己破産後に新規契約することも可能です。ただし、ブラックリストに登録されていると、端末を分割払いで購入することは難しくなります。

7.家族には原則として影響ない

自己破産は個人単位の手続きなので、家族の財産が処分されたり、家族に借金の請求が来ることもありません。しかし、家族が保証人や連帯保証人になっている場合は、家族が請求を受けます。

8.選挙権はなくならない

自己破産しても、選挙権には影響ありません。

9.戸籍や住民票が汚れることはない

自己破産したことは、戸籍や住民票に記載されません。役所で記載されるのは、本籍地の破産者名簿だけですが、一般の人が見るものではなく、免責が確定すると削除されます。

自己破産することで得られるメリット

自己破産をしても生活に大きな支障はなく、借金の免除という大きなメリットを得ることができます。

1.借金が全部なくなる(奨学金も含む)

最大のメリットは、借金がすべてなくなることです。消費者金融などからの借金だけでなく、奨学金も免責され、返済の必要がなくなります。

2.取り立てが止まる

自己破産手続きの開始決定が出ると、債権者からの取り立ては止まります。ただし、ローンが残っている家や車などは競売にかけられたり、債権者に引き揚げられることもあります。

3.訴訟手続きも止まる

すでに起こされている訴訟手続きが止まるので、債権者から提起された貸金返還請求訴訟は中断されます。免責が許可されると、その訴訟は終了します。

4.給料差押えも止まる

自己破産手続きの開始決定が出ると、強制執行手続きが停止され、給料差押えも止まります。その後は、給料を全額受け取れるようになります。

法人破産について

資金繰りができず、会社を継続させることが困難になった場合、選択肢のひとつとして法人破産があります。

個人と法人の違い

自己破産をする場合、個人と法人では下記のような違いがあります。

個人 法人
破産しても個人が消滅することはない 破産すると法人は消滅する
免責は裁判所によって判断される 法人自体が消滅するので、免責不要
生活に必要最小限度の財産は処分されない 財産はすべて処分される
財産が少ない場合、同時廃止になること多い ほとんどが管財事件として扱われる
費用は低額である 管財事件となるので費用は高額になる

会社を自己破産させる場合の条件

破産をするためには、さまざまな条件があります。

1.破産手続開始決定の申立て

会社の所在地を管轄する地方裁判所に破産の申立てをし、破産手続きの開始が決定されます。

2.予納金の納付

裁判所に対し、予納金を支払います。内訳は、破産手続きの手数料、官報公告費、郵便切手、引継予納金です。

3.破産手続開始原因があること

破産手続開始の原因とは、負債が資産を超過している債務超過のことをいいます。

4.破産障害事由がないこと

予納金を納付しなかったり、破産手続きを濫用した場合には、破産障害事由があるため、破産手続きの開始は認められません。

会社を自己破産させるメリット・デメリット

会社を自己破産させたいと考えたら、まずはメリットとデメリットをきちんと確認しておきましょう。

メリット

1.負債を一律に処理することができる

自己破産は裁判所の手続きなので、債権者の同意は必要なく、すべての負債を一律に強制的に処理できる点が最大のメリットです。
会社が抱えている負債は、会社が保有する不動産などの資産を処分して得た金銭により、返済が実行されます。法人は破産手続きにより消滅するので、残った債務も消滅することになります。
また、従業員の給料などが未払いの場合、他の負債よりも優先的に配当を受けることができます。

2.再スタートするための環境を整えることができる

自己破産を弁護士に依頼することで、債権者からの取り立てなども、代理人として対応します。
それによって、従業員や取引先のケアをはじめ、再スタートするための準備も整えることができます。

デメリット

1.会社が消滅し、会社名義の資産を失う

最大のデメリットは、大切な会社を失うことです。さらに、会社名義のすべての財産は、債権者への配当に充てるために処分されます。
中小企業の場合には、会社資産と経営者の資産をはっきり分けられないケースも多いため、会社の自己破産が経営者個人の財産にも大きな影響を与えます。

2.従業員や取引先に迷惑をかける

自己破産した場合、従業員も解雇となるため、従業員の生活に重大な影響を与えることになります。
取引先にも迷惑をかけ、取引依存度が高い場合は連鎖倒産してしまうこともあります。

3.経営者も自己破産しなければならないリスクが生じる

中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者が個人保証を行うケースは少なくありません。
しかし、会社が自己破産しても、個人保証は免除されません。そのため、経営者自身も自己破産手続きをしなければならず、個人資産も債権者への配当のために処分されてしまいます。

まとめ

自己破産をすることで借金をゼロにできますが、自己破産によるデメリットを不安に感じて、なかなか踏み切れない方も多いと思います。しかし、ここで解説してきたように、自己破産をしても、今までとあまり変わらない生活を送ることは可能です。

自己破産手続きは個人でもできますが、万が一、失敗してしまうと、免責が得られない可能性があります。
手続きに手間取っている間に、借金問題をさらに悪化させてしまうケースも少なくありません。
法律のプロである弁護士に依頼することで、スムーズに手続きをすることができます。
自己破産は「人生の終わり」ではなく、「人生を再スタート」するための手段です。
借金問題でお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。