Column

事故に遭った患者さん側は、何を求めているのか?

2019年3月8日
事後対応のポイント

事後説明義務について

1 例えば、予期せぬ合併症が生じてしまったようだ、というような、不幸にして患者さんに『医療事故』が発生してしまったとき、ご本人やご家族(ときとしてご遺族)は、どんな気持ちでどんなことを望まれるのでしょうか。
よく論及される内容ですが、私の仕事上の経験上からも、さらには一患者としての個人的な体験からも、以下にまとめられるように思います。
先に一言、以下は、発生した事故そのものの原因について医師側病院側に『法的過失』があるかないかにかかわらず、いわばどんなケースについてもあてはまる、とお考えください。
また、患者さん側のそうした要請に応えることは、それ自体、広い意味での法的『(事後の)説明義務』に含まれます。

(1) 何が起こったのか、解りやすく詳しく説明してほしい。 
(←『5W1H』の発想からの、丁寧な説明が大切です。)
(2) もしミスがあったのなら、きちんと認めて謝罪してほしい。
(←『曖昧なまま時間ばかり経過した』は最悪です。)
(3) 同じことがまた別の患者さんに起きないよう、再発防止策を明らかにしてほしい。
(←病院全体トータルでの、素早い意思統一と対応が、必要重要になります。)

医療ミス・過失への説明

2 上記のうち、特に(2)『発生してしまった結果について医療側に『過失』があるか否か』、については、よほど一目瞭然的なひどいケースは別として、通常は、医学的な検証そのものに相応の検討のための時間が必要であり、さらに、いずれ稿を改めて述べますがそもそも『過失』とは何か、医療上の過失と法的過失はどう違うのか、最終的には裁判所による法的判断に任せる他ないのではないか、等々の問題があるため、事故発生直後の段階では、すぐに上記(2)について病院側としての結論を出すのは無理だ、というケースがむしろ多いかとは思います。

そうした場合には、「医療ミス・過失があったかどうかについては、今すぐには結論が出せないので,しばらく検証検討するお時間をください。あらためてお伝えいたします。」とお断りした上で、その余の上記(1)と(3)については、出来る限り迅速に丁寧に、誠意を持って説明されれば、患者さん側としては、その場では(納得まではされないまでも)かなり、お気持ちを沈めることができるでしょうし、双方にとって無用の怒りや不信不満がつのる、といった事態を、かなり避けられるのではないでしょうか。

医療機関での対応について

3 このような、事故発生から時間的にほどない段階で、現実上出来うる範囲で、可能な限りでの、迅速かつ誠実な対応がなされておれば、後々の、あちらもこちらも関係者みんなが辛く苦しく重くストレスフルな、泥沼のような裁判沙汰などに発展しなくて済んだろうにと、振り返って思わせられるけケースは、残念ながら、医療現場ではまだまだ少なくないように思います。もちろん、きちんとそうした出来る限りの迅速かつ充分な事後対応をしたのに結局訴訟になってしまった、というケースも、残念ですがあり得ますが。

『事後対応』について、病院側関係者のそれぞれのお立場で、より具体的に、どのようなことに気をつけて臨むべきなのか、それは、当該医療機関の性質や規模等々により、出来ること出来ないこと、様々いろいろあるでしょうが、医療安全の重要な一部分だとして、今後もっと一層の工夫の余地があるのではないでしょうか。ご検討頂ければ幸いに存じます。

まとめ

4 今稿のポイントは、『医療事故』発生後の早い段階で、後々のお互いにとってできるだけ不幸でない方向に進んで行けるためには、医師側病院側として具体的に何を意識してどのように行動すればいいだろうか、という視点からの提言でした。ありがとうございました。