01.一人親方は「労働者」か「個人事業主」か?偽装請負のリスク

建設現場において、一人親方(個人事業主)との請負契約は一般的です。しかし、契約書の名称が「請負契約」であっても、実態が「労働者(雇用)」に近いと判断された場合、いわゆる 「偽装請負」 として法的責任を問われるリスクがあります。

1-1. 「偽装請負」と判断されるとどうなるか

もし、元請けとして仕事を依頼している一人親方が、法的に「労働者」であると認定された場合、会社は以下のような甚大なペナルティを負うことになります。

残業代の遡及支払い: 過去に遡って、割増賃金を含む残業代を支払う義務が発生します。
社会保険料・労働保険料の追徴: 雇用保険や厚生年金などの未納分を徴収されます。
労災事故時の責任: 本来、請負であれば一人親方自身の責任となる事故が、会社の「労災事故」として扱われ、多額の損害賠償請求を受ける可能性があります。
消費税の追徴課税: 外注費として仕入税額控除していたものが給与とみなされ、消費税の修正申告が必要になります。

1-2. 労働者性を判断する「5つの基準」

裁判所や労働基準監督署は、契約書のタイトルではなく「実態」を見て判断します。以下の5つの要素が当てはまる場合、リスクは極めて高いと言えます。

指揮監督下の労働か: 仕事の依頼に対し、諾否(断る権利)の自由があるか。具体的な指揮命令を受けていないか。
拘束性の有無: 勤務場所や勤務時間が管理・指定されているか。
代替性の有無: その人が病気の際、他人が代わりに行うことが認められているか。
報酬の性格: 成果物に対する報酬か、時間給(日当)的な支払いか。
機械・器具の負担: 業務に必要な高額な機械や車両を、会社が負担しているか、本人が持ち込んでいるか。

02.建設業特有の「残業代トラブル」と勤怠管理の壁

「現場への移動時間は労働時間に含まれるのか?」「日報だけで管理できているつもりだった」 こうした認識の甘さが、退職した従業員からの「未払い残業代請求」を招くケースが急増しています。

2-1. 直行直帰と「移動時間」の考え方

原則として、自宅から現場への移動時間は「通勤時間」ですが、以下のようなケースでは 「労働時間」 とみなされる可能性が高くなります。

● 一度資材置き場に集合し、上司の指示で社用車に乗り合わせて現場へ向かう場合
● 移動中に資材の搬入出や、業務連絡を行うことが義務付けられている場合
● 会社が運転を命じ、他者を同乗させて移動する場合

2-2. 2024年問題に対応する勤怠管理システム

残業代トラブルを防ぐためには、客観的な記録を残すことが重要です。

GPS打刻アプリの導入: スマートフォンを活用し、現場到着・退出時刻を正確に記録する。
変形労働時間制の活用: 1年単位の変形労働時間制を導入し、就業規則を整備する。
固定残業代制度の見直し: 基本給と固定残業代を明確に区分し、超過分を支払う仕組みにする。

04.労災事故発生時の「使用者責任」と「安全配慮義務」

近年、労災保険の給付とは別に、会社に対して民事上の損害賠償請求(安全配慮義務違反)を起こされるケースが増えています。

4-1. 下請け業者の事故でも元請けが責任を負う?

元請け企業は下請け企業の労働者に対しても統括管理義務を負っており、事故が発生した場合には数千万円〜億単位の賠償責任を負う可能性があります。

4-2. 会社を守るための予防法務

会社を守るためには、以下の対策が必須です。

安全衛生管理体制の記録化: KY(危険予知)活動や安全大会の実施記録を確実に残す。
使用者賠償責任保険への加入: 労災保険の上乗せ保険に加入し、賠償リスクに備える。
示談交渉の専門家介入: 事故発生直後から弁護士が介入し、適切な示談交渉を行う。

05.建設業の労務問題は弁護士法人松本・永野法律事務所へ

①福岡・九州最大級の実績と建設業への専門性

当事務所は創業60年以上、200社を超える顧問先を抱える九州最大級の法律事務所です。多くの建設会社様のサポート実績があり、現場の実態に即した解決策をご提案いたします。

②顧問弁護士としてのサポート体制

契約書・就業規則のチェック、迅速な日常相談、トラブル時の優先対応に加え、福利厚生として従業員の方の私生活上の相談にも対応可能です。

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