雑費・交通費

入院雑費

入院雑費とは、被害者が交通事故による受傷により、入院を余儀なくされた場合に、入院中の日用雑貨(寝具、衣類等)、通信費(電話代、切手代等)、文化費(新聞代、テレビ代等)等、入院によって生じる諸々の費用をいいます。

これらの費用は個別に立証をすることも可能ですが、煩雑であり、ときに訴訟遅延の原因になることから、実務上は、通常生じると考えられる費用を想定し、定額化されています。

そのため、訴訟においては、特に個別的な立証をせずとも、入院一日につき1500円の入院雑費が認められる運用がなされています。

交通費

症状などによりタクシー利用が相当とされる場合以外は電車、バスの料金。自家用車を利用した場合は実費相当額。なお、看護のための近親者の交通費も被害者本人の損害として認められます。

将来の入院雑費

交通事故の被害者に後遺障害が残り、将来改めて手術をする必要性が生じたり、いわゆる植物状態となり生涯入院生活を余儀なくされたりするという場合があります。

裁判例

裁判例の大半は、将来の支出の必要性、確実性が認められる場合に、入院雑費として日額1500円を認めています(大阪地判平12・7・24交民33・4・1213、広島地三次支判平21・5・1自保ジャーナル1802・9等)。

なお、明確に、入院雑費として認定されていない場合も、将来の介護費用、介護雑費の中に含めて認定されていると考えられる裁判例も多く存在します。

入院雑費の支払の対象期間

いわゆる植物状態となった人の平均余命が健常者に比べて著しく短いとの医学的見解との関係で、入院雑費についていかなる期間認められるべきか問題となります。

この点については、健常者の平均余命よりも短い期間に制限して認める裁判例もありますが、多くの裁判例は、平均余命の期間の入院雑費を認めています(大阪地判平13・10・11交民34・5・1372、名古屋地判平17・8・26交民38・4・1147等)。

支払方法

引き続き入院の必要性のある場合は、症状固定時を基準として余命までの期間の中間利息を控除して算定します。将来手術が必要でその時に入院雑費を要する蓋然性が認められる場合は、当該手術で一般的に必要とされる期間に限り入院雑費を認めるのが妥当でしょう。

なお、植物状態となった被害者の平均余命が健常者に比べて著しく短いとの医学的見解を考慮し、将来の入院雑費の支払方法について一時金払とせず、定期金賠償の方法をとる裁判例も存在します(前掲広島地三次支判)。

この点は、将来の介護費用の支払方法の場面でも同様の議論がなされているところですが、例えば被害者が年少者であり、平均余命を前提に算定したのでは認定額が高額となるような事例では、定期金賠償とする方に具体的妥当性があると思われます。

通院にタクシーを使った場合の通院交通費

通院のための交通費は、原則として実費を損害として認めるのが実務上の取扱いです。

ただし、交通費として支出すれば何でも実費として賠償の対象になるわけではなく、被害者の受傷の程度、生活環境等に鑑み、当該交通機関を利用する必要性、相当性があるかの判断が必要です。

そのため、受傷の程度が軽微であり、自宅と医療機関との行き来に適当な公共交通機関があるにも拘わらず、タクシーを使用したというような場合は、タクシー料金ではなく、公共交通機関を使用した場合の実費が、通院交通費として認められることになります。

実務上は、原則として公共交通機関を使用した場合の実費を認定し、被害者の受傷の程度、生活環境等に鑑み、タクシーを利用する必要性、相当性がある場合に限り、タクシー代相当額を通院費用として認めるという運用がなされています。

通院にタクシーを使った場合にタクシー代金相当額を通院交通費として認定した事例としては、「公共交通機関を利用しようとすれば、原告の自宅から一時間かけて徒歩で近鉄耳成駅まで出なければならないなど困難で、タクシー利用は止むを得なかったと認められる。」として、これを認めた事例があります(大阪地判平7・3・22交民28・2・458)。この事例は、被害者の居住環境を理由に、公共交通機関ではなくタクシーを利用することの必要性、相当性を肯定した事例といえます。