1.自筆証書遺言作成上の注意について

(1)遺言者が自ら(代筆は不可)、紙に遺言内容を全文書くこと。

パソコンやタイプライターは使用できない。万年筆やボールペン等を用いること。


(2)遺言者が自ら(代筆は不可)、日付(年月日を正確に書くこと。「吉日」は不可)・氏名を書いて、署名の下に押印すること。


(3)印鑑は実印でなくても良いが、実印が好ましい。


(4)誤りを訂正する場合には、訂正した箇所に押印をし、さらに、どこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名すること。


(5)財産の記載漏れがないようにすること。


(6)1つの用紙には遺言者1人分を書くこと。


(7)推定相続人や受遺者が遺言者より先に死亡した場合に備えて予備的遺言を書くと良い。


(8)作成後には、遺言書の存在を信頼できる人(相続人、受遺者、遺言執行者など)に知らせておくこと。


(9)封筒に入れる。封印はしてもしなくても良い。


(10)いつでも、新しく遺言を書き直すことができる。

2.遺言書の訂正の仕方について

初めからすべてを新しく書き直すのが無難ですが、訂正する場合の仕方は以下のとおりです。

①加除変更箇所にしるしをつける。

加入なら加入の記号を、削除・訂正なら原文が読めるように訂正箇所を二重線で消す。

②加除変更箇所に正しい文字を記入する。

縦書きの場合は脇に、横書きの場合は上部に記入する。

③加除変更箇所に押印する。(署名押印した印鑑)

※印は署名した場所には押さずに、加除変更した場所に押すだけでよい。

④加除変更箇所の欄外に「本行○字加入、○字削除」のように付記する。

または遺言書の末尾に「○行目の×××を△△△に訂正」と付記してもよい。

⑤付記した箇所に署名する。

3.自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら、遺言の内容の全文を書き、かつ、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成する遺言です(すべてを自書しないとだめで、パソコンやタイプライターによるものは無効です)。自筆証書遺言は、自分で書けばよいので、費用もかからず、いつでも書けるというメリットがあります。
 
デメリットとしては、内容が簡単な場合はともかく、そうでない場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまう場合もあります。しかも、誤りを訂正した場合には、訂正した箇所に押印を、、さらに、どこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名しなければならないなど方式が厳格なので、方式不備で無効になってしまう危険もつきまといます。
 
また、自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が、必ず、家庭裁判所にこれを持参し、相続人全員に呼出状を発送した上、その遺言書を検認するための検認手続を経なければなりません。さらに、自筆証書遺言は、これを発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどには、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険がないとはいえません。
 
また、自筆証書遺言は全文自書しないといけないので、当然のことながら、病気等で手が不自由になり、字が書けなくなった方は、利用することができません。
 
上記のような自筆証書遺言のもつ様々なデメリットを補う遺言の方式として、公正証書遺言があります。