成年後見人の職務と義務

1 概要
 高齢化が進む現代社会においては,認知症等の精神上の障害が原因で判断能力が低下して財産の管理が不十分となることが少なくありません。判断能力が低下し財産の管理が不十分だと,オレオレ詐欺や悪徳商法等の思わぬ犯罪の被害に遭ったり,相続問題でもめる原因となったりすることがあります。知的障害や精神障害により判断能力が十分でない場合も同様です。
 後見制度は,判断能力の低下した方の財産を保護するための制度です。成年後見人とは,判断能力が不十分な方を保護するため,判断能力が不十分な方に変わり財産の管理等を行う権限を与えられた人のことです。
なお,後見制度は,被成年後見人の保護を図りつつ,自己決定権の尊重,残存能力の活用, ノーマライゼーション(社会の中で他の人々と同じように生活し活動することが社会の本来あるべき姿であるという考え方)の理念をその趣旨としますので,日常生活に必要な範囲の行為は自由に行うことができます。
2 成年後見人の職務
(1) 申立て,選任等
申立て先の裁判所は,本人の住所地(基本的には,住民票上の住所が基準となります。)を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法117条1項)。
申立ての時に成年後見人の候補者を指定することができますが,家庭裁判所は,申立人等から推薦された候補者にとらわれず,主たる後見事務の内容等様々な事情を考慮して,本人の身上監護,財産管理を適正に行ってくれる人を成年後見人として選任します。 
成年後見人には,本人の親族がなる場合もあれば,弁護士,司法書士,社会福祉士などの専門家を選ぶ場合もあり,申立人の希望する人が選任されるとは限られません。
(2) 成年後見人の職務内容
成年後見人の職務内容は,民法858条に規定されています。
民法858条には,「成年後見人は,成年被成年後見人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては,被成年後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」と規定されており,生活・療養看護(身上監護)と財産管理が主たる後見事務となります。
(ア)  身上監護 
本人の介護契約,施設入所契約,医療契約等についての代理行為,本人の収入や財産を把握して,本人の生活のために必要な費用(生活費,医療費,税金等)を本人の財産から計画的に支出するため収支の予定を組み立て,中長期的な療養看護ができるように計画します。
(イ)  財産管理
 本人の財産に関する法律行為についての代理行為,本人の預金通帳などを管理・保管,本人の財産からの支出についての領収書を管理して使途を明確にするなど,本人の財産を適切に維持管理します。
3 成年後見人の義務
(1) 一般的義務
成年後見人は,職務を遂行するうえで,善良なる管理者の注意義務をもって行うことが義務づけられています(民法869条,同644条)。さらに,善管注意義務の具体的内容として,事務を行うにあたり,成年被成年後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないとされています(同858条)。
(2) 個別的義務
成年後見人は選任後遅滞なく本人の財産を調査して財産目録を作成しなければなりません。また,本人の生活,教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年支出すべき金額を予定し,家庭裁判所又は監督人からの求めがあれば,財産管理状況を報告しなければなりません。