審判の申立手続きについて

1 総論
  成年後見制度を利用するにあたっては,家庭裁判所に対し,成年後見等開始の審判の申立てをすることになります。
  申立書の書式に従って書類を記入し,添付資料を添えて申立てをすることになりますので,弁護士等に依頼せず自分で申立てをすることも可能ですが,添付資料の内容等によっては,成年後見等開始の審判がされにくくなったり,余分な費用がかかったりすることもあります。
そこで,本項では,申立手続きの方法と注意点について説明していきます。
2 申立手続きの概要と注意点
(1)  申立権者
成年後見制度の申立権者は法律で定められており,配偶者,4親等内の親族に加え,公益の代表者として検察官,市町村の長に申立権が認められています。
本人が申し立てることもできますが,本人の判断能力に問題があるとして申立てを行うわけですので,場合によっては,本人にはそもそも申立能力がないと判断されて受け付けてもらえない可能性もあります。
(2)  管轄
 後見等開始の審判を申し立てる裁判所は,成年被後見人等の住所地を管轄する裁判所です。
 住所地とは生活の本拠のことを指しますので,住民票上の住所であることが多いと思いますが,長期にわたって施設に入所している場合など,生活の本拠が住民票上の住所と異なるときは,そこを住所地として認められる場合もあります。
 また,「自庁処理」といって,裁判所の判断で本来の管轄とは異なる裁判所が審判手続きを行うこともあります。
したがって,住民票上の住所とは異なっても,どこの裁判所に申し立てるのがもっとも適しているかをよく検討してみるとよいでしょう。
(3)  申立費用
後見等申立てには,申立手数料,後見登記費用,送達用郵便切手,鑑定費用などの費用が必要です。
これらの費用は,成年被後見人等となる本人ではなく,申立人が負担するのが原則です。
もっとも,事情によって裁判所は本人に負担を命ずることができるとされていますので,本人負担を求めるのが相当であると思われる事情がある場合には,申立書中に本人負担とする旨を申し立てれば,申立て費用が本人の負担となる可能性があります。
(4)  診断書
成年後見等開始の審判を申し立てる場合,本人の判断能力を診察した医師による診断書の提出が求められます。
実は,診断書の提出は法律上の要件ではありませんので,たとえば本人が医師の診断を受けるのを拒んで診断書がとれないような場合でも,診断書以外で本人の判断能力を示す資料(関係者の陳述書や,施設職員からの聴き取り報告書などが考えられます)を添えて申立てをしてみる価値はあります。
ただし,診断書を添付しなければなかなか申立てを受け付けてくれないような裁判所もありますので,可能な限り診断書の取得を試みるのがよいでしょう。
なお,診断書を作成する医師はとくに限定されているわけではなく,主治医である必要も精神科専門医である必要もありませんが,本人に普段から関わっており,本人の状況を長期的に観察してきた主治医であることが望ましいでしょう。
(5)  鑑定
 後見や保佐開始の審判をする場合には,家庭裁判所は,成年被後見人等となる本人の精神の状況を鑑定しなければならないとされています。
 もっとも,明らかにその必要がないと認めるときは,鑑定をすることなく後見等開始の審判をすることができます。明らかにその必要がない場合とは,申立て段階の本人の状況や診断書の記載内容などから,鑑定をするまでもなく後見等の要件に該当することが明らかな場合などです。
 鑑定費用は,一律に決まっているわけではありませんが5万円から10万円程度かかりますので,診断書を作成してもらう際には,できるだけ鑑定をせずに済むよう,診断内容を省略せずしっかりと記載しもらいましょう。
 ただし,成年後見制度の利用に反対する親族がいる場合には,診断書の内容にかかわらず鑑定が実施される可能性が高くなります。
(6)  成年後見人等の候補者
 成年後見人等を誰にするかについては,申立人が,申立時に希望者を指定することができます。
 もっとも,最終的には家庭裁判所がもっともふさわしい人を成年後見人等として決定しますので,必ずしも申立人の希望どおりとはなりません。
 とくに,親族間で対立があるようなケースでは,申立人が希望した候補者とは異なる第三者専門家が選任されることが多いです。
3 まとめ
  以上のとおり,申立てをしたとしても,必ずしも後見等開始の審判がなされるわけではありませんし,希望する後見人等が選任されるわけでもありませんが,親族間で異論がない場合には,審判手続きがスムーズに進みやすくなりますし,鑑定が不要になれば手続きにかかる費用も少なくて済みます。
  裁判所を通じた制度ではありますが,自身での財産管理等が難しい本人の財産管理等をどのように行っていくかは,本人とご家族・親族の問題でもあります。
まずは親族間で対立が生じないようにじっくり話し合うことが重要といえるでしょう