住宅ローン特則の手続き

1 総論
  「住宅ローン特則を利用するための要件」の項で,住宅ローン特則の概要と住宅ローン特則を利用するための要件を説明しました。
  そこで,本項では,住宅ローン特則を利用するための手続きや住宅ローン特則を利用する場合の返済計画の内容について説明していきます。
2 住宅ローン特則を利用するための手続き
  住宅を残したまま個人再生を行おうとする場合,住宅ローン等の住宅資金貸付債権については従来どおり又はリスケジュールをした上で支払うことになります。
  そこで,再生債務者は,再生計画案の中に住宅ローンの支払計画を定めた条項(住宅資金特別条項)を設けた上で,再生計画案を提出する必要があります。
  そして,住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する場合は,あらかじめ,住宅資金貸付債権者と協議を行うこととされています。
  したがって,住宅ローン特則を利用して個人再生を行おうとする再生債務者は,あらかじめ住宅資金貸付債権者との協議を経た再生計画案を裁判所に提出することになります。
  「住宅ローン特則(利用のための要件)」の項で述べたとおり,住宅ローン特則の利用の要件として,保証会社の代位弁済から6か月以内の申立てである必要があることも考えると,その前に住宅資金貸付債権者と協議を得て再生計画案を作成するためには,迅速に再生計画案作成のための準備をする必要があるといえます。
3 住宅資金特別条項の内容
  住宅資金特別条項の内容としては,①期限の利益回復型,②リスケジュール型,③元本猶予期間併用型,④合意型の4種類が規定されています。
  以下,それぞれの内容について説明します。
(1)  期限の利益回復型
 期限の利益回復型は,住宅資金特別条項の原則型です。契約上の債務に加えてすでに遅滞に陥っている部分の損害金を再生計画に定める計画期間内に弁済することにより,期限の利益喪失の効果を失わせます。
    具体的には,将来の債務の支払いについては,当初の住宅ローンの内容に従って支払い,すでに遅延している元本・利息・損害金は再生計画で定める5年を最長とする弁済期間内に支払います。
    なお,すでに期限の利益を喪失している場合には上記のような返済計画を定めることとなりますが,まだ期限の利益を喪失していない場合,住宅ローンの内容そのままの返済計画をたてることも多く,この場合には,その後の支払いを怠れば期限の利益を喪失するおそれがあり,かつ住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあることを要件として,再生手続が開始した後であっても裁判所の許可を得て弁済を続けることができます。
(2)  リスケジュール型
 リスケジュール型は,利息・損害金を含めて全額弁済することを前提に,支払期限を最大10年間,債務者が70歳を超えない範囲内で延長し,各回の返済額を減らす返済方法です。
 もっとも,70歳を超えない範囲内で期間を延長する方法なので,当初住宅ローンの内容が70歳を超えて完済する内容となっている場合には,この方法による住宅資金特別条項を定めることはできないことになります。
 なお,先に述べたとおり,(1)の期限の利益回復型が住宅資金特別条項の原則型なので,期限の利益回復型の住宅資金特別条項では再生計画の認可を得られる見込みがない場合にのみ,リスケジュール型が認められます。
(3)  元本猶予期間併用型
 元本猶予期間併用型は,リスケジュール型の内容に加え,再生計画期間内は元本の一部猶予を可能とし,一般再生債権の弁済と調和した計画を可能とするものです。
 一般弁済期間の範囲内で定める期間(元本猶予期間)内は,住宅ローンの元本の一部及び住宅ローンの元本に対する元本猶予期間内の住宅約定利息のみを支払うものとすることができます。
 もっとも,リスケジュール型と同様,当初住宅ローンの内容が70歳を超えて完済する内容となっている場合には,この方法による住宅資金特別条項を定めることはできません。
 また,期限の利益回復型でもリスケジュール型でも再生計画の認可を得られる見込みがない場合にのみ,元本猶予期間併用型が認められます。
(4)  合意型
 上記の(1)から(3)以外にも,住宅資金貸付債権者の同意がある場合には,より柔軟な返済計画を作ることも可能です。
 たとえば,当初の住宅ローンの最終弁済期が70歳を超えていてもさらに期間を延長したり,一般弁済期間における元本全額の弁済を猶予したりする返済計画を作成することもできます。
4 まとめ
  以上のとおり,3の(1)から(3)の内容であれば,住宅資金貸付債権者の同意なしに住宅ローン特則を利用することも可能ではありますが,あらかじめ住宅資金貸付債権者と協議をした上で再生計画案を提出しなければなりませんし,住宅資金貸付債権者の同意があれば自由に返済計画をたてることが可能であることからすれば,住宅ローン特則を利用する上ではいずれにせよ住宅資金貸付債権者の理解を得ることが重要といえます。