松本永野法律事務所
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1.被害者救済を図る「製造物責任法(PL法)」

製造物の欠陥が原因で生命や身体・財産に損害が生じたことを証明した場合、その製造物の製造業者等が損害賠償責任を負うこととしているのが「製造物責任法(PL法)」です。
 
PL法が施行されるまでは、製品に欠陥があったこと、およびその欠陥が原因で損害が生じたことに加え、「過失」を立証する必要がありました。
 
過失を証明することは被害者にとって大変困難であることから、PL法では被害者救済を図るため、過失を立証しなくても、仮に製造業者に過失がなくても損害賠償できる「無過失責任」となっています。

(1)「売主の瑕疵担保責任」よりも賠償範囲が広い

ある製品を買った場合、その製品に欠陥があり損害が生じれば、民法の「売主の瑕疵担保責任」で売主へ損害賠償を求めることができます。
 
しかし、その場合の賠償範囲は代金程度にとどまるなどごく限られ、売主が零細な小売業者のとき支払能力のない場合もあり、人命や身体等に生じた被害を救済するには至らないケースがほとんどです。
 
もっともPL法ができたからといって、民法上の責任がなくなる訳ではありませんので、被害者となった場合どのような責任追求ができるかを検討する必要があります。

2.製造物の範囲

(1)PL法の対象となる「製造物」とは、

「製造または加工された動産」と定義されています。
 
「製造」とは、原材料や部品に手を加え、新たな物品を作ることであり、「加工」はその物品の本質を維持しつつ、価値や機能を追加ないし強化するために手を加えることです。
 
製造または加工されたものといえるかどうかの判断は、その物につき素材の選択の段階から製品として出荷されるまでの検査、保存、表示などを含めた一連の過程を考慮して、危険性を除去する可能性などを社会通念に照らして総合的に判断されるべきとされています。


 

(2)「引き渡した製造物」であることが前提

PL法で製造業者に責任の発生する製造物は、製造業者等が引き渡したものに限ります。自己の意思に基づいて占有を移転していることが前提なので、出荷前の工場から盗まれた製造物に欠陥があったとしても、PL法の責任は負いません。

3.欠陥について

(1)総合的に判断される「欠陥」

「欠陥」とは、通常有するべき安全性を欠いていることです。
 
安全性を欠いているかどうかは、「製造物の特性や、通常予見される使用形態、その製造業者等が製造物を引き渡した時期、その他の製造物に係る事情」を考慮して判断されます。

(2)欠陥の類型

「欠陥」の種類は、大きく3つに分けられます。
 
(ア)製造上の欠陥
 
設計や予定された使用と異なって製造された場合
 
(イ)設計上の欠陥
 
製品の設計自体が安全性を欠いている場合
 
(ウ)指示・警告上の欠陥
 
製品に付属して提供されるべき適切な指示・警告を欠いている場合

(3)「国の安全基準」と「欠陥」の関係

製造業者側は、しばしば「国の製造承認を受けているから販売しているのであり欠陥はない」との主張をします。
 
しかしながら、国の安全規制は、最低限度の基準を定めたものに過ぎず、安全規制をクリアしていても欠陥がないという主張は認められていません(最判昭53年7月25日)。

4.製造物責任を負う主体者とは

PL法で責任を負うのは、「製造業者、加工業者、輸入業者である」とされています。それには表示上の製造、加工、輸入業者も含まれます。
 
例えば、「製造元」や「輸入者」、「ブランド名」など製品の外観上に自己の名称を表示している者は、PL法の責任主体となる「製造業者等」に当たります。

5.PL法が適用されるケースとは

PL法は、「製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合」でなければ適用されません。
 
例えば、購入した食品が腐っていただけの場合には適用されず、その食品を食べて食中毒を起こした場合には適用が生じます。

6.製造物責任が免責される事由

製造物責任は、「製品を引き渡した時点における科学技術の水準」では発見できなかった欠陥が後に判明した場合、その欠陥により被害が生じても製造業者等は免責されます。これは、開発意欲を阻害しないという配慮から規定されたものです。