松本永野法律事務所
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1. その他の法的制度を利用した債権回収とは

これまで、債権回収の方法として、交渉による債権回収、担保による債権回収、強制執行による債権回収についてご説明しました。
上記3つの方法は、大きく分けて、任意に支払ってもらえるようにする方法と、話し合いで解決できない場合の方法です。

本項では、いわばその中間に位置づけられ、その他に債権回収において利用されている法制度についてご紹介します。

(1)「支払督促」

債務者から異議が出ない場合には、訴訟を経ることなく債務名義を獲得できます。

(2)「民事調停」

当事者だけでは話し合いでうまく解決できない場合に、裁判所が話し合いの場を設定します。

(3)「訴え提起前の和解(即決和解)」

当事者間で実質的に合意ができている場合に、和解調書を作成して債務名義を作成します。

以上、状況に応じて様々な制度があります。
基本的に、訴訟より簡易迅速かつ低コストで、実効性のある紛争解決を図る制度設計がされているのが特徴です。

2. 制度の種類について

(1) 支払督促とは

(ア)支払督促は、簡易裁判所を通じて、債務者に支払いを求める手続きです。
申立人側の事情のみに基づいて、書記官から債務者へ支払いを命じるもので、訴訟のように裁判所に出廷したり、証拠を提出したりすることがない点で、簡易な手続きです。

また、支払督促を送っても債務者が支払いをせず、債務者からの異議も出ない場合は、さらに仮執行宣言を申し立てることにより、強制執行まですることができます。
訴訟を経ず、相手方の意見を聞かないままに債務名義を獲得できるという点で、迅速な手続きです。

(イ)ただし、債務者は、支払督促に対し異議を申し立てることができ、その場合には、通常訴訟に移行することになります。
そのため、債務者と債権の存在そのものについて、紛争が生じているような場合には、当初から訴訟を選択した方が、結果的に迅速な解決につながるといえます。

また、支払督促は債務者側の意見を聞かずに、一方的に発付するものです。
仮に、交渉が可能な債務者であっても、いきなり支払い督促を選択したがために態度が硬化して、結果的に話し合いの機会を失ってしまうというおそれも考えられます。

(2) 民事調停とは

(ア)民事調停は、簡易裁判所において、話し合いをする手続きです。
裁判所の調停委員が当事者双方の話を聞き、妥協点や具体的な解決策について模索し、歩み寄りを促したりして、話し合いによる解決を目指すことになります。
話し合いがまとまり、調停が成立した場合には、調停調書が作成されます。
調停調書は債務名義となるので、仮に調停で合意した内容を債務者が履行しない場合には、強制執行をすることもできます。

(イ)民事調停は、あくまで話し合いなので、当事者双方で合意ができなければ、調停不成立となります。また、調停に出席するかどうかについても、当事者に委ねられており、債務者が裁判所に現れないために調停不成立となる例もあります。
その場合には、訴訟によって争うことになりますので、債務者と話し合いでまとまる余地がない場合には、訴訟等の選択をする方が効率的な場合もあります。

(3) 訴え提起前の和解とは

(ア)訴え提起前の和解(即決和解)は、当事者同士で合意ができている場合に、簡易裁判所が和解調書としてその内容を作成する手続きです。
訴訟を提起した後に、和解によって訴訟を終了する裁判上の和解と異なり、訴訟の提起前に和解することにより、紛争解決を図る制度です。

実際には、当事者がすでに合意している内容を裁判所に和解調書にしてもらい、これを債務名義として、強制執行を可能とすることにメリットがあります。
和解では、当事者がある程度自由に内容を決めることができますので、訴訟を経ずに、とても柔軟な解決を図ることができる制度と言えます。

(イ)訴え提起前の和解は、和解が成立しない場合には、当事者双方の申立てによる訴訟に移行することになり、和解事件としてはそのまま終了してしまいます。
そのため、当事者双方において、ある程度和解の内容が合意されている場合に、債務名義を作成する手段として利用するという手続きになります。

3. まとめ

以上の通り、債権回収のための法制度は、訴訟や強制執行以外にも多様です。
それぞれの手続にはメリットデメリットがあり、債務者との関係や債権債務の内容に応じて選択肢が増えるため、より適切な解決を考えることができます。