松本永野法律事務所
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1. 削除請求とは

インターネット上の掲示板への書き込み、SNSへの投稿、ホームページやブログの記事などにより、人格権である名誉権やプライバシー権等が侵害されている場合、これらの書き込みや記事を削除しなければ、権利侵害は止められません。
削除請求とは、被害を受けた場合に、当該書き込みをした発信者や投稿者、サイト等の管理者、運営者に対して、当該書き込みや投稿を削除するよう請求することを言います。 もっとも、単に書き込みを行った発信者や投稿者には、書き込みを削除・修正する権限がない場合が多く、また、発信者や投稿者が削除できる場合でも、侵害している本人であることから、削除請求に任意に応じる可能性が低いので効果的ではありません。
そこで、ウェブサイトの管理者やウェブサイトが置かれているサーバーの管理者に対して、請求をする必要があります。管理者や運営者にも、侵害情報を流通させている責任があるからです。
削除請求は、ネット上に発信された情報により、自己の名誉等の人格権が侵害されていることに基づく、差止請求権に法的根拠があります。

2. 削除の対象について

(1) 個別サイトの書き込み等の削除とは

個別のサイト(例えば、2ちゃんねるや爆サイなどの掲示板、ホームページやブログなど)に、名誉権やプライバシー権等の権利を侵害している書き込みがされている場合、削除の対象となるのは、権利を侵害している部分に限られます。
例えば、特定の掲示板の○○というスレッドのナンバー○○の○○という内容の書き込み部分や、ホームページやブログの○年○月○日に書き込まれた~の部分、という具合です。 注意が必要なのが、侵害情報が書き込まれているサイトのミラーサイトやまとめサイトが存在し、そのサイトにも侵害情報が載っている可能性があるということです。この場合、元の個別サイトの侵害情報を削除しても、転載された先のサイトに侵害情報が載っている限り、権利侵害は止まりません。
それぞれサイトの運営者・管理者が異なるので、転載しているサイトそれぞれに、削除請求をしなければなりません。そこで、侵害情報と同じ内容の記載がされている別のサイトがないか、把握する必要があるのです。

(2) 検索サイトの検索結果の削除とは

検索サイト、例えば、Googleやyahoo!などは、インターネット利用者なら、誰もが利用したことがあると思います。Googleで検索すると、検索キーワードに関連するページタイトル、アドレスとスニペット(リンク先のページの抜粋や要約などが数行程度書かれている部分)が表示されます。タイトルやスニペット部分が権利を侵害している場合、削除請求の対象となります。
例えば、
・個別サイトの管理者や運営者を調査しても分からない場合
・多数の個別サイトに侵害情報が載っていて、せめて検索サイトだけでも削除したい場合
・個別サイトの侵害情報自体より、多くの人が利用する検索サイトの上位に表示される検索結果を削除したい場合
以上の場合などに、検索サイトに削除請求することが考えられます。

(3) 検索サイトのサジェスト、関連ワードの削除とは

「サジェスト」とは、特定の検索ワードを検索サイトで入力中に、自動的に検索候補が表示される機能のことです。
「関連ワード」とは、検索ワードと関連の深い語句や、検索ワードと組み合わせて検索されるキーワードを、検索候補のリストとして、検索結果のページ上部や下部にリンクで表示される機能のことをいいます。
例えば、自己の企業名を検索して、サジェストや関連ワードの機能により「倒産」や「ブラック企業」などのネガティブなワードが表示されると、嫌な思いをすると思います。また、検索サイトは多くの人が利用するので、情報は拡散され影響力も大きいのです。
Googleは、人格権侵害や事実無根のワード表示に対して、削除申請に対応できるように、下記の申請フォームを用意しています。

自分で削除申請することができますが、削除理由、すなわち自己の権利が侵害されていることを明確に記載していなければ、申請が認められないこともあります。
無料相談などを利用して、弁護士に相談してみるのをおすすめします。

(4) 検索サイトのキャッシュの削除とは

個別サイトの書き込みや記事を削除しても、Googleなどの検索結果から消えないという現象があります。これは、検索サイト自体に保有されているデータベースが、少し古いデータのためです。検索サイトのデータベースが更新するまで、書き込みや記事が削除された個別サイトの新しい情報と古いデータとで、不一致が生じることから起こる現象です。
放っておいても自動的に更新されますが、この不一致を早く解消したい場合には、検索サイトにキャッシュ(保有している古いデータ)の任意削除請求をします。認められれば、検索結果から消えることになります。

3. 削除請求の方法について

(1) オンラインでの削除請求とは

サイト上に、削除依頼フォームが設けられているサイトも多数あります。その場合、記載方法に従って削除依頼を出しましょう。
また、問い合わせフォームや連絡先メールアドレスだけの場合であっても、削除の対象を特定する事項(掲示板やスレッドのナンバー、レス番号等)、権利侵害の事実を記載して、削除依頼をすると対応してもらえる可能性があります。
ここで注意が必要なのが、情報の削除と同時に、発信者を特定するためのアクセスログ情報まで削除されてしまう可能性があることです。後に、発信者を特定して損害賠償請求をしようとしたときに、発信者を特定することができなくなることがないように、削除依頼の際に、発信者情報開示請求を予定していることや、アクセスログ情報の削除をしないよう、併せて記載しておくことが必要です。

(2) 書類送付による削除請求とは

サイトによっては、オンラインでの削除請求ではなく、書面での削除請求しか受け付けない場合もあります。この場合、一般社団法人テレコムサービス協会が、ガイドラインで書式(通称「テレサ書式」と呼ばれています)を公開していますので、これを利用して削除請求することが可能です。添付書類として、身分証明書の写しや委任状(代理人による請求の場合)を要求されることが多いです。

(3) 任意に削除請求に応じない場合とは

個別サイトの管理人・運営者、コンテンツプロバイダ等に削除請求をしても、任意に開示に応じてもらえない場合もあります。任意の削除がされない場合、裁判手続きを利用して削除を求めることになります。
プロバイダ等を相手として、書き込み等の削除を求める裁判上の方法としては、本訴提起もあり得ますが、迅速な被害者救済という観点から、民事保全法の仮処分手続きが利用されることが一般的です。書き込み等の削除の仮処分は、「満足的仮処分」(仮処分の発令により、判決を待たずに判決を得たのと同様の結果が生じる処分)にあたるので、権利救済の実現のため本訴と変わらないからです。

4. まとめ

以上のように、インターネット上の掲示板への書き込みなどにより、名誉やプライバシーが侵害されていても、これを削除しなければ損害は拡大します。
そのため、迅速な法的対応が必要となりますので、まずは専門家に相談してみて下さい。相談者の方にとって、最適な方法をアドバイスしてもらえるはずです。
弁護士法人松本・永野法律事務所では、ネットによる誹謗中傷事件を数多く取り扱っている弁護士による法律相談を、福岡県・長崎県にて実施しています。ぜひお気軽にお電話ください。