Traffic Accident Case

事例43 高次脳機能障害及び同名半盲等の障害(後遺障害等級併合第4級・既存障害7級の加重障害)を残した被害者につき、将来介護費が認められた上、高齢者で既存障害(左不全片麻痺)があったにもかかわらず、主夫として休業損害及び後遺障害逸失利益が認められた事例

  1. 慰謝料・損害賠償

依頼主<60代・男性>

事件の概要

福岡県久留米市在住の60代無職のQさん(男性)は、横断歩道を歩行中、進行してきた普通乗用自動車に衝突され、脳挫傷・外傷性くも膜下出血、てんかん、両側血胸、右頬骨・右肋骨7、8番・左肋骨1、6、7番・第5腰椎右横突起・右恥骨骨折、無顆粒球症、右動眼神経麻痺、同名半盲、歯牙損傷等の傷害を負い、治療を継続しましたが、高次脳機能障害のほか、同名半盲の障害を残しました。

当事務所の活動

Qさんは、既に、自賠責より、脳外傷による高次脳機能障害について「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として後遺障害等級第5級2号(詳しくは、「高次脳機能障害」を参照してください。)、同名半盲について「両眼に半盲症を残すもの」として第9級3号(詳しくは、「眼の障害」を参照してください。)にそれぞれ該当するとされ、以上により、併合4級と認定されました。しかし、本件事故当時、Qさんには、既存障害として左不全片麻痺が存在していたため、同障害は「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として第7級4号に該当するとされ、本件は加重障害として扱われました。

Qさんは、今後どのように手続きを進めればよいのか分からず、当事務所に相談に来られました。当事務所は、上記結果に基づき示談交渉を開始しましたが、金額が折り合わず決裂しました(同時点における加害者側の提示額は約271万円。)。

そのため、当事務所は、適正な賠償を受けるため、福岡地方裁判所久留米支部に訴訟提起しました。

解決と成果

本件訴訟における主な争点は、①付添費、②将来介護費、③休業損害、④後遺障害逸失利益でした。

付添費について、加害者側は、通院に妻が付き添ったことを示す根拠はなく、その事実を認めることはできないとか、原則として介護が必要な別表第一第1級ないし2級の後遺障害等級に該当するものでもない等と主張しましたが、当事務所の主張立証活動により、裁判所は、本件事故から症状固定時まで、Qさんの入院、通院及び自宅付添費を認められました。

将来介護費について、加害者側は、「将来介護費用を個別損害費目として認められる場合は神経機能障害において2級以上の認定がなされた場合に限られる」等と主張しましたが、当事務所の主張立証活動により、裁判所は、Qさんの症状に照らし、職業付添人による随時介護を要すると認めました。

休業損害について、加害者側は、「原告は無職であったことから、休業損害は生じ得ない。」等と主張しましたが、当事務所の立証活動により、裁判所は、Qさんが一定程度家事に従事していたと認め、基礎収入を賃金センサス平成24年女性学歴計65~69歳の285万9600円とし、ここから既存障害7級の労働能力喪失率56%を控除した44%について、本件事故から症状固定時までの期間を休業損害と認めました。

後遺障害逸失利益について、加害者側は、本件事故によるQさんの現在又は将来における収入の減少は認められないとして、これを否定するほか、医学意見書を証拠として、仮に、Qさんに逸失利益が認められるとしても、Qさんの本件事故以前における労働能力喪失率は79%(第5級2号)を下らない等と主張しましたが、当事務所の主張立証活動により、裁判所は、加害者側の労働能力喪失率の主張を退け、本件事故による障害を併合4級(労働能力喪失率92%)とし、これから既存障害7級(労働能力喪失率56%)を控除して、本件事故による労働能力喪失率を36%として、Qさんの逸失利益を認定しました。

また、本件では、本件事故により、Qさんが高次脳機能障害の後遺障害を負い、高次脳機能障害の特性である易刺激性多弁のため、極めて情緒不安定となり、周囲に対し攻撃的となったり、不安を訴え続ける状況となったため、Qさんの妻は、人格が大きく変化したQさんの介助を強いられ、疲弊し、相当な精神的負担を負う状況に置かれたことが考慮され、その慰謝料も認められております。

以上の結果、加害者側が、Qさんらに対し、既払金のほか5000万円を支払うとの内容で和解が成立し、大幅増額を実現することができました。

弁護士の所感

将来介護費は、一般に高額なものとなることから、しばしば訴訟において重要な争点の一つとなります。裁判例においては、後遺障害の内容・程度等によっては、自賠法施行令別表第1の1級及び2級以外の後遺障害等級に該当する場合にも認められ、具体的に必要とされる介護の内容・程度を認定し、それに応じた将来介護費が算定されます。しかし、訴訟においては、具体的な事実関係の立証がないと被害者に有利な心証を得られないことが多いので、特に具体的な立証を行うよう心がけました。

休業損害や後遺障害逸失利益については、既存障害の影響で、証拠上、Qさんに就労の蓋然性は認められませんでしたが、診療機関の診療記録やQさん及びその妻の生活実態に関する陳述書等により、本件事故当時、Qさんが家事労働に従事していたことを立証し、既存障害分を控除されはしましたが、家事従事者と認定されたことは大きかったといえます。

また、加害者側は、医学意見書を根拠に、Qさんの既存障害は7級より重く、5級2号程度であったと主張したことに対し、本件事故当時、Qさんが身の回りのADL自立しており、短時間のデスクワークは可能とされ、家事労働を行っていたことを主張立証することで、これを退け、Qさんにも納得のいく形で解決させることができました。

本件のように、加害者側より、後遺障害等級が1級及び2級以外であるため将来介護費が否定されたり、既存障害の存在や無職であることを理由として、休業損害や後遺障害逸失利益が否定されたとしても、具体的に主張立証することにより適正な認定を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責

弁護士 永野 賢二