Traffic Accident Case

事例35 自賠責で後遺障害等級併合第11級とされた被害者につき、後遺障害等級併合第9級に該当するとされ、獲得金額が保険会社提示額の約9倍に増額した事例

  1. 慰謝料・損害賠償

依頼主<60代・男性>

事件の概要

加害者は大型貨物自動車を運転し、時速約65キロメートルで進行していたところ、タバコを取ろうとして運転席と助手席の間の小物入れに脇見し、進路前方の道路左端で停止していた普通乗用自動車に衝突させて前方に押し出し、その前方を歩行中の福岡県朝倉市在住の60代会社員のIさん(男性)に衝突させたうえ、同車前部を同車の前方に停止していた普通貨物自動車(軽四)後部に衝突させてIさんを狭圧しました。

Iさんは、本件事故後、ドクターヘリで搬送され、開放骨折等が確認されたことなどから、入院治療とされました。そして、Iさんは、左下腿創外固定術、デブリードマン、左足関節内果骨折に対し骨接合術、左脛骨開放骨折に対し骨接合術、骨移動術、右下腿後面、左下腿内側、足関節内側の皮膚欠損創に対して、デブリードマン及び分層植皮術が施行されました。また、左脛骨及び腓骨の骨癒合が不十分(偽関節状態)であることが確認され、左脛骨偽関節手術+左腸骨骨移植+左足関節部Kワイヤー抜釘が施行され、左肩腱板断裂について鏡視下腱板縫合術を受けました。その後も、左肩腱板広範囲再断裂について鏡視下腱板縫合術を受け、右腓骨偽関節が認められるなどしました。

Iさんは、約2年3か月に渡り治療を継続しましたが、左足関節の機能障害、左腓骨の変形障害、下顎部の線状痕、右下肢の癒痕(神経症状を含む)、左下肢の短縮障害、左肩の痛み、左下腿の痛みと左下腿正面から足背までの感覚障害のほか、右腓骨骨折後の変形障害を残しました。

なお、Iさんは、上記治療期間中(本件事故から1年以上経過した後)に自宅にて階段を踏み外し、左大腿骨顆上(顆部)骨折の傷害を負い、左大腿骨関節内骨折観血的手術を受け、その後も治療を継続していました。

当事務所の活動

当事務所は、依頼者の後遺障害診断書等の医証を獲得し、後遺障害等級の申請を自賠責に行い、自賠責より、左脛骨腓骨開放骨折後の左足関節の機能障害について「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として後遺障害等級第12級7号に、左腓骨の変形障害について「長管骨に変形を残すもの」として第12級8号に、下顎部の線状痕について「外貌に醜状を残すもの」として第12級14号に、右下肢の癒痕(神経症状を含む)について別表第二備考6により第12級相当に、左下肢の短縮障害について「1下肢を1センチメートル以上短縮したもの」として第13級8号に、左肩の痛みについて「局部に神経症状を残すもの」として第14級9号に、左下腿の痛みと左下腿正面から足背までの感覚障害について「局部に神経症状を残すもの」として第14級9号にそれぞれ該当するとされ(詳しくは、「上肢・下肢の機能障害」「上肢・下肢の変形障害」「醜状障害」「末梢神経障害」を参照してください。)、以上により、併合第11級と認定されました。

そして、当事務所は、上記結果に基づき示談交渉を開始しましたが、加害者側は、併合第11級認定のうち、逸失利益性のある障害は左足関節機能障害、左下腿神経症状、左肩痛みのため、12級の喪失率が相当である旨の主張を行い、また、本件事故と左大腿骨顆上(顆部)骨折(階段事故)との因果関係を否定した(同時点における加害者側の提示額は約171万円。)ため交渉は決裂し、当事務所は適正な賠償を受けるため、福岡地方裁判所に訴訟提起しました。

解決と成果

本件事案における主な争点は、①本件事故と左大腿骨顆上(顆部)骨折(階段事故)との因果関係、②後遺障害等級、②後遺障害逸失利益でした。 本件事故と左大腿骨顆上(顆部)骨折(階段事故)との因果関係について、加害者側は、階段事故前のIさんの症状(カルテ)や主治医の意見を証拠として因果関係を否定しました。これに対し、当事務所は、裁判例等を用いて、本件事故による傷害が、本件階段事故時に、その影響が無くなるほど回復していたと解することはできず、本件事故がなければ、本件階段事故もなかったという条件関係を肯定することができると主張立証を行いました。これにより、裁判所は、「原告の過失による生活上の事故として相当因果関係を認める」と判断しました(但し、Iさんの行為による寄与度として全体の10%を減額。)。

後遺障害等級について、当事務所は、Iさんの後遺障害については、併合第11級に該当する旨認定されており、認定基準上、13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは重い方の等級を1級繰り上げることとされており、この取扱いに従えば前記の結論となるが、Iさんには13級以上の身体障害が7つ(自賠認定のほかに、左肩腱板断裂後の左肩の痛みとして自賠等級第12級13号、右腓骨骨折後の変形障害として自賠等級第12級8号を追加主張)もあり、身体障害が2つの場合と同じ扱いというのは不合理であり、民事上の損害賠償における後遺障害の有無・程度及び労働能力喪失率の認定に当たっては、当該被害者の後遺障害の個別具体的な内容、その職業、年齢、性別、具体的な稼働状況等を勘案して、実質的に判断すべきとして、後遺障害等級併合第9級を主張しました。これにより、裁判所は後遺障害等級併合第9級と認定しました。

後遺障害逸失利益について、加害者側は、Iさんが症状固定前に復職して減収が生じていないことを理由として、Iさんに逸失利益は生じていないと主張しましたが、当事務所の立証活動により、裁判所は、「現場での仕事が困難になる中、職場の協力や原告本人の努力により、就業継続が可能となっており、現実に減収がないとしても、その影響が認められる」として、本件事故前の収入に基づき、後遺障害逸失利益(労働能力喪失率35%、労働能力喪失期間平均余命の2分の1)を認定しました。

以上より、加害者側が、Iさんに対し、既払金のほか1500万円を支払うとの内容で和解が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。

弁護士の所感

自賠責保険における後遺障害の等級認定については、任意保険会社等が一括払(自賠責保険を含めて保険金を支払う制度)時に行う事前認定や、被害者が行う自賠法16条請求(被害者請求)において、大量の案件を判断することから、診断書やレントゲン画像等の資料が一定制限されたものであったとしても、その中で等級認定が行われます。

一方、訴訟では損害賠償額を算定するに当たり、必要な証拠としての診断書、カルテ、画像検査資料等の詳細資料をもって裁判所が逸失利益や慰謝料等の損害を認定します。そして、自賠責保険における等級認定は、自賠責保険金額を算定することを目的として損害査定に過ぎず、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何ら制約するものではないことから、裁判所が自賠責保険の等級認定結果に拘束されることはありません。

しかし、実際は多くの事件で、自賠責保険の等級が出ていれば、その内容を踏まえた等級判断および損害認定を行っているのが実情です。もっとも、被害者が自賠責保険の認定等級よりも高い等級を主張する場合等は、当然に自賠責保険の認定等級に捉われずに証拠に基づいて判断することになります。そして、本件事案においても、自賠責保険における等級は第11級であったところ、当事務所の主張立証により、第9級が認定されております。

このように、訴訟により、等級の認定結果が変わり、各損害についても適正な認定を受けることは可能ですので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責

弁護士 永野 賢二