Traffic Accident Case

事例3【既払金のほか1340万円を支払うとの内容で和解が成立し、大幅増額を実現】高次脳機能障害の事例

  1. 慰謝料・損害賠償

依頼主<20代・男性>

事件の概要

福岡県朝倉市在住の20代会社員のCさん(男性)は、原動機付自転車を運転し、信号機による交通整理の行われていない丁字路交差点を直進していたところ、同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され、左眼窩底骨折、鼻骨骨折、外傷性くも膜下出血、左鎖骨骨折、びまん性脳損傷、高次脳機能障害等の傷害を負いました。

Cさんは、鎖骨骨接合術、眼窩底骨折観血的整復手術、腸骨移植、鼻骨骨折整復固定術を受け、リハビリを継続しましたが、高次脳機能障害を残しました。

当事務所の活動

当事務所は、Cさんの主治医と面談した上で、後遺障害診断書等の医証獲得のため、専門医の紹介を受け、同専門医の下で数種類の神経心理学検査を受検したところ、記憶力障害、注意障害、遂行力障害が明らかとなりました。そのため、後遺障害等級の申請を自賠責に行いましたが、自賠責は、「提出された頭部の画像上、明らかな器質的損傷および脳室拡大所見は認められない」として、高次脳機能障害を否定しました。

その後、加害者側は、上記結果に基づき示談提示を行いましたが、到底納得できる内容ではなかったため交渉は決裂し、当事務所は適正な後遺障害等級の認定を受け、適正な賠償を受けるため、福岡地方裁判所に訴訟提起しました。

解決と成果

 本件訴訟における主な争点は、後遺障害等級の認定でした。 後遺障害等級について、加害者側は、自賠責基準を前提として、「原告(Cさん)の軽傷意識障害は1週間以上持続していない」「身体面及び行動面ともに自立しており、能力低下はみられず、医師の診断によっても、時々、周囲の支え、理解が必要な程度の状態であるといえ、家族、介護者からみて、日常生活に何ら問題はない」「原告(Cさん)にはびまん性軸索損傷は発生していない」旨主張し、Cさんの高次脳機能障害を否定しました。高次脳機能障害とは、脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら慢性期へと続く、典型的な症状として多彩な認知障害、行動障害および人格変化を示すものをいいます。詳しくは、「高次脳機能障害」を参照してください。)。

これに対し、当事務所は、Cさんの意識障害は1週間以上持続していないなど到底考えられないこと、画像上明確な脳萎縮等が確認できない場合であっても、「頭部外傷」と「典型的な臨床症状」とがある場合には、「画像上の所見がないこと」のみをもって、脳外傷による高次脳機能障害の発生を否定することは妥当でないこと、事故態様、原告の精神症状や性格変化等を具体的に主張立証した上で、医学鑑定の申出を行ったため、裁判所は同鑑定の申出を採用し、高次脳機能障害にかかる専門医を鑑定人として指定しました。

その後、鑑定人が「原告(Cさん)には事故による高次脳機能障害が存在する可能性が高い。その症状と程度については意思疎通能力が多少失われているものと推定し、自賠責施行令別表第二第12級第13号に近い程度と考える。」との意見を述べたことにより、裁判所は「鑑定において、診療録の詳細検討、画像の詳細検討の上で12級相当の後遺障害との結果が出ており、鑑定の結果を採用するのが相当」として、後遺障害等級第12級と認定しました。

以上より、加害者側が、Cさんに対し、既払金のほか1340万円を支払うとの内容で和解が成立し、結果として、大幅増額を実現することができました。

弁護士の所感

 本件は、事故による脳損傷を示す画像はあっても、脳萎縮・脳室拡大像が確認できず、自賠責保険が高次脳機能障害を否定した事案でした。 確かに、脳外傷による高次脳機能障害の等級認定は、事故による脳損傷の有無が重要です。しかし、外傷性脳損傷において急性期の受傷を示す画像所見が慢性期には消失や陳旧化を表す所見へと変化する一方、それに比例して急性期に認めた症状が改善消失するとは限らず、何らかの後遺障害を残すことは多く、慢性期に画像所見を指摘できなくなっていたとしても高次脳機能障害がないとは断定できません。

そして、高次脳機能障害については、被害者の具体的な症状・障害の内容を正確に把握することが後遺障害の内容および程度を適切に評価した等級認定を行ううえで重要であり、被害者の就労、生活における具体的な状況を記憶や認知等に関する障害についてのみではなく、それが被害者の身体の状況、他の障害と相まって、具体的にどのような場面でどのような支障が生じているのかを主張立証することが必要です。

本件は、専門家である医師に意見を求めなければ、適切な判断をすることが困難な事案でしたので、医学鑑定を選択しました。同鑑定は、裁判所が選任した鑑定人が、中立公正な立場から、これまでの証拠を詳細検討し、学識経験に基づいて鑑定評価したものでありますが、事件受任後、Cさんの主治医と面談し、後遺障害診断書等の医証獲得のために奔走した結果、自賠責の判断を覆すことができたものと自負しております。

このように、自賠責で等級を否定されたとしても、訴訟により認定結果が変わる可能性がありますので、あきらめずに、弁護士に相談して頂きたいと思います。

文責

弁護士 永野 賢二