【顧問弁護士】労働時間の管理について(運送業)

【顧問弁護士】労働時間の管理について(運送業)

インターネットショッピングの普及により宅配便の取扱量は増大しています。その一方で、ドライバーの不足が問題になっています。

低額の配送料で個人宅に確実に荷物を届ける宅配便はいまや社会にかかせないインフラになりました。

また、国際的にみても日本の宅配便サービスのレベルは高いと評価されています。

これを支えてきたのが、優秀な宅配便ドライバーの方々でした。

かつては、宅配便も含め、運送業界のドライバーの方は長時間労働など、過酷な労働条件に耐えたり、時間外の割増賃金をもらえなかったりすることが当たり前だったかもしれませんが、最近、ドライバーの労働条件を見直す会社が出てきました。

これからの運送業者にとっては、ドライバーの確保のためにも、ドライバーの長時間労働を避け、労働内容に見合った適正な賃金を支払っていくことが従前より一層重要になっていくでしょう。

運送業に限らず、かつては日本の企業ではサービス残業が慣例化していましたが、サービス残業が社会問題化し、今日では、未払残業代の支払いを求める裁判などが増えています。

労働者から未払い残業代の裁判などが起こされた場合、理屈の上では未払い残業代が発生することの立証は労働者が行う必要があります。

ところが、裁判所では、使用者側に労働者の労働時間を把握する義務があるという考え方が定着していますので、労働者が時間外労働を行っていることをある程度具体的に主張立証できていれば、使用者側に残業時間も含めた労働時間を説明するよう求められ、使用者側で適切に労働時間を管理していない場合には労働者側の主張が認められる可能性が高くなります。

定時に出勤して定時に退出するオフィスワーカーと異なり、運送業におけるドライバーの方は基本的に外部での配送業務が終わるまで営業所に帰ってくることができません。

そのため労働時間は不規則になりがちですので、特別な配慮が必要ですし、いざ紛争が起こったときにも時間外労働の有無や、その時間の認定で争いが複雑になりがちです、

ちなみに、労働基準法では変形労働時間制といって、一定の期間について、一日8時間、週40時間を超える労働時間について時間外割増賃金を支払わない仕組みを採用することも可能ですが、厳格な手続要件を満たす必要があり、変形労働時間制を採用している会社であっても、手続要件を満たしておらず、いざ裁判になったときには、一日8時間、週40時間の労働時間規制が及ぶと認定されるケースも多く認められます。

一定の貨物自動車には瞬間速度、運行距離及び運行時間の計測機の設置が義務付けられており、現在ではそれらの計測器もデジタル化されていますので、トラック走行中の労働時間を把握することは比較的容易です。

ところが、ドライバーの方の労働時間には、トラックの走行時間以外にも、当日の配送ルートの確認や、荷物をトラックに積み込んだり、トラックから積み下ろしたりする作業、事業所に帰所してからの報告などの業務も含まれます。

一般的に、ドライバーの業務は運転が中心となるため、それ以外の周辺業務は軽視されがちですが、これらの周辺業務も労働時間に含まれます。

事業所にタイムカードが設置されているところでは、ドライバーの一日の流れは、タイムカードに出勤の打刻を行い、配送の準備を行い、一定の時刻に貨物自動車で配送に出発し、配送先で荷下ろし、別の会社で荷物の受取などを行い、すべてのルートの配送を終えて、事業所に帰所し、その日の報告を終えて、タイムカードに退勤の打刻を行って退所する、ということになります。

会社によっては、タイムカードは出欠の確認だけであり、始業時間と終業時間は日報や情報端末など別の方法で把握しているところもあると思います。

ところが、裁判所では、基本的にタイムカードの打刻時間から始業時間と終業時間を認定します。

タイムカードの打刻時間以外で始業時間と終業時間を認定してもらうためには、裁判所に対して説得力のある説明をすることが必要になります。

しかも、残業代の請求については、通常の民事訴訟ではなく、労働審判という手続を用いることが多いのですが、労働審判は通常の民事訴訟と異なり、期日は3回、申立から解決までに約3カ月という短期間で終わる手続ですので、労働者から申立てがあってから1カ月程度で説得力のある主張立証の準備をする必要があります。

そのため、労働審判においては、その会社特有の労働時間管理の方法を裁判所にわかってもらうことはより一層大変です。

まずは、ドライバーの方の不満が起こらないよう、明快かつ適切な労働時間制度を採用する必要がありますが、制度の導入段階でドライバーの方々の意向を吸い上げたり、ドライバーの方々との間で軋轢が生じたりしないか判断することは難しく、制度の導入段階から専門家に相談することで無用な争いを避けることができます。

また、裁判や労働審判などの争いが起きる前から、労働時間管理の方法として問題がないか弁護士に相談しつつ、かつ社内の労働時間管理の方法を把握している弁護士がいれば、労働審判が申し立てられた場合でも、充実した主張立証を行うことが可能になります。