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譲渡担保という手があります(製造・卸売・販売業)

2019年9月5日
【顧問弁護士】譲渡担保について(製造・卸売・販売業)

中小企業であっても、すぐれた技術やノウハウを有している企業はたくさんあります。 こうした優れた技術、ノウハウを有している企業に積極的に商材を卸し、取引を拡大下糸考えても、相手方の資金力に不安があると、もしものときに代金の支払を受けられないかもしれないと考え、二の足を踏んでしまうかもしれません。
また逆に、優れた技術を有しているにもかかわらず、開発や製造のための資金調達ができず、大きな取引の機会を失ってしまうということもあるかもしれません。 こうした場合、不動産を所有している会社ならば、その不動産に担保を設定し、不動産を有していない場合には、代表者や役員が個人保証を行う、ということがよく行われます。

しかし、会社にとって自社ビルや工場を担保に取られることには心理的抵抗が生じますし、実際に自社ビルや工場に多数の担保が設定されていることで会社の信用を損なう恐れもあります。 また、大きな金額に個人保証を付けることは、代表者や取締役にとって負担になります。
そこで、工場で製造された一定の範囲の在庫製品に担保を設定する、という方法が考えられます。一定範囲の在庫製品が担保として確保されればよいので、債務の返済が滞ったりしなければ、製造業者は従前どおりに製品を出荷、売却することができます。

製品に担保を設定するその際に問題となっていたのが、担保権の設定をどのように公示するのか、すなわちどのように対抗要件を備えるのか、ということでした。 不動産に担保権を設定する場合、登記によって対抗要件を備えることができますが、動産については、引渡しが対抗要件とされています。 引渡しの方法としては、物理的な引渡しだけでなく、当事者の意思表示だけで、引渡しを行ったことにする、という方法も法律上認められています。 そのため、法律上の引渡しが行われたのかどうか、対抗要件が備えられているのかどうか、第三者からみると判断が難しく、担保権の設定を受けた方も、後から第三者との間でトラブルになることを覚悟しなくてはなりません。

動産の引渡しについて、明確な対抗要件を備えることができるよう、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律が制定され、動産譲渡登記制度が運用されています。 この制度により、譲渡担保契約の日付、極度額の定め、対象となる動産の種類や、保管場所などが登記に記載されるため、後から利害関係を有するようになった第三者に対しても担保権を対抗できます。
珍しい例では、いけすで飼育されている養殖魚に担保が設定される例もあります。 動産譲渡ファイルは、登記の存続期間が10年に制限されている、登記の受付を行っているのが東京法務局だけなど、特殊な部分もありますが、中小企業の資金調達の方法として積極的な活用が期待できる制度です。

譲渡担保契約を締結する場合、取引先との信頼関係が構築されていることが通常でしょうから、弁護士が前面に出て交渉することは少ないかもしれませんが、資金調達の方法でお困りの場合は、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。