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離婚するなら公正証書?調停調書?

2019年11月15日

離婚の際、親権者、養育費の支払、面会交流、財産分与、慰謝料の支払、年金分割などの条件も一緒に決めることが多いですが、これらの条件を離婚後もしっかり守っていってもらうためには、公正証書や家庭裁判所の離婚調書など法的に強制力のある書類を残しておく必要があります。

調停は裁判所に出廷する必要が、解決まで時間や費用がかかるため、当事者間で条件について合意が整う可能性が高い場合には、公正証書の作成を検討される方が多いと思います。

公正証書において、金銭の支払義務について約束し、金銭の支払いを怠ったときには直ちに強制執行されることを債務者が承諾している(強制執行認諾文言といいます。)場合には、判決書や調停調書などと同様に、裁判所に強制執行の申し立てをすることが可能になります。

では、調停調書と公正証書とで具体的に効力に違いはあるのでしょうか。

離婚そのものについて

公正証書において離婚の合意をした場合、公正証書そのものを市役所に持って行って離婚が認められるわけではありません。

公正証書がない場合と同様に離婚届に双方が署名して市役所に提出する必要があります。

これに対し調停調書の場合、夫婦のどちらか一方が調停調書を市役所に提出すれば足ります。

養育費の支払について

公正証書には、通常、養育費の支払いを怠った場合、強制執行に服する旨の強制執行認諾文言が付されています。

強制執行の申立の場合、債権者側で債務者側の財産を特定しなければならず、預金に対して強制執行するためには、金融機関の支店名まで特定する必要がありますが、調停調書で養育費の支払義務が認められている場合、裁判所への申立などの法的に認められた手続で銀行の本店宛に照会し、どの支店に口座があるか調査することができます。

一方、公正証書しか作成していない場合、預金がある支店を調査する手続が採用できません。

この点は、民事執行法が改正され、2020年4月以降、公正証書の場合でも裁判所に申し立てすることで調査が可能になる予定です。

また、強制執行の申立を行うためには、判決書や調停調書を作成した裁判所や公正証書を作成した公証人から執行文を付与してもらう必要がありますが、調停調書の場合、執行文付与は不要です。

面会交流について

面会交流が約束通りに行われない場合には、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法が特定されていることを場合にかぎり、約束に違反するごとに制裁金を支払う間接強制という手続をとることができます。

公正証書において強制執行認諾文言を付されるのは、通常、金銭の支払義務に関する部分のみなので、公正証書に面会交流の約束が記載されていても、間接強制の申立はできないと考えられます。

年金分割について

調停調書や公正証書において年金分割の合意をした場合、年金事務所で分割の申請を行う必要があります。

調停調書の場合、当事者の一方が、調停調書をもって年金事務所で申請を行えば足ります。

公正証書の場合、当事者双方が年金事務所において申請の手続きを行う必要があります。

公正証書と調停調書の効力は全く同じと考えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、細かい点では違いがあります。

離婚後の強制執行のことまで考えて公正証書の作成にするか、調停の申し立てまで行うか検討された方がいいと思います。