【顧問弁護士】労働時間の管理について(運送業)

【顧問弁護士】労働時間の管理について(運送業)

インターネットショッピングの普及により宅配便の取扱量は増大しています。その一方で、ドライバーの不足が問題になっています。

低額の配送料で個人宅に確実に荷物を届ける宅配便はいまや社会にかかせないインフラになりました。

また、国際的にみても日本の宅配便サービスのレベルは高いと評価されています。

これを支えてきたのが、優秀な宅配便ドライバーの方々でした。

かつては、宅配便も含め、運送業界のドライバーの方は長時間労働など、過酷な労働条件に耐えたり、時間外の割増賃金をもらえなかったりすることが当たり前だったかもしれませんが、最近、ドライバーの労働条件を見直す会社が出てきました。

これからの運送業者にとっては、ドライバーの確保のためにも、ドライバーの長時間労働を避け、労働内容に見合った適正な賃金を支払っていくことが従前より一層重要になっていくでしょう。

運送業に限らず、かつては日本の企業ではサービス残業が慣例化していましたが、サービス残業が社会問題化し、今日では、未払残業代の支払いを求める裁判などが増えています。

労働者から未払い残業代の裁判などが起こされた場合、理屈の上では未払い残業代が発生することの立証は労働者が行う必要があります。

ところが、裁判所では、使用者側に労働者の労働時間を把握する義務があるという考え方が定着していますので、労働者が時間外労働を行っていることをある程度具体的に主張立証できていれば、使用者側に残業時間も含めた労働時間を説明するよう求められ、使用者側で適切に労働時間を管理していない場合には労働者側の主張が認められる可能性が高くなります。

定時に出勤して定時に退出するオフィスワーカーと異なり、運送業におけるドライバーの方は基本的に外部での配送業務が終わるまで営業所に帰ってくることができません。

そのため労働時間は不規則になりがちですので、特別な配慮が必要ですし、いざ紛争が起こったときにも時間外労働の有無や、その時間の認定で争いが複雑になりがちです、

ちなみに、労働基準法では変形労働時間制といって、一定の期間について、一日8時間、週40時間を超える労働時間について時間外割増賃金を支払わない仕組みを採用することも可能ですが、厳格な手続要件を満たす必要があり、変形労働時間制を採用している会社であっても、手続要件を満たしておらず、いざ裁判になったときには、一日8時間、週40時間の労働時間規制が及ぶと認定されるケースも多く認められます。

一定の貨物自動車には瞬間速度、運行距離及び運行時間の計測機の設置が義務付けられており、現在ではそれらの計測器もデジタル化されていますので、トラック走行中の労働時間を把握することは比較的容易です。

ところが、ドライバーの方の労働時間には、トラックの走行時間以外にも、当日の配送ルートの確認や、荷物をトラックに積み込んだり、トラックから積み下ろしたりする作業、事業所に帰所してからの報告などの業務も含まれます。

一般的に、ドライバーの業務は運転が中心となるため、それ以外の周辺業務は軽視されがちですが、これらの周辺業務も労働時間に含まれます。

事業所にタイムカードが設置されているところでは、ドライバーの一日の流れは、タイムカードに出勤の打刻を行い、配送の準備を行い、一定の時刻に貨物自動車で配送に出発し、配送先で荷下ろし、別の会社で荷物の受取などを行い、すべてのルートの配送を終えて、事業所に帰所し、その日の報告を終えて、タイムカードに退勤の打刻を行って退所する、ということになります。

会社によっては、タイムカードは出欠の確認だけであり、始業時間と終業時間は日報や情報端末など別の方法で把握しているところもあると思います。

ところが、裁判所では、基本的にタイムカードの打刻時間から始業時間と終業時間を認定します。

タイムカードの打刻時間以外で始業時間と終業時間を認定してもらうためには、裁判所に対して説得力のある説明をすることが必要になります。

しかも、残業代の請求については、通常の民事訴訟ではなく、労働審判という手続を用いることが多いのですが、労働審判は通常の民事訴訟と異なり、期日は3回、申立から解決までに約3カ月という短期間で終わる手続ですので、労働者から申立てがあってから1カ月程度で説得力のある主張立証の準備をする必要があります。

そのため、労働審判においては、その会社特有の労働時間管理の方法を裁判所にわかってもらうことはより一層大変です。

まずは、ドライバーの方の不満が起こらないよう、明快かつ適切な労働時間制度を採用する必要がありますが、制度の導入段階でドライバーの方々の意向を吸い上げたり、ドライバーの方々との間で軋轢が生じたりしないか判断することは難しく、制度の導入段階から専門家に相談することで無用な争いを避けることができます。

また、裁判や労働審判などの争いが起きる前から、労働時間管理の方法として問題がないか弁護士に相談しつつ、かつ社内の労働時間管理の方法を把握している弁護士がいれば、労働審判が申し立てられた場合でも、充実した主張立証を行うことが可能になります。

【顧問弁護士】運送約款について(運送業)

【顧問弁護士】運送約款について(運送業)

宅配便は、一般消費者を中心とした多数の利用者を顧客とし、大量の小口の荷物を割安な運賃で運送するサービスですが、このような定形的なサービスを効率的に提供するのに役立っているのが約款です。

約款による責任制限について

商品の運送中、宅配便業者の過失によって、商品を紛失してしまった場合、宅配便業者は、商品の紛失によって利用者が被った損害を賠償する義務がありますが、その賠償の範囲については約款によって、民法や商法の規定よりも制限されています。

たとえば、商法では、荷物が紛失した場合の賠償の範囲は、引渡し予定日における到達地の価格、と規定されています。

卸売業者のもとから小売業者宛てに商品を運送した場合、小売業者の元に到達した商品の価格には運賃や中間手数料が上乗せされることになりますが、到達地の価格はこうした運賃や中間手数料が上乗せされた価格のことを指します。

ところが、宅配便は一般消費者の元に商品を運送するものであり、到達地において発送地の荷物の価格に運賃その他の費用を加算されることが想定されていないため、宅配便約款では、賠償の範囲は、発送地の価格と定められています。

すなわち、宅配便業者が負うべき損害賠償の範囲について、商法では到達地の価格とされているものが、約款によって、発送地の価格に制限されているのです。

なお、損害額の算定にあたっては宅配便の運賃相当額については考慮されませんが、宅配業者の責任によって商品が滅失した場合には、運賃を払い戻すことが約款の別の条項で定められています。

これまでの判例においても、運送業者の賠償責任の範囲を制限する約款の定めについても運賃を可能な限り低い額にとどめるために合理的なものであるとして、有効と判断されています。

宅配便の運送中に荷物がなくなった場合、利用者は商品の価格だけでなく、商品を利用できなかったことによる損害や代替品の購入費用なども含めて請求したいと考えますが、上記のような約款の定めに従えば、商品の発送地価格以外の請求は認められない、ということになります。

利用者としては宅配便の利用時に約款の内容を熟知しているわけではないため、約款がある、の一点張りでは納得しないことも多くあるでしょう。

裁判に発展する場合に限らず、任意の交渉の段階でも、ただ単に約款がある、と主張するだけではなく、民法の規定や商法の規定に照らした約款の趣旨まで説明することで、相手方の理解を得られることがあるかもしれません。

債権法改正との関係

このたびの債権法改正により、約款の有効性や、適用範囲が民法に直接的に規定されることになり、宅配便約款を契約の内容とする旨の合意をするか、宅配便業者が約款を契約の内容とする旨を利用者に表示していたときに、約款の内容についても合意したものとみなす、という規定ができました。

債権法の改正に合わせて、契約締結の際の約款に関する説明の方法や、約款の内容そのものを見直しておく必要があるかもしれません。

事業者の方にとって約款は重要です。約款について、問題が生じる前から、弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

【顧問弁護士】法定地上権と執行異議について(不動産業)

【顧問弁護士】法定地上権と執行異議について(不動産業)

一戸建て住宅の宅地と建物のそれぞれに抵当権が設定されている場合、抵当権の実行に当たっては、宅地と建物それぞれが独立した不動産として評価されることになります。

土地の価格評価に当たって、土地利用権等割合といって、何らかの方法で建物の存在を評価し、土地の評価額の一部を差し引き、建物の評価額に転嫁するのですが、建物のために法定地上権が成立する場合には、土地利用権等割合がかなり大きく評価されることになるため、土地の抵当権者は大きな影響を受けます。

法定地上権の成立要件は、①抵当権設定当時土地・建物が同一人の所有に属していたこと、②抵当権設定当時、すでに建物が存在していたこと、③競売が行われたこと、④競売の結果土地と建物が別人の所有に帰属したこと、の4つとされています。

戸建て用の宅地を販売するに当たって、購入者が売却代金を準備するためにA社から借入を行ったため、A社が、当該宅地に抵当権を設定したとします。

その後、宅地の購入者が建物の建築費用について今度はB社から借入を行ったため、B社が建物に抵当権を設定したとします(B社の立場で土地にも抵当権を設定することもありますが、ここでは設定を簡単にするため、建物だけに抵当権を設定したとします。)。

ニュータウンの開発など、土地区画整理事業を伴う場合には、宅地の売買契約、抵当権の設定契約から、建物の建築までの間に期間が空くことが多いため、A社が宅地に抵当権を設定した時点では、建物の建設工事は着手すらされておらず、それから1年ほど経過してから建物の保存登記と、B社の抵当権設定登記がされる、ということもあります。

こうした場合には、上述の②の要件がかけるため、法定地上権は成立しない、ということになります。

ところが、裁判所の競売手続は基本的に書面での審理なので、宅地にA社の抵当権、建物にB社の抵当権が設定されていることはわかるものの、A社が抵当権を設定した当時、宅地が更地の状態であったのか、建物の建設工事に着手されていたのかは裁判所にわかりません。

そのため、A社が宅地に抵当権に設定した当時、既に建物が存在していたもの、あるいは建物が建設途中であったとして扱われ、宅地には建物のために法定地上権が成立するとして土地の評価額の相当割合が差し引かれ、建物の評価額の方に転嫁されてしまうということも起こりえます。

このような場合は、執行異議という手続で、法定地上権の成立を否定したうえで、不動産の評価をやり直してもらうことができます。

不動産の競売手続は、裁判所の主導で進んでいくため、当事者としてチェックする意識が希薄になりがちですが、不動産の実態をよく知る当事者としては、不動産の現況をしっかり記録化しておくとともに、いざ競売手続がはじまったときには、裁判所に集められた資料も入念に確認することが重要でしょう。

手続内容を直接確認することが難しい場合には、弁護士にご相談することもぜひご検討ください。

【顧問弁護士】マンションの老朽化について(不動産業)

【顧問弁護士】マンションの老朽化について(不動産業)

事業者の方が、管理会社として、あるいは賃貸用物件や商業施設部分の区分所有者としてマンションの管理に携わったりすることは多いと思います。

日本では、1970年代から、鉄筋コンクリート造りのマンションが急激に増加しました。そのため、現在、日本国内には建築から50年を迎えようとするマンションが数多く存在しています。

鉄筋コンクリートの建物は100年持つといわれることもありましたが、今では建物の寿命はもっと短いと考えられています。

税制上の法定耐用年数としては、鉄筋コンクリートの建物の場合、昔は75年と定められていましたが、現在は47年と定められています。

1970年以前の日本では鉄筋コンクリート造りのマンションが少なかったので、鉄筋コンクリート造りの建物の寿命がどれくらいなのかは、今後、徐々に明らかになるでしょうが、現在のところ、50年から60年くらいと考えられることが多いようです。

そのため、鉄筋コンクリート造りのマンションの築年数が50年を超えれば、老朽化しつつあるものとして、老朽化に対する対応策を考える必要があります。

マンションが老朽化した場合の対応策として考えられるのは、まず大規模修繕です。

大規模修繕工事は10年から15年に一度の割合で行われることが多く、定期的に建物の検査と大規模修繕工事を繰り返すことで、既存建物の資産価値を維持し、長期的に建物を利用することが可能となります。

もっとも、大規模修繕のためには、各区分所有者が修繕のための積立金を支払う必要がありますし、建物の築年数が経過すれば、大規模修繕のための工事費用も増加していきます。

そのため、マンションの築年数が50年を超える頃になると、大規模修繕工事が各区分所有者にとっても重荷になってきます。

また、大規模修繕工事を行っても、いつか建物の寿命はやってきます。

マンションの老朽化対策として次に考えられるのは、マンションの建て替えです。

区分所有法で、マンションの建替え決議の方法が定められており、管理規約でも区分所有法に則った手続が定められていますが、マンションの建替え決議の要件は、区分所有者の5分の4の賛成を要するなど、厳しく設定されています。

耐震性に問題がある建物では建替え決議の要件が緩和されていますが、対象は未だ一部の建物に限られています。

また、マンション建築当時と建築関係の法律が改正されていることとの関係などで、建替え前後で同じ間取りのマンションを建設することができないこともあります。

そのため、特に高齢の方などは建替えには消極的な場合が多いです。

建替えが難しいということになれば、マンションの老朽化に対する対応策として、建物を解体した後、建替えではなく、土地を売却することも検討する必要があります。

現在のところ、区分所有法では、建替え以外の目的で建物を解体することについての定めはありませんので、建物を解体して土地を売却する場合には、原則として、区分所有者全員の同意が必要になります。

築50年のマンションとなれば、空き部屋もあるでしょうし、区分所有権に複数の相続が発生している可能性もありますが、その場合は、相続人の確認から行わなければなりません。

このように、建物を解体して土地を売却するためには手続が非常に煩雑になりますが、現存するマンションの全てが建替えられるとは考えられないため、相当数のマンションで、建物を解体して土地を売却するという手段を選択せざるを得ないと考えられます。

老朽化したマンションをどうするかは、基本的に各区分所有者の意思に任されており、各区分所有者の意思統一を図った後で、進めていくべきとされています。

ところが、ここまで述べたように、大規模修繕やマンションの建て替えは各区分所有者に経済的負担を強いることになりますし、マンションの解体の場合も含めて、それぞれ手続も煩雑であることから、各区分所有者からマンションの老朽化への対策として、積極的な提案がなされることは期待しにくいのです。

このようにして、老朽化に対する対応策が検討されないまま、マンションが手の施しようがないほどに老朽化が進んでしまうと、結局、管理会社等の事業者が何らかの対応をせざるをえないということになるのではないでしょうか。

建物が老朽化して倒壊のおそれなどが生じた場合には、事業者が管理責任を問われる可能性もあります。

私共も、マンションの老朽化対策について事業者の方から種々のご相談を受けていますが、非常に難しい問題です。

各マンションの構造や立地環境、各区分所有者の意向も含め、老朽化にどのように対応するか、早めに弁護士と連携することをご検討ください。

【顧問弁護士】部品メーカーと製造物責任(製造・卸売・販売業)

【顧問弁護士】部品メーカーと製造物責任(製造・卸売・販売業)

国際競争が激しくなり、技術革新のペースは昔よりも早くなっています。

今や、製造業であっても一社で部品の製造から製品の組み立てまで行うということはなく、複数の資材加工業者や部品メーカーが部品を供給し、各社の技術を持ち寄って製品を製造することが通常です。

部品メーカーと製品メーカーの関係も流動的になっており、部品メーカーにとって、製品メーカーとどのような関係を構築していくかが重要です。

製造物責任

A社がある機械の部品を開発・製造して機械メーカーであるB社に納入したところ、その部品に欠陥があり、機械が発火するなどして、機械の利用者に損害が生じました。

この場合には、A社、B社ともに、製造物責任法に基づき、機械の利用者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

製造物責任法は、製品に欠陥があった場合に、消費者が製造業者に対し、直接損害賠償請求しやすくするために制定された法律です。

民法では、製品に欠陥があったとしても、製造業者の過失が認められなければ製造業者に損害賠償責任は認められませんが、製造物責任法では、製造業者の過失は要件とされておらず、消費者が製造業者の責任を追及しやすくなっています。

機械の利用者は、製造物責任法を根拠として、機械に欠陥があり、その欠陥によって損害を被ったこと主張立証することができればB社に対する損害賠償責任が認められることになります。

また、A社が製造した部品の欠陥によって利用者に損害が発生したことが主張立証できれば、A社に対しても製造物責任法における責任を問うことができます。

製品メーカーと部品メーカーの関係

機械メーカーであるA社としては、第一に世間の消費者一般の信用を失うことを回避したいと考えます。

そのため、製品に欠陥がある可能性が高いとなれば、機械利用者からのクレームに対して、メーカーとしての責任を大きく争わず、修理や交換あるいは返金等の対応を行うことになります。

このように機械の利用者に対する補償を行った後で、製品メーカーと部品メーカーとの間で問題が発生することがあります。

たとえば、A社が機械利用者に対する補償金として、1000万円を支払ったとします。メーカーとしては、部品メーカーであるB社に対し、部品の欠陥によって1000万円の損害を被ったとして、損害賠償請求します。

また、A社からB社に対し、機械利用者に支払った補償金だけではなく、調査費用や補償のための交渉に要した人件費なども加算されて請求されるかもしれません。

部品メーカーが端末利用者に直接接触することはほとんどないので、部品メーカーからは機械利用者にどのような損害が生じたのか、はっきりわからないということが多いと思います。

製造業者と一般の消費者の間には、製品に関する技術情報の点で製造業者が圧倒的優位に立っているため、製造物責任法のように、法律によって消費者が保護されています。

その一方で、メーカーと部品メーカーの関係は対等なものとされ、特段の法律的な手当てはされていません。

ところが、現実には、部品メーカーと機械メーカーとの間にも、企業の規模によって、取引の関係上力関係が厳然と存在することがあります。

製造物責任の後処理において、機械メーカーから部品メーカーに対し、こうした取引上の力関係によって責任が押し付けられると、部品メーカーとしては予期せぬ損害を被るおそれがあります。

逆に、部品メーカーの方が取引上の力関係が強い場合には、機械メーカーが製造物責任による損害を一手に負担するというおそれもあります。

こうした不測の損害を避けるために、部品メーカーとメーカーとの間で、契約書によって損害賠償の範囲や損害額の決め方を事前に決めておくことが有効です。

製造物責任法などの法律があるため、消費者との関係で責任を否定することは難しいのですが、部品メーカーと機械メーカーの間であれば、契約によって責任を負う範囲を限定することが可能なのです。

取引先との交渉について、弁護士に相談することに抵抗がある事業者の方も多いかもしれませんが、法律家のアドバイスを聞くことでかえって冷静な話し合いをすることができます。

取引上、不利な立場に立たされるおそれのある中小の製造業の皆様にこそ、常日頃から弁護士に相談できるような体制を整え、製造物責任が問題となるようなケースに備えていただきたいと思います。

【顧問弁護士】譲渡担保について(製造・卸売・販売業)

【顧問弁護士】譲渡担保について(製造・卸売・販売業)

中小企業であっても、すぐれた技術やノウハウを有している企業はたくさんあります。

こうした優れた技術、ノウハウを有している企業に積極的に商材を卸し、取引を拡大下糸考えても、相手方の資金力に不安があると、もしものときに代金の支払を受けられないかもしれないと考え、二の足を踏んでしまうかもしれません。

また逆に、優れた技術を有しているにもかかわらず、開発や製造のための資金調達ができず、大きな取引の機会を失ってしまうということもあるかもしれません。

こうした場合、不動産を所有している会社ならば、その不動産に担保を設定し、不動産を有していない場合には、代表者や役員が個人保証を行う、ということがよく行われます。

しかし、会社にとって自社ビルや工場を担保に取られることには心理的抵抗が生じますし、実際に自社ビルや工場に多数の担保が設定されていることで会社の信用を損なう恐れもあります。

また、大きな金額に個人保証を付けることは、代表者や取締役にとって負担になります。

そこで、工場で製造された一定の範囲の在庫製品に担保を設定する、という方法が考えられます。一定範囲の在庫製品が担保として確保されればよいので、債務の返済が滞ったりしなければ、製造業者は従前どおりに製品を出荷、売却することができます。

製品に担保を設定するその際に問題となっていたのが、担保権の設定をどのように公示するのか、すなわちどのように対抗要件を備えるのか、ということでした。

不動産に担保権を設定する場合、登記によって対抗要件を備えることができますが、動産については、引渡しが対抗要件とされています。

引渡しの方法としては、物理的な引渡しだけでなく、当事者の意思表示だけで、引渡しを行ったことにする、という方法も法律上認められています。

そのため、法律上の引渡しが行われたのかどうか、対抗要件が備えられているのかどうか、第三者からみると判断が難しく、担保権の設定を受けた方も、後から第三者との間でトラブルになることを覚悟しなくてはなりません。

動産の引渡しについて、明確な対抗要件を備えることができるよう、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律が制定され、動産譲渡登記制度が運用されています。

この制度により、譲渡担保契約の日付、極度額の定め、対象となる動産の種類や、保管場所などが登記に記載されるため、後から利害関係を有するようになった第三者に対しても担保権を対抗できます。

珍しい例では、いけすで飼育されている養殖魚に担保が設定される例もあります。

動産譲渡ファイルは、登記の存続期間が10年に制限されている、登記の受付を行っているのが東京法務局だけなど、特殊な部分もありますが、中小企業の資金調達の方法として積極的な活用が期待できる制度です。

譲渡担保契約を締結する場合、取引先との信頼関係が構築されていることが通常でしょうから、弁護士が前面に出て交渉することは少ないかもしれませんが、資金調達の方法でお困りの場合は、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。

【顧問弁護士】レジの空打ちについて(製造・卸売・販売業)

【顧問弁護士】レジの空打ちについて(製造・卸売・販売業)

スーパーマーケットなどの小売店では、代金のやりとりはレジスターで管理されています。最近はレジスターの機能も進化し、現金管理の方法も容易になっているはずです。

ところが、現在でも、空打ちといって、顧客から受け取ったお金をレジに入れなかったり、従業員が勝手に取消の処理を行い、レジスターから返金用に取り出したお金を抜きとったりしてお店のお金を取ってしまうということが起こっています。

そして、一日に大量の商品を取り扱うスーパーマーケットでは、一度や二度の空打ちではお店側に発覚せず、長期間繰り返された後になって発覚するということがあります。

空打ちが発覚したとき、まず第一に重要なのは、空打ちをした従業員に事実を認めてもらうことです。

最近の店舗では従業員毎にレジのコードが割り振られているので、特定の従業員だけレジの取消が多い、とか、レジ打ちの際に不自然な動きをしていることが防犯カメラに写っているとか、同僚の目撃情報があれば、空打ちの事実を認めさせる説得材料になります。

しかし、お客さんの都合で取消を行うこともあるでしょうし、数回不自然な動きをしているのが確認された、というだけでは、長期間にわたる空打ちの全体像や具体的な損害額を認定することはできません。

当該従業員と具体的な話をして、事実を認めてもらうことが重要なのです。

長期間にわたって横領が行われていた場合、損害額を確定するために、レジの内容を遡って確認する必要もありますが、こうした細かい作業を怠ってどんぶり勘定で損害額を決めてしまうと、裁判になって損害額が争いになった場合、店舗側の主張の信用性が低下してしまうおそれもあります。

なるべく細かく金額を洗い出し、空打ちをした従業員と突き合わせをしておく必要があります。

また、空打ちが疑われる従業員と面談する際には、後になって、店舗側に脅されたから認めた、と言われたりしないように、人選を考え、なるべく冷静に面談を行い、可能ならば録音も残しておいた方がいいでしょう。

レジの空打ちは刑法上の窃盗罪に該当しますので、刑事事件として捜査してもらい、証拠を確保する、ということも考えられますが、いきなり警察に告訴状を提出しても、警察がすぐに捜査を開始してくれるとは限りません。

店舗の経営者が従業員に管理監督責任を有しており、店舗の内部的な問題として扱われること、一回一回の空打ちの被害金額が少額であることなどから、当事者間での話合いや、店舗側でレジスターの金額の整理を行うよう警察から求められることも多いです。

また、空打ちをした従業員に対して、お店としては懲戒解雇を検討するはずですが、懲戒解雇を行って解雇手当を支払わない、という処理を適法に行うためには、労働基準監督署に細かな資料を提出して、除外認定を受けなければいけません。

空打ちをした従業員と面談を行った後で、賠償額を記載した示談書を作成することが多いと思いますが、会社に対する慰謝料が賠償額に加算されているものを目にします。

裁判所では、会社については慰謝料を認めてくれないことが一般的なので、裁判になったときには慰謝料部分は削られてしまう可能性が高いです。

空打ちが発覚した際には、店舗側には、当該従業員との対話をはじめとして、示談書の作成、労働関係の処理、警察への相談など、たくさんのことを同時に進めていかなければなりません。

空打ちが発生すると、経営者にとってもショックでしょうし、弁護士に相談することもはばかられるかもしれません。

しかし、感情を抑え、適切な対処をするためにも弁護士に相談することは必要なことだと思います。

【顧問弁護士】「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ(製造・卸売・販売業)

【顧問弁護士】「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ(製造・卸売・販売業)

たとえば、化粧品の生産設備を製造するA社が取引先であるB社から注文を受け、生産設備機械を製造、納品したところ、機械で生産した化粧品に不具合が発生したため、B社から契約の解除と損害賠償請求を求められましたとします。

A社としては、機械の性能に問題はなく、B社における機械の使用方法に問題があったと考えています。

大規模な生産設備の場合、不具合の原因の特定や改善方法の判断が難しいため、問題の解決に長期間を要することも少なくありません。

また、一台当たりの代金が高額であるため、契約が解除されるようなことになれば会社の経営に打撃を与えかねません。

顧客の希望にそって機械を製造したうえ、製造した機械を販売する契約は、「製作物供給契約」と呼ばれ、生産設備の取引でよく見られる契約形態ですが、実は、民法に製作物供給契約という契約に関する規定はありません。

製作物供給契約は、仕事の完成を目的とする請負契約と、完成品の売買契約との、複合契約と考えられており、請負契約の規定と売買契約の規定のどちらが適用されるのかケースバイケースで考えていく必要があります。

売主あるいは請負人に明確な落ち度が認められない場合であっても、目的となる製品の性能に不備があり、買主あるいは注文主にとって、売買契約あるいは請負契約を締結した目的が達成できないのであれば、何らかの手当が必要になります。

製品の不備を、法律上、「瑕疵」と呼び、目的物に「瑕疵」が認められる場合、瑕疵担保責任といって、買主や注文主に損害賠償請求権や解除権が認められます。

現在の民法では、売買契約において瑕疵担保責任が認められるためには、瑕疵が「隠れた」ものであることが必要とされています。

一方、請負契約において瑕疵担保責任が認められるのは、「隠れた」瑕疵に限られません。

そのほかにも、売買契約と請負契約とで瑕疵担保責任の要件や効果について、異なる規定が設けられています。

製作物供給契約における瑕疵担保責任としては、仕事の完成に至っていない場合には請負契約の問題として処理し、納品の段階で問題があった場合には売買契約の問題として処理するなどの考え方をとることもありますが、双方の利害関係が絡むと一筋縄ではいきません。

そのため、製作物供給契約を締結するに際しては、売買契約や請負契約の規定を参考にしつつ、担保責任に関する規定を契約書上に明記しておくことが望ましいと考えられます。

瑕疵担保責任は、その制度趣旨について、昔から学説が対立していましたが、現在の裁判実務では、契約の締結目的に適合した品質を備えているかという、実質的な見地から判断され、このたびの債権法改正では、『契約不適合責任』として整理されました。

債権法改正後は、契約書上も、瑕疵担保に関する規定としてではなく、契約不適合責任に関する規定、として明記することになるでしょう。

例えば、家電や自動車などであれば、品質に関してある程度の判断材料がありますが、化粧品の生産設備の場合には一日当たりの生産量や生産する製品の均一性について、その業界の取引通念や、技術に関する知識など、専門的な知識がなければ判断できません。

そこで重要になるのが、契約書作成の段階で取り交わす仕様書です。

最新の技術を導入したり、一点ものの機械であれば、仕様書に具体的な内容を記載することはなかなか困難かもしれませんが、それでも、予め考えられる可能な限りの情報を仕様書に具体的に盛り込むことで、製品の不備が疑われた場合の問題解決をスムーズに行うことができます。

製造、販売業者の方にとっては、常日頃、顧客からどのような提案を受けて、どのような製品を製造、販売しているのかを把握する弁護士がいれば、いざ、取引先との間で機械の納品についてトラブルが生じたとしても、迅速な対処が可能になります。

紛争の有無にかかわらず、製作物供給契約の契約締結の段階で弁護士にご相談いただければ、製造、販売業者の方にとってもメリットがあるはずです。

【顧問弁護士】労災と訴因減額(土木・建設業)

【顧問弁護士】労災と訴因減額(土木・建設業)

労災保険で補てんされる損害について

労働者が業務の遂行中に怪我したり、病気になったりしたとき、労働者は労働災害補償保険(労災保険)から保障を受けることができます。

労災保険では、治療費や休業損害、将来働けなくなった分の逸失利益などの補償を受けることができますが、慰謝料については労災保険からは支払われません。

慰謝料の額について

そのため、労働者が慰謝料の支払いを求める場合には、会社が直接対応しなければなりません。

慰謝料は精神的損害を補てんするものですから、怪我の程度や事故態様、事故後の対応に応じて金額は区々になるはずですし、金額の換算方法も人それぞれ違うはずですから、金額の定め方は難しい問題です。

もっとも、裁判になったときには、通院や入院の期間に応じて一定の基準が設定されており、その基準に基づいて計算することが一般的です。

また、後遺障害が認定された場合には、後遺障害に基づく慰謝料も発生しますが、これも裁判所では一定の基準に基づいて算定されます。

後遺障害の素因減額について

特に従業員の受傷の程度や症状が重篤で、後遺障害が残るような場合には、慰謝料の金額は高額になります。この場合、後遺障害等級そのものを争うことは難しいですが、後遺障害に基づく損害について争う余地はあります。

素因減額といって、もともと労働者側に持病などの障害の原因となるような要因がある場合に、公平の観点から一部減額するという方があります。

労働災害補償においてはこうした素因が認識されることなく後遺障害等級が認定されていることもあります。

労働者の方の健康保険における受診歴や、交通事故の自賠責保険の対応歴を見ると、労働者の方にもともとの持病や怪我があることが発覚することがあります。

受診歴や過去の交通事故歴まで調べることはあまり多くはありませんが、特に軽微な怪我や病気で重篤な後遺障害が認定された場合には素因が影響している可能性があります。

健康保険における受診歴や自賠責保険の対応歴を調査するため方法はいくつかありますが、どの方法を選択するにしても、弁護士に依頼することが必要です。

労働者の方を必要以上に疑う必要はありませんが、会社が直接賠償する場合には、その他の労働者の方との公平を図るためにも、弁護士に対応を依頼し、慎重に対応した方がいい場合もあります。

【顧問弁護士】自然災害(土木・建設業)

【顧問弁護士】自然災害(土木・建設業)

ここ数年、地震や大雨など、日本では想定外の被害を及ぼす天災が多発しています。

建設工事現場では、建設物、仮設物が天災の影響を直接的に受けますので、天災の多発を心配に感じている建設業者の方は多いのではないでしょうか。

地震によって工事費用が増加した場合

たとえば、ビルの建設工事中に大地震が発生し、完成途上のビルが崩壊してしまったとします。

このような場合、ビルの完成までの工事期間が延長したり、資材を再調達しなければならなくなったりして、建設業者が工事に伴って支出する費用は、当初の予想より、大幅に増加することになります。

法律上は、工事期間が伸びたり、資材を再調達したりすることになった原因が発注者にあれば、発注者に増加費用を請求することができますし、それらの原因が請負人である建設業者にある場合には、建設業者がそれらの増加費用を負担することは当然であり、発注者に増加費用を請求することもできない、ということになります。

そして、地震については、注文主のせいでも建設業者のせいでもなく、「不可抗力」とされるため、不可抗力によって損害が生じた場合には、損害を被った側の自己負担とされてしまうことが通常です。

つまり、法律上は、地震などの「不可抗力」を理由とする場合、資材を再調達するために発生した費用や工事期間が延びた分の増加費用を発注者に請求することは難しいのです。
実際には、工事を続行するかどうかも含めて、発注者と建設業者の間で協議が行われることになるでしょうが、双方にとって非常に大変な交渉になることでしょう。

もっとも、契約書に「不可抗力」によって生じた損害の補填について定めておけば、発注者、請負人それぞれの立場から不測の事態に備えることができます。

大型建設工事の場合は、不可抗力によって生じた損害について、請負人が発注者に通知し、双方協議の上、損害の一部を発注者が負担する、という条項が付けられていることが多いですが、もちろん、双方の協議により、これと異なる契約内容にすることもできます。

地震によりリース物件レンタル物件が被災した場合

地震のせいで工事現場の重機が倒壊物の下敷きになったりして故障した場合、重機がリース物件であったり、レンタル業者から借り受けているものであった場合にはリース業者やレンタル業者から重機の修理代や買替費用の請求を受けるかもしれません。

法律上は、請負人である建設業者のせいで重機が故障したのであれば、建設業者が修理費等を支払わなければなりませんし、リース業者やレンタル業者側の整備不良などが理由で故障したのであれば、建設業者が修理費等を負担する必要はありません。

そして、「不可抗力」により重機が故障した場合には、建設業者のせいで重機が故障したわけではないので、重機の修理費や買替費用は重機の所有者たるリース業者やレンタル業者が負担すべきものと考えらます。
(ちなみに、重機に車両保険が付されている場合であっても、通常の車両保険では地震による損害は保険の適用対象外とされています。)

ところが、リース契約書やレンタル契約書では、「不可抗力」によって重機が故障したような場合であっても、重機の修理代や買替費用をユーザーあるいは借主が負担するという条項が付されていることが多いのです。

重機のリースやレンタルに当たっては、使用期間や料金にばかり注目しがちで、契約書の細かな条項(実際には、見積書や請求書に細かな文字で条項が付されていることが多いです。)まで気を配ることはないと思います。

地震などの災害が発生して初めて契約書にこのような条項があることに気付き、驚かれる建設業者の方も多いかもしれません。

まとめ

大きな天災が生じた場合には、発注者も請負人もそれぞれ従業員の安全確認や、インフラの復旧作業等様々な災害対応に追われ、各所で損害が発生するため、増加費用の負担について冷静な対処ができないということが考えられます。

そのため、工事の契約の際には、「不可抗力」により損害が生じた場合にどのような取り決めになっているのか、確認することが重要です。

また、災害が起きた後で、損害の発生が「不可抗力」によるものなのかどうか、ということ自体が争われることもあります。

実際には、災害による損害の発生の場合であっても、災害の規模等の自然要因と工事計画や機材の強度、災害への備え等の人的要因が複雑に絡み合って損害が拡大していると考えられます。

自然要因と人的要因のどちらに原因があるのか明確に判断できないときには、不可抗力と人的要因の寄与度を考慮しながら、損害額を限定するということも考えられます。

工事途中に災害が発生した場合には、工事再開後のことも考えなければならず、法律や契約条項の定めだけで割り切った対応をするのは現実的には難しいかもしれません。

しかし、法律的観点、契約上の取り決めを把握していれば不当な要求に毅然と対応することが可能です。

災害への備えについても、災害が発生した後についても、弁護士に相談しながら対処することが有益と考えられます。