山本隼巳 弁護士 退所のご挨拶

拝啓 緑が眩い季節、ご清栄のこととお慶び申し上げます。

さてこの度、当事務所から、山本隼巳弁護士が、下記のとおり移籍することとなりました。

同弁護士は、勤務弁護士として当事務所に3年余りの在籍となりましたが、いつも明るく元気な人柄、常に相手のことを思いやる細やかな優しさ、真摯で誠実な職務態度等から、依頼者の人気も高く、また様々な弁護士会の活動を熱心に行うことからも多くの皆様の信頼を得てきました。そうした同弁護士の移籍には、一同寂しい思いも致しますが、彼のさらなるステップアップを心より応援していきたいと存じます。どうぞ今後とも、同弁護士に対する一層の激励とご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

皆様方のご健勝をお祈り申し上げ、ご挨拶といたします。

敬具

令和元年6月吉日

弁護士法人松本・永野法律事務所 福岡事務所
弁護士   松 本  正 文
弁護士   松 本  郁 子
弁護士   埋 田  昇 平
事 務 職 員 一 同

拝啓 向暑の候、皆様におかれましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、私は、平成27年12月より、松本法律事務所を経て弁護士法人松本・永野法律事務所にて執務して参りましたが、この度、松本先生のご了解をいただき、西南学院大学法科大学院及び会務活動を通じた御縁により、弁護士法人緒方法律事務所において職務を行うこととなりました。

これまで顧問先企業からのご相談をはじめ、幅広い分野の事件を担当させていただき、大変貴重な経験を積むことができました。松本先生をはじめ、諸先輩の先生方、事務局の皆様、業務を通してご指導ご支援いただいた皆様方に、心より感謝申し上げます。

いまだ未熟者ではございますが、初心を忘れることなく、より一層精進して参る所存でございます。引き続き、今後とも、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

敬具

令和元年6月吉日

弁護士  山 本  隼 巳

【交通事故】交通事故被害で弁護士に示談交渉を依頼する適切な時期とは

六法全書

「交通事故案件で弁護士?」と聞くと、示談交渉の場面や、調停・訴訟の場面での介入ということをイメージされる方が多いかもしれません。

実際、示談交渉や調停・訴訟の場面は、弁護士が最も活躍する場面の一つであり、このようなイメージ自体は間違いではありません。

しかし実際には、事故直後から弁護士が介入することができるのです。

「事故直後から介入させて、何か意味があるの?」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、事故後の治療・交渉等をスムーズに進めていくためには、事故直後から色々な対応をしていく必要があり、これらを被害者のみで進めていくことは相当大変です。

また被害者本人で対応する場合、加害者や加害者側保険会社の担当者との連絡も継続的に取る必要がありますが、仕事や家事育児がある中で加害者側保険会社等との対応も行うことは大変煩わしく、ストレスも溜まりやすいものです。

この点、事故直後から弁護士が介入すれば、場面ごとの必要な対応やアドバイスをさせて頂くことが可能になるとともに、加害者や加害者側保険会社の担当者との連絡も弁護士の方で対応することが可能となります。

具体的な時期とメリット

(1) 事故直後

過失に争いがある場合、物損を先に示談することが多く、その過失割合は事実上示談段階では人損解決時に影響します。

また適切な過失割合で示談するには、刑事記録等を収集する必要があります。

そして怪我をした場合、病院・検査・通院頻度等の選択を誤ると、後の賠償請求の際に不利になってしまうこともあるので、このあたりの判断は重要です。

(2) 治療継続中

加害者側保険会社は、医師の判断によらず治療費を打ち切ることがあります。

これにより、被害者の経済的・精神的負担は増加し、結果、治療を止められる方が多いです。

上記のようなケースでは、適正な後遺障害認定や賠償を得ることは困難になります。

(3) 後遺障害認定前

実務上、後遺障害等級認定申請は事前認定(加害者側保険会社を通じて自賠責保険の認定を得る方法)の方法によるのが一般的だと思います。

しかし、あくまでも加害者側保険会社を通じた手続きになるため、被害者にとって有利な資料を添付する蓋然性は低く、仮に等級が認定された場合であっても、被害者に対し当然に自賠責保険金が支払われるわけではありません。

また、後遺障害の認定は初回手続(後遺障害診断書等の医証の作成等)が最も重要ですから、事前認定の結果に不服があるとして弁護士に相談しても時すでに遅く、異議申立や裁判で覆すことは困難な場合が多いように感じます。

(4) 示談交渉

実務上、加害者側保険会社は低額な任意保険基準によって賠償金を計算します。

しかし弁護士に依頼することで、賠償金額を裁判基準に合わせて示談に応じるケースが多く、結果的に示談金額を大幅にアップさせることができます。

 

以上のとおり、事故から出来る限り早く弁護士に相談した方が、被害者のメリットは大きくなります。

【労務問題】退職後の競業を制限するための注意点

退職後の協業を制限するための注意点

1 総論
  【競業避止義務 2-1】では,退職後の競業を制限する就業規則や退職者と競業避止義務の特約が存在することを前提として,労働者が,雇用関係が継続中及び退職後に,競業避止義務に違反した場合,会社(使用者)が取り得る処分や請求等を述べました。
  もっとも,実際上,多くの会社では,退職後の競業を制限する就業規則や退職者と競業避止義務の特約が存在しないと思われます。
  まずは,競業避止義務契約の有効性の判断基準を検討したうえで,同契約の具体的な契約について,事前の方策としての就業規則の記載の仕方,事後の方策としての退職時の特約について,考えていきます。
2 競業避止義務契約の有効性について
  雇用関係が継続中の競業が認められないことはもちろんですが,退職後について競業避止義務を課すことについては,退職者の職業選択の自由(憲法22条1項)を制限する等から,契約の仕方によっては,公序良俗に反し契約自体が無効(民法90条)となることもあります。そこで,競業避止義務契約の有効性について,判例によるポイントを確認します。
  会社(使用者)側に守るべき利益があることを前提として,競業避止義務契約が過度に職業選択の自由を制約しないための配慮を行い,会社(使用者)側の守るべき利益を保全するために必要最小限度の制約を労働者に課すものであれば,当該競業避止義務契約の有効性自体は認められると考えられています。
  具体的には,①守るべき企業の利益があるかどうか,①を前提として競業避止義務契約の内容が目的に照らして合理的な範囲に留まっているかという観点から,②従業員の地位が,競業避止義務を課す必要性が認められる立場にあるものといえるか,③地域的な限定があるか,④競業避止義務の存続期間,⑤禁止される競業行為の範囲について必要な制限が掛けられているか,⑥代償措置が講じられているか等を考慮して,規定自体の評価及び同契約の有効性判断を行っていると整理することができます。
  もっとも,判例はあくまで個別事案に対する判断として行っているため,このような規定であれば,必ず有効となると一概に言えない点には注意が必要です。
3 事前の方策~就業規則の記載の仕方~
  就業規則の記載例
  (競業避止義務)
  従業員は,在職中及び退職後6か月の間,会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する。ただし,会社が従業員と個別に競業避止義務について契約を締結した場合には,当該契約によるものとする。
  *上記の「ただし書き」について
   就業規則に規定を設け,かつ,規定した内容と異なる内容の個別の契約を結ぶことは,就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める契約の効果を無効とする労働契約法12条との関係が問題となります。しかし,上記のような「ただし書き」,すなわち個別合意をした場合には個別合意を優先する旨の規定しておけば,同条の問題は生じないことになります。
  (退職金の不支給ないし減額)
  ⑴従業員が次の各号に該当した場合には,退職金を不支給とし,または減額する。
   ① 誓約に違反して退職後1年以内に競合会社に就職し,競合する事業の営業を行った場合
  ⑵退職金受領後に前項に違反する事実が判明した場合には,従業員は受領した退職金を返還しなければならない。
4 事後の方策~退職時の特約~
  退職時の特約の例
  (誓約書)
  貴社を退職するにあたり,退職後1年間,貴社からの許諾がない限り,次に掲げる行為をしないことを制約いたします。
  ⑴ 貴社で従事した〇〇の開発に係る職務を通じて得た経験や知見が貴社にとって重要な企業秘密ないしノウハウであることに鑑み,当該開発及びこれに類する開発に係る職務を,貴社の競合他社(競業する新会社を設立した場合にはこれを含む)において行いません。
  ⑵ 貴社で従事した〇〇に係る開発及びこれに類する開発に係る職務を,貴社の競合他社から契約の形態を問わず,受注ないし請け負うことはいたしません。
5 まとめ
  ここでは,退職後の競業を制限する就業規則や退職者と競業避止義務の特約が存在しない場合について,どのようにすれば,労働者による競業を防止し,競業による会社(使用者)の不利益・損害を避けることができるかを検討しました。
  もっとも,退職時の特約は,あくまで退職する労働者との合意が成立しなければなりません。この段階では,退職する労働者にとって,競業をしないという特約をする義務やメリットはありません。そのため,退職時に特約を結ぶといった事後の方策は大変ハードルが高いものとなってしまします。
  そこで,事前の方策である就業規則に,退職後の競業を制限する規定を明記することを強くおすすめします。ぜひ一度,会社の就業規則の記載を再確認してはいかかでしょうか。
もし,退職後の競業を制限する規定がなければ,弊所にご連絡ください。どのような規定を記載するべきか,一緒に考えていきましょう。

【医療法務】事故に遭った患者さん側は、何を求めているのか?

事後対応のポイント

1 例えば、予期せぬ合併症が生じてしまったようだ、というような、不幸にして患者さんに『医療事故』が発生してしまったとき、ご本人やご家族(ときとしてご遺族)は、どんな気持ちでどんなことを望まれるのでしょうか。
  よく論及される内容ですが、私の仕事上の経験上からも、さらには一患者としての個人的な体験からも、以下にまとめられるように思います。
  先に一言、以下は、発生した事故そのものの原因について医師側病院側に『法的過失』があるかないかにかかわらず、いわばどんなケースについてもあてはまる、とお考えください。
  また、患者さん側のそうした要請に応えることは、それ自体、広い意味での法的『(事後の)説明義務』に含まれます。

 (1) 何が起こったのか、解りやすく詳しく説明してほしい。 
(←『5W1H』の発想からの、丁寧な説明が大切です。)
 (2) もしミスがあったのなら、きちんと認めて謝罪してほしい。
(←『曖昧なまま時間ばかり経過した』は最悪です。)
 (3) 同じことがまた別の患者さんに起きないよう、再発防止策を明らかにしてほしい。
(←病院全体トータルでの、素早い意思統一と対応が、必要重要になります。)

2  上記のうち、特に(2)『発生してしまった結果について医療側に『過失』があるか否か』、については、よほど一目瞭然的なひどいケースは別として、通常は、医学的な検証そのものに相応の検討のための時間が必要であり、、さらに、いずれ稿を改めて述べますがそもそも『過失』とは何か、医療上の過失と法的過失はどう違うのか、最終的には裁判所による法的判断に任せる他ないのではないか、等々の問題があるため、事故発生直後の段階では、すぐに上記(2)について病院側としての結論を出すのは無理だ、というケースがむしろ多いかとは思います。
  そうした場合には、 「医療ミス・過失があったかどうかについては、今すぐには結論が出せないので,しばらく検証検討するお時間をください。あらためてお伝えいたします。」とお断りした上で、その余の上記(1)と(3)については、出来る限り迅速に丁寧に、誠意を持って説明されれば、患者さん側としては、その場では(納得まではされないまでも)かなり、お気持ちを沈めることができるでしょうし、双方にとって無用の怒りや不信不満がつのる、といった事態を、かなり避けられるのではないでしょうか。
3 このような、事故発生から時間的にほどない段階で、現実上出来うる範囲で、可能な限りでの、迅速かつ誠実な対応がなされておれば、後々の、あちらもこちらも関係者みんなが辛く苦しく重くストレスフルな、泥沼のような裁判沙汰などに発展しなくて済んだろうに、と、振り返って思わせられるけケースは、残念ながら,医療現場ではまだまだ少なくないように思います。もちろん、きちんとそうした出来る限りの迅速かつ充分な事後対応をしたのに結局訴訟になってしまった、というケースも、残念ですがあり得ますが。
 『事後対応』について、病院側関係者のそれぞれのお立場で、より具体的に、どのようなことに気をつけて臨むべきなのか、それは、当該医療機関の性質や規模等々により、出来ること出来ないこと、様々いろいろあるでしょうが、医療安全の重要な一部分だとして、今後もっと一層の工夫の余地があるのではないでしょうか。ご検討頂ければ幸いに存じます。
4 今稿のポイントは、『医療事故』発生後の早い段階で、後々のお互いにとってできるだけ不幸でない方向に進んで行けるためには、医師側病院側として具体的に何を意識してどのように行動すればいいだろうか、という視点からの提言でした。ありがとうございました。

【借金問題】家族や勤務先に内緒で債務整理は可能か?

家族や勤務先に内緒で債務整理は可能か

借金について相談に来られる方の中には,「家族には内緒にしているのでばれないように手続きを進めたい」といった希望をおっしゃる方がいます。

そこで,今回は,家族に秘密にしたまま債務整理を進めることの問題点等についてお話していきます。

その前提としてまず知っておいて頂きたいのは,借金を返済する義務があるのはあくまで借りた本人だけで,たとえ家族といえども,本人に代わって借金を返済する義務はないということです(保証人になっている場合は別です)。

一般の方の中には,自分が返せなかったら配偶者や両親が返済しなければならなくなると勘違いをしてらっしゃる方がよくいます。

しかし,道理的にはともかく,たとえ借主のご主人であっても親であっても,本人以外が借金を返済する義務はありませんし,貸主が本人以外に返済を請求することもできません。

以上を踏まえて,以下の文章を読み進めていって頂ければと思います。

基本的な考え方

先に述べたとおり,家族に知られないように債務整理の手続きを進めたいと考える相談者の方はよくいらっしゃいます。

そして,借金を返す義務は本人にしかないのですから,必ずしも家族が債務整理に関わる必要はなく,家族に知られずに手続きを進めることは不可能ではありません。

しかし,少なくとも同居の家族に対してはすべてを話した上で債務整理の手続きを進めるべきであろうと考えます。

なぜなら,債務整理の手続きは,例えば自己破産の手続きであれば,借金を帳消しにしてお終いではなく,その後の生活再建を目指した手続きであり,そのためには,家族の理解や協力が必要な場合が多いからです。

多重債務を負ってしまった主婦を例に考えてみます。

主婦が多重債務を負ってしまう場合,家族(特にご主人)の無理解や無関心に起因していることがよくあります。

ご主人が家計のことにまったく関わっておらず,主婦である奥さん一人が思い悩んだ末に生活費等を消費者金融から借り入れてしまったり,夫婦の関係が冷め切った家庭内別居のような状況で奥さんが生活費を借り入れてしまったりといった具合です。

このような場合,仮に家族に内緒で債務整理の手続きを終了させることができたとしても,生活費に対するご主人の理解が変わらない限りは,再び借金を抱えてしまうことが考えられます。

また,先ほど家族に知られずに手続きを進めることが不可能ではないと申し上げましたが,実際には,手続きが終了するまでの間に弁護士や裁判所(個人再生や自己破産の場合)との書面・連絡のやり取りなどが多少なりとも必要に

なることから,秘密にしようとしても途中でばれてしまうことも多いです。

どうせばれてしまうのであれば,事前にご主人に相談する方が理解を得やすいでしょう。

勝手に借金を抱えてしまったことを家族に相談しづらいのはわかりますが,何よりも重要なのは,同じ失敗を繰り返してしまわないことです。

そのためにも,事前に家族に相談の上,手続きが終了した後のことも含めて家族と相談しながら手続きを進めていくことを基本的な考え方としておくのがよいでしょう。

どうしても家族に言えない事情がある場合

以上のように,債務整理の手続きは,家族にも事前に相談し,家族の理解を得ながら進めていくというのが基本的な進め方にはなりますが,中には,どうしても知られては困るという事情がある相談者もいらっしゃいます。

例えば,ご主人に借金のことがばれると暴力を振るわれるといった場合です。

このような場合,ご主人に借金の相談をすることが躊躇されることは理解できますが,かといって,安易にご主人に秘密で債務整理の手続きを進めてしまうと,万一,図らずしてご主人が借金の存在を知ることになった場合,予期せぬ事態により相談者が危険にさらされてしまう可能性すらあります。

このように考えると,日常的な暴力の程度によっては,そもそもご主人に借金の相談をすべきかどうかという以前に,今のご主人と婚姻関係を継続していくべきかどうか,ただちに家を出てご主人から離れるべきではないかというようなことを検討すべきかもしれません。

家庭の中に借金以外の問題もあるような場合には,今後どうするかを自分だけで思い悩むのではなく,誰かに相談してみることが何より重要です。

 

これまでお話してきた通り,借金は債務者個人が負担するもので,他の人がその肩代わりをさせられるわけではありません。

もっとも,借金を返せなくなってしまう人は,そもそもの生活環境に根本原因があることも多く,一人で債務整理手続きを終了させても結局同じことを繰り返してしまうことが稀ではありません。

そのような中で,借金を返せない苦しみから解放され,生活を再建していくためには,家族の方の理解や協力が大きな支えになります。

もっとも,先にも述べたように,家族に言いたくない理由は様々ですから,場合によっては,借金云々よりも,もっと根本的な問題を解決すべきケースもあるかもしれません。

したがって,相談者の方は,弁護士等の専門家に相談する際には,単に家族に知られたくないなどと要望するのみでなく,その理由をきちんと話した上で,借金以外に解決すべき問題がないかを検討してもらいましょう。

また,そのような事情を踏まえた上で親身になって相談に乗ってくれる,信頼できる弁護士を探しましょう。

【借金問題】給料や預金の差押を受けたら

給料や預金の差押を受けたら

今回は、給料や預金を差し押さえられた場合の対処法を説明します。
差押えを受けると生活に大きな支障を及ぼすことがあるため適切に対処する必要がありますが、一般の方はどうすればいいかわからず困ってしまうケースが多いので、以下の説明を読んで正しい知識を身につけておきましょう。

差押えまでの流れ

(1) 債務名義の取得について

まず、支払いが滞っている借金の債権者は、すぐに債務者の財産を差し押さえることができるわけではなく、差押えをするためには「債務名義」が必要になります。

「債務名義」とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことをいいます。代表的なものとしては、訴訟の判決正本や公正証書などがあります。

そのため、消費者金融などの貸金業者は、債務者による借金の支払いが滞ると、「債務名義」を取得するために、支払督促(貸したお金を相手方が支払わない場合に、申立人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる略式の手続)や訴訟によって債務名義を取得します。

また、支払督促や訴状は、裁判所から「特別送達」という書留便で債務者に郵送されてきます。

つまり、裁判所から届いた支払督促や訴状を放置すると、債権者に債務名義を取得され、給料や預金を差し押さえられる可能性がありますので、裁判所から何らかの書類が届いた場合は、何の書類か分からなくても絶対に放置しないようにしてください。

一方、貸金業者から債務者に直接送られる書類は、書類の名前に「差押通告書」などと記載されていても、これを放置しても債務名義を取得されることはありません。

(2) 債権執行の流れ

債務名義を取得した債権者は、裁判所に対して給料や預金の差押命令を求める申立てを行い、それを受けて裁判所が差押命令を出します。

差押命令が出ると、裁判所は、第三債務者(給料では勤務先、預金では銀行などの金融機関のことをいいます。)に債権差押命令書が送られます。その1週間後くらいに債務者にも上記命令書が送られます(債務者が差押えを知ってすぐに第三債務者から預金を引き出したりしないためです)。

なお、債権者は、通常、差押命令の申立てとともに、第三債務者に対する陳述催告の申立てを行い、それを受けて裁判所が第三債務者の陳述催告を行います(民事執行法147条1項)。

陳述催告を受けた第三債務者は、給料や預金の有無及び金額、任意に支払に応じるか否か、支払いに応じない場合の理由などを裁判所に陳述します。

その後、債権者は、第三債務者から回収をすることができた場合、裁判所に取立届を提出します。

差押えの効果

(1) 給料の差押えについて

給料の差し押さえを受けると、債務者は、差押えられた給料を雇い主から受け取ることができなくなります。

もっとも、給料のうち、4分の3に相当する額は差押えが禁止されていますので(民事執行法152条)、債権者が差し押さえることができるのは4分の1相当額に過ぎません。(差押禁止財産とは)なお、4分の3の金額を算出するにあたっては、給料の額面額ではなく、所得税、社会保険料などを控除した実際の手取り額が基準とされます。

とはいえ、給料の差押えは、債権者が請求している債権額が全額回収されるまで継続的に(月給であれば毎月)続きますし(民事執行法151条)、賞与(ボーナス)も対象となります。

また、給料の差押えを受ければ、自分の勤務先に経済的に困窮していることを知られてしまうことになりますし、給料の一部を債権者に支払うという事務的な負担を課すことになります。

勤務先は、給料の差押えを受けたことを理由に債務者を解雇することは基本的にできませんが、上司や同僚に知られることで勤務先での評判を落としたり、人間関係が悪化することで事実上働きづらくなり、最終的には勤務先を自主退職せざるを得なくなるケースも多く見かけます。

(2) 預金の差押えについて

預金には、給料のような差押禁止部分はありませんが、差押えの効力は、差押命令が銀行などの金融機関に送達された時点で口座にある残額にしか及びませんので、その後に入金された分は引き出しをすることも可能です。また、誤解されている方もいらっしゃいますが、一般的に預金の差押えを受けても、口座が凍結されるということはありません。
ただ、既に債権者に知られてしまった預金口座を利用し続ければ、再度、預金の差押えを受けるおそれがありますので、注意しましょう。

差押えを解除する方法

(1) 債権者への弁済

差押えを解除するために最も手っ取り早い方法は、債権者に対して借金を返済することです。

もし、借金を支払うお金はあるけど相手から裁判された際の対応を誤って差押えを受けてしまったような場合には、債権者に事情を説明した上で、速やかに借金を返済するのがよいでしょう。

とはいえ、多くの場合は債権者への一括弁済は困難な状況にあると思います。その場合は、法的整理(自己破産、個人再生)を通じて差押えを止めることが可能です。

(2) 自己破産による方法

ア 破産開始決定前

裁判所に自己破産申立てをしても、通常、破産開始決定が出るまでに1か月程度かかることがあります。

そのため、自己破産の申し立てをした場合、破産開始決定前に強制執行中止命令の申し立てをすることができ、中止命令が出れば破産手続開始決定を待たずに差押えが中止されます(破産法24条柱書本文1号)。

イ 管財事件の場合

管財事件(破産管財人が選任される破産手続きのこと 管財事件と同時廃止事件)の場合、開始決定と同時に既にされている給料や預金の差押えは効力を失います(破産法42条2項)。

ただ、給料や預金の差押命令を出した裁判所は、別の裁判所でなされた破産開始決定を当然に知り得るわけではありません。そのため、実務上は、破産管財人が執行裁判所あてに債権執行取消の上申書を速やかに提出し、執行裁判所が職権でこれを取り消す扱いとなっています。

なお、破産開始決定後に支給される給与などは「新得財産」として、債権者に配当される財産の対象(破産財団)にはならず、差押の対象にもなりません。

ウ 同時廃止事件の場合

一方、同時廃止事件(破産管財人が選任されずに破産手続の開始と同時に破産手続を終了させる手続き 管財事件と同時廃止事件)の場合、破産手続の開始決定及び廃止決定がなされた段階で差押えが一旦中止され、債権者が破産者の給料等から債権回収を行うことはできなくなります。

しかし、この時点では、債権者による債権回収が一旦ストップするにすぎず、債務者が差し押さえられた給料等を受け取ることはできません。

その後、免責許可の決定により差押えの効力がなくなり、この段階になってはじめて債務者自らが給料等を受け取れるようになります。

(3) 個人再生による方法

ア 個人再生の開始決定前

申立後、中止命令の申し立てをすることができる点は自己破産手続の場合と同様です(民事再生法26条1項2号)。

イ 開始決定後

個人再生手続の場合、個人再生の開始決定により一旦差押えが中止され(民事再生法39条1項)、認可決定により差押えが効力を失います(民事再生法184条)。

また、開始決定後は、強制執行取消の申立てをすることができ(民事再生法39条2項)、それが認められれば、認可決定を待たずに差押えが効力を失います。

まとめ

給料や預金の差押えを受けると、債務者の生活に大きな支障が生じ、生活の再建が困難な状況に陥りかねません。

そのため、借金の整理を考えている方は、債権者から差押えを受ける前に早めに弁護士に相談に行くのがよいでしょう。

各自治体広報誌に掲載されました 2019年2月1日号

  • 広報くるめ2019年2月1日号
    広報くるめ米2019年2月1日号
  • 広報あさくら2019年2月1日号
    広報あさくら2019年2月1日号
  • 市報かすが2019年2月1日号
    市報かすが2019年2月1日号
  • 広報いとしま2019年2月1日号
    広報いとしま2019年2月1日号
  • 広報やながわ2019年2月1日号
    広報やながわ2019年2月1日号
  • 広報うきは2019年2月1日号
    広報うきは2019年2月1日号
  • 広報みやま2019年2月1日号
    広報みやま2019年2月1日号
  • 広報ちくぜん2019年2月1日号
    広報ちくぜん2019年2月1日号
  • 広報ながさき2019年2月1日号
    広報ながさき2019年2月1日号
  • 広報いさはや2019年2月1日号
    広報いさはや2019年2月1日号

【成年後見】同居の親族が親の貯金を横領した場合の対応

預金通帳

被相続人の死後、同居あるいは近くに住む相続人による被相続人名義の預貯金等を使い込み、横領が発覚することは、よくあります。

多くは、遺産の調査により、使途不明な出金があることで発覚しますが、生前に発覚することもあります。

被相続人の財産管理能力が要介護状態や認知症などで低下している場合、相続人が被相続人の財産を事実上管理していることが多く、不正な費消が容易になってしまいます。

使い込み、横領は、不法行為に基づく損害賠償請求あるいは不当利得返還請求により返還を求めることができます。

ここでは、親の財産(相続財産)について親族が使い込みをしているパターンを想定し、生前に発覚した場合と死後に発覚した場合について、対応・対策を説明していきます。

生前に発覚した場合

(1) 親の財産管理能力に問題がない場合

まずは、被害の拡大を防ぐため、金融機関に行って、通帳やキャッシュカード、登録印鑑について紛失届を出して、現在の通帳等を利用して払い戻しができないようにして、これ以上の使い込み等を防止する必要があります。

次に、使い込まれた金銭について、親が、使い込んだ親族に対して、損害賠償ないし不当利得返還請求をすることになります。

(2) 親の財産管理能力に問題がありそうな場合

親の財産管理能力が相当程度低下している場合、家庭裁判所に後見人選任の申立てを行う必要があります。成年後見人制度は、精神上の障害により判断能力が低下した者を保護するため、家庭裁判所が後見人を選任し、後見人によって本人の財産管理を行うものです。

したがって、従前に事実上親の財産管理をしていた親族は、後見人選任後は後見人が財産管理を行うことになりますので、それ以上の使い込みはできなくなります。

使い込んだ金銭の返還請求については、後見人の選任後は、後見人が財産管理について代理権を有していますので、後見人が、使い込んだ親族に対して、損害賠償ないし不当利得返還請求をすることになります。

死後に発覚した場合

(1) 手続

遺産分割調停手続きの中でも返還を求めることができます。

もっとも、調停は話し合いですから、相続人間で協議がつかなければ、使い込み、横領の部分を除いた範囲で調停を進めるしかありません。

協議がつかなければ、使い込み、横領をした相続人を相手に通常の訴訟を提起して、損害賠償請求又は不当利得返還請求をしていくことになります。

(2) 調査

親族による使い込み・横領であることを証明する必要があります。

ア 取引状況

預貯金の調査は、口座のある金融機関に対して開示請求をして、取引履歴を取り寄せ不正な使い込み等の有無、その額を確認していきます。

どこの金融機関に口座があるかを把握していない場合、被相続人の生活圏内(職場や住所)の近隣の金融機関に対し口座の有無を確認しましょう。

取引履歴を取り寄せたら、個別の出金について、誰が引出したか、使途や親族が引出した場合の被相続人の同意の有無等を確認していきます。

その際には、被相続人の生活状況や健康状態に照らし必要な生活費や医療費等を割り出して、取引履歴と照らし合わせて不自然な出金の有無がないかなどを検討することが重要になってきます。

イ 被相続人の状況

被相続人の財産管理能力がどの時点でどの程度であったかなども、診断書やカルテなどから調査する必要があります。被相続人かかかっていた病院に対し開示請求をしてカルテ等を取得する必要があります。

また、被相続人が介護認定を受けていれば、介護認定を受けていた地方公共団体に対して、介護認定資料の開示請求をする必要があります。

使い込みや横領と疑われないために

同居している親族は、親の身の回りの世話や介護等を行っている場合が多く、それに対する形で、親が生活の援助や贈与をしている場合が少なくありません。ただし、親族間のことであるため、そのことを示す客観的資料が残っていないため、後に紛争となってしまいます。

そこで、事実上財産管理をしている親族は、財産を管理している以上、何にいくら使用したかをきちんと記録しておいて説明できなければ紛争になってしまうということ、親の財産は別個の財産であることを意識しておかなければなりません。

認知症等による財産管理能力の低下が疑われる場合には、後見人を選任しておいて後の紛争を防止することが重要となります。