公職選挙法違反にならないために(選挙運動について)

選挙公示ボード

はじめに

地方議会選挙から国会議員選挙に至るまで、日本では各地で選挙活動が行われています。

もっとも、無制限に選挙運動を許すとなると、お金や地位の有無によって行える選挙運動に差が出てしまい、結果として公正公平な選挙運動を阻害することになってしまいます。

そこで、公職選挙法が一定の選挙運動を制限しています。

今回は、公職選挙法によって規制されている選挙運動にはどのような種類があるかについてご紹介します。

選挙運動とは

⑴ 選挙運動の定義

公職選挙法において、選挙運動とは、「①特定の選挙において、②特定の候補者の、③当選を目的として、④選挙人に投票を依頼する行為」と定義されています。

そのため、『①次の県議会選挙で、②○○候補を、③当選させるため、④一票お願いします』という行動が選挙運動に該当することになります。

また、明示の依頼のみでなく、暗黙のうちに依頼の趣旨を含むものも含まれ、選挙に立候補する予定を伝えたうえで指名の普及宣伝を図る行為も選挙運動に当たりうるとされています。

⑵ 選挙期間

選挙運動が可能な期間は、「立候補届が受理されてから投票日前日まで」とされています。

選挙期間当日から当然に開始することができるわけではないことに注意が必要です。また、選挙運動には午前8時から午後8時までという制限もあります。

選挙期間前に選挙運動を行うと、事前運動として公職選挙法違反とされます。

禁止される選挙運動

以上の通り、選挙運動については非常に広い定義となっており、具体的な行動形態までは規定されていません。

そのため、明文で禁止される行為以外には基本的に自由となっています。

もっとも、運動の具体的な状況によって、禁止行為に該当すると判断される場合もありますので、活動には注意を払う必要があります。

選挙運動時に規制されている主な例

ア 気勢を張る行為
選挙運動のために自動車を連ねたり、隊列を組んで往来する等

イ 戸別訪問
投票依頼のための戸別訪問は禁止されています。訪問先は、必ずしも住居のみでなく、事務所や勤務先も含まれ、選挙運動中に演説会があることを戸別に告知することも戸別訪問に当たるとされています。
ただし、路上等でたまたま会った人に投票を依頼すること(これは「個々面接」といいます)や、電話での投票依頼は許可されています。

ウ 限度を超えた飲食物の提供
選挙運動に関して湯茶といわゆるお茶うけ程度の菓子以上の飲食物の提供は禁止されています。
そのため、①選挙事務所にきていただいた有権者に酒をふるまう、②候補者が選挙運動員や労務者に対し、慰労のため、お茶代わりに酒を提供等の行為は規制されています。
なお、選挙運動者や労務者に対して提供される弁当は、数や値段が法定されています。

エ 署名活動
選挙に関し、投票を得る目的、投票を得閉めない目的をもって署名運動をすることは禁止されています。

オ 連呼行為
演説会場や街頭演説、選挙運動用自動車の上でする以外の候補者名の連呼は禁止されています。

カ 人気投票の公表の禁止
選挙に際し、選挙に関する事項を動機として、公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表することは禁止されています。

その他の禁止行為

上記の禁止行為に当たらない行為であっても、未成年者等そもそも選挙運動ができない人が当該行為を行っていたり、文書図画に関して規制されている方法を逸脱して選挙運動を行ったりした場合にも、これらとは別に法律違反となります。

また、選挙運動に関し、買収罪・おとり罪・選挙の自由妨害罪等選挙犯罪として特に禁止されている行為もあります。

違反した場合に

上記制限に違反した場合、公職選挙法上に罰則(刑事罰)が設けられています。

また、候補者自身の違反行為により刑に処せられた場合、当選が無効とされる場合があります。

また、「連座制」といって、候補者や立候補予定者と一定の関係にある者(秘書や親族の他、総括主宰者等)が買収等の悪質な選挙法違反を犯した場合、仮に候補者が当該行為に関わっていなくとも当選無効となってしまう場合があります。

おわりに

今回は、「選挙運動」に焦点を絞ってご紹介をいたしました。

このほか、公職選挙法においては、活動の人的制限(選挙運動を行っていい人)や場所的制限(選挙運動を行ってよい場所)、方法の制限(文書図画やインターネット利用等の活動方法による制限)、さらには金銭的な制限(選挙運動に使用できる費用の制限や寄附の制限等)等様々なルールの規制があります。

選挙活動には必然的に多数の人間が参加することになりますので、このようなルールが定められていることを理解したうえで活動することが大切です。

【離婚・男女問題】不貞の慰謝料請求権が非免責債権に該当するか

【離婚・男女問題】不貞の慰謝料請求権が非免責債権に該当するか

根拠条文及び解釈

1 『破産法253条1項2号は、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は非免責債権である旨規定しているところ、同項3号が「破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」と規定していることや破産法が非免責債権を設けた種子及び目的に照らすと、そこでいう「悪意」とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当である。(東京地裁平成28年3月11日)』

2 不貞の慰謝料請求権の法的根拠は不法行為に基づく損害賠償請求権であるので、それが「悪意」があると認められる場合には非免責債権となりうる。

「悪意」の有無の判断については、不貞行為の状況等を具体的に判断してなされる。

裁判例の状況

1 「悪意」があったとは認められないとした事例(東京地裁平成28年3月11日)

原告(妻) 被告(原告の夫の不貞相手) A(原告の夫)
不貞関係は約9か月(当時被告は,自分の夫から不貞関係を注意されて,一時期不貞関係を辞めていたが,再度関係を持っている。)
Aと被告のどちらが主導していたかは定かではない
原告に不貞が発覚した直後は誠実な対応をしなかった
210万円で示談を締結し,初回に一部支払いをしたが資力がなく,破産申し立てに至った

以上の事実を前提に、「被告の、Aとの不貞行為の態様及び不貞関係発覚直後の原告に対する対応など、本件に顕れた一切の以上に鑑みると、被告の不法行為はその違法性の程度が低いとは到底言えない。

しかしながら他方で、本件に顕れた一切事情から窺われる共同不法行為者であるAの行為をも考慮すると、被告が一方的にAを篭絡して原告の家庭の平穏を侵害する意図があったとまで認定することはでき」ないとしている。

2 「悪意」があったと認められた事例(東京地裁平成17年12月20日)

不貞のみでなく、暴行等もあるため、「不貞の慰謝料」ではない

原告(妻) 被告(原告の夫) A(夫の不貞相手)
被告は,婚姻当初から,生活費の負担をしない一方,他の女性と交際し,原告からこれらの点を指摘されると度々暴力を振るった
被告は,長男の学費の負担すら拒否する一方,自らは自動車を購入し,クラブ等での飲食を繰り返して多額の借金を抱えた
原告のみでなく,原告の子らに対しても暴力を振るっていた

以上の事実を前提に、「本件の慰謝料請求権は破産法253条1項2号の悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当する」としている。

ただ、1の事例と異なり、離婚に伴う配偶者に対する慰謝料で、不貞のみでなく暴力の存在も含めて「総体として不法行為を構成するというべきである」としている。

結論

上記のとおり、不貞の慰謝料請求については、「悪意」の有無によっては非免責債権に当たりうるものであり、事例によって個別具体的な判断がなされるが、上記の裁判例の判決文からすると、『破産者に、一方的に債権者の家庭の平穏を侵害する意図があったか』が判断基準となると考えられる。